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3 足のある眼鏡
わたしの仲間は誰でも言うのだが
決して信じてはいなかった
「眼鏡には足がある」など
だが 今朝 眼鏡が消えた
確かに洗面台の横に置いたのに
顔を洗っている間にど ....
四角い形をした
それは別れの言葉だった
きみのくちびるは歌わない
ただ、冬の風にかわきながら
いいよどんだり
いいまちがったり
いいきったりするだけ
....
うにタンうにタンうにハラミの順で喰う
銃弾の跡がある部屋を自慢されている
恐ろしくひょろ高い
竹馬に乗って
海水のなくなった海の底を
歩いて行ったムーミンたち
私は歩道橋から
街を見下ろし
長い脚で
椴松や公孫樹の
街路樹を
ひょいひょいまたいで
....
辿り着いたこの街で
老いていくのだ
運が良ければ
最後の日まで
そのことが
頭の中ではっきりしていて
どこまでも
美しい
晩秋の遊歩道
硝子ケースの中にある、{ルビ木彫=もくちょう}の
酸っぱく熟れた{ルビ柘榴=ざくろ}から
赤い粒等は顔を出し
薫りは鼻腔に吸いこまれ
僕はひと時、酔い痴れる――
美術館で立ち ....
さみしい
さみしい
さみしい
と言っていたら
一人づついなくなった
いとしい
いとしい
いとしい
と繰り返しても
もう誰もいなかった。
次に接近するのは60才後半かな?
その次は90才近く?
そんなんで大丈夫?
って、
年季が入っているから
大丈夫なの。
衝突して
どちらかが消滅するま ....
自分をとんちで納得させている
(ボクめせん)
ボクね
けっこうはながきくんだ
あまいイチゴのにおいとか
けむたいたばこのにおいとか
くっさいオナラのにおいなんかも
すぐにわかるんだ
かあさんはいつも
....
冬の透明で静かな風と共に
奴らはやって来た
この世界に存在する
あらゆる現代詩を見つけ次第
容赦無く始末する謎の集団
その名も現代詩バスターズ
今のところ奴らの目的は不明
昨日も
ある ....
ありがとう
過去へ照り返す言葉だが
同時に現在からリズムをつないでいく言葉でもある
この原野に幾つもの植生が交替していく間
地図のない遠い行路を本能だけで突っ走っていった
あなたの内 ....
微熱があって
今朝はブラックのコーヒーが
舌でざらついた
飼い猫は冬になってからというもの
こたつを定位置にしている
決まった居場所というのは
誰しも安心するものだろうか
手の ....
言葉の宇宙さかさから読む
悪いことをしたわけじゃない
好きな人の名前を言っただけ
大切なものを大切だと
この自分と永遠に不可分なものがあるのだと
これはもうひとつの塊なのだと
無理やり取り去ればそれは切除では ....
透明な空に
透明な鳥が
飛んでいる
草を蹴って
跳ねる子供が
捕まえようと
手を伸ばす
晴れた空は入口
空想の世界への入口 ....
叔母さんが亡くなった
いとこが
「顔も見てやって」と
お棺のふたを開けてくれる
御顔を覗くと
少しも苦しそうでないので
ホッとして
「おばさん」て小さい声で言って
お葬式には少し慣 ....
死ぬ気でやって死んだ
時折 挫折します
嘘です
いつでも挫折しています
そのうち挫折があたりまえ
嗚呼 挫折こそわが人生わが歌
骨折も痛いが
挫折も痛いああ痛い
坐骨神経痛を略 ....
久しぶりだよね
日曜日お父さんと二人でいるの
何よその目
なんか警戒してるっぽい
あ、いっしょにお風呂入ろっか
なぁんてうっそ冗談
慌てちゃってかわいいんだから
え、親を ....
私は人魚になりたかった
折り紙で作った貝のブラジャー
母の真珠のネックレス
油性ペンで足に描いたウロコ
市民プールではドルフィンキックばかり鍛えた
私は海に帰りたい
ひしめきあう社会の ....
道路の白線は爪で引っ掻いたようにボロボロで、白痴の老婆が
荷車を押しながら線に沿って歩いていた。そばを、猫が心配そ
うに見つめている。
風車を持つ少年はバースデーの母に、摘んだ花を届けようと ....
ね、といって目を閉じた
静かにその翼を閉じるように
ね、あなたの見る夢のなかに
白い鳥、翼をひろげて飛んでいった
その羽ばたきがかすか、耳もとにくちづける
ね、あなたは今も孤独なのだ ....
スーパーで買った卵が
ふたつ割れていた
ものごとには
必ずしるしがある
リビングの時計の
電池が切れて止まっている
ほんの些細な
どうでもいいようなことだけれど
....
みんな眠ってしまった
わたしは静かな夜を履いて
よく乾いた死骸をひろいあつめる
時間、音、大型ラジオ
そういうものたちを
きっとある
この夜の留め具になる死骸が
みればすぐに ....
一限目から必殺技の名前考えている
三千世界におはよーございまーす
表情の少ない
甥と姪が泣いている
眼を腫らしてはにかんでいる
泣くことなど想像もつかなかった
山男の義兄が
もう少し生きて欲しかったと泣いている
葬儀の場は
涙の大きなプールで
....
あなたを指した指に
刺されたあなたの
痛みが刺さり
腕を駆け
胸に針刺し
脳にとどまり
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