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いつも
車両に乗り込んだ人は
先から乗ってきた人に
目で挨拶を交わしたきり
閉じたままの窓の外へ
視線を泳がせたまま
死んでしまう
いつも
死んだ人間が運ばれていく車両に
今日 ....
スーパーで並んでいたときのこと
小学校一年くらいの男の子が
母親とおぼしき人に
何やら言いに行ったかとおもうやいなや
ばしっと音が響きわたるほどの勢いで
頭をはたかれた
理由はわか ....
後ろから浸り、百日紅に槍、吾の坊の棒もしなり、左、見遣り依頼、落雷の方に猿とモヒカンが卑猥に絡まりY・Y・Yの字、袋小路に去り、然りとて頭髪を剥ぎ、貼り、裸足から抜いてもぎもがき、解ぎ、炎の仄かの放り ....
ハリボテのビルの中 傘差して歩く
彼女はどしゃ降り
上方へ向かって広がりをみせる天井
あらゆるものが彼女の頭頂部へ
その一点へと集約する
聞き覚えのある声が降ってくるのに
傘は 骨ばかりの ....
蟹は
前を向きながら横へ進むのか
横を向きながら前へ進むのか
蟹のからだの構造上
顔のある方が前だから
蟹は前を向きながら横へ進んでいるのだ
が しかし
蟹も何か目的を持って進んでいる
....
私は十三年間
薄暗い工場の中で
機械の一部になって働いてきました
小さな子どもを連れて離婚した
若くもない女には3Kの仕事しかなかった
子どもを保育園に預けて働いた
毎日々
ベルトコ ....
夏の暑い午後
ぼくを見下ろす太陽
日傘もささずに
火傷したアスファルト
行き先の縄張りを
我が物顔で主張する陽炎
流れ落ちる汗がぼくのこころから想いのかけらを
奪 ....
Vの発音 Vの発音 Vの発音 Vの発音
言語聴覚士に何度も発音を矯正される
だけどまだできない
標準的なVの発音
ボールを投げて キャッチして
ボールを投げて キャッチして
作業療法士 ....
銀盤の周囲には
金や策略やら
得体の知れない黒いどろどろが
埋まっているとかいないとか
それと比べたら
ライバルのスケート靴に
画鋲をいれちゃうなんて
(そういう少女漫画があった)
わ ....
――G.J.へ
誕生と死との間に、もうひとつ誕生と死とがあるとすれば、それは君たちが今成し遂げようとしていることだ。二人だけの孤独が誕生し、一人だけの孤 ....
父は今日
返事をしなかった
話しかけても
目だけはじっと
私をみていた
まゆみだよ
わかる?
といっても
黙っていた
聞こえる?
と聞くと
うなずいた
声は ....
洗濯物の模様になって
取り込まれたテントウムシ
手足を縮めて
ぼく死んでまーす
アジサイの葉に
赤と黒の水玉模様
手を触れれば地面に落ちて
ころころ転がり
ひっくり返ってぼく死 ....
熱燗の、おちょこの横の
受け皿に
五匹のししゃもが銀の腹を並べ
口を開いて、反っている
いつか何処かで観たような
あれはピカソの絵だったろうか?
絶望を突き抜けてしまった人が
空を仰 ....
セックスからはじまる現代詩
それは、
無駄に多い性描写
童貞のまま月にたどり着いたロケット
セックスからはじまる現代詩
それは、
風景に溶け込めない看板
ギラギラよりラギラギした看板 ....
釣り堀で釣りをするのがすきだ
どこへもいけない水の底で
大きな魚がひそんでいる
敵は慣れたもので
エサが沈んできてもあわてない
口先でふれては
はねかえる糸がエサを落とすのを待って
....
セカンドバックにもずくが溢れている
サイドカーにまねきねこ
もうただ怒ることはやめた
自分にも
他人にも
一時の感情で怒るのはただの急ブレーキだから
僕はもっと前に進みたい
いつもゆっくりアクセルを踏んでいたい
楽しくハンドルを回しながら
....
ぎゅんぎゅんと花々の茎と茎との間を抜けて、背丈よりも低い峠をいくつも越えて、あのランナーはわたし。ふくらはぎ縮み、ふともも縮み、南風燃え上がり、握りこぶしほどの小さな山をいくつも踏んで、森の奥のか ....
つまりわたしたち、息詰まる草花たちの体臭と湿度のなかで、街路樹があり、ゆるやかに放物線を描く遊歩道があり、手すりがあり、低く絡みつく視線のなかで、プランターがあり芝生がありベンチがあり、ガラスがありス ....
あしだかというひょろ長いおんながうちにきて
しばらくここに置いてくださいという
これといってなにもお返しはできませんけれど
お掃除くらいはさせていただきます
そういって冷蔵庫の裏に陣取って
....
それが
しあわせだったの
だろう
今思えば
そうなのだろう
古ぼけた
絵本を開いて
思い出したり
捨てあぐねていた
アルバムに
身ごと投影したり
....
ねえもういやなのよ
脂の匂いでたるんだ男どもの顔と
画面の中のかわいらしいみんなを見比べる毎日は
世の中をこんな風にしたのは一体誰
いくら泡のような微笑みで満ちていても
私をぶつ手の感触が本 ....
雨はなぜ私をすり抜けていくのか
そんなことを考えながら歩いている
死者を飛び越える猫のように
あるいは歩きはじめた老人のように
それは古寺へと続く苔生した山道であり
田植えが終わったばかりの ....
ある日窓から花を投げた
あのひとが受け取ってくちびるに寄せてから
あのひとが好きになった 恋をした
みずいろの花 むらさきの花 そしてあかい花
あのひとはすべて受け取ってそっと胸にしまった
....
今日は姪っ子と詩人の誕生日
姪っ子は一歳 詩人は何歳だったかな・・
時々 神と繋がっているはずだから 脳の杖は黄金の如意棒
だから 私たちを唸らせるんだ
生まれ持った持たされた才能に違いない
....
くたばって思い出し笑い
負けるもんか卵でとじる
道をほると
どんどんとほると
一体なにがあるのかとのぞきこんだ
黒々とした土の中に
なにがあるのかと期待した
ユンボでかきだされる黒い土は
内臓のようにみせてやっぱり土だった
そ ....
ひとまわり大きくなった太陽が
西の水平線に沈んでいく
この海はどこへでも繋がっている
海岸には奇妙な文字が氾濫している
塩化ナトリウム水溶液で繋がっている
巨大な電池だって作れる
....
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