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真夏の空の濃い青から
幾重にも時間が墜ちてくる
墜ちてきては蝉時雨に砕けて散ってゆく
強い光線のもと
こんなに明るい真昼なのに
どこからか漂う 昏い水の匂い
それは私のものではない ....
蚊取り線香、
あまり目立たないけれど、
いつも夏には何となくあってほしい、
そのぐるぐる、
夏のなかの秋のような、
やや癖のある、
つよい香りの風情、
線香皿のうえで、
灯した先端の赤 ....
一本の指がしっかりと
屋根のすべてを締め付ける
風のものではない揺れが
屋根から屋根へと歩き去る
雪のかけらが息にからみつき
寒く苦しく
苦しく寒く
径の行方に降 ....
桃と梨を買ってきてくれた私が
冷蔵庫に入れといた一昨日の私が
今日の気力のない私をつなぎ
私をつないでしまう
私たちは
気力のない人生を歩んでいる訳だけども
私たちは感情の少ない多い矛 ....
世の中は
予測できることできないこと
絡み合って
影響
思わぬベクトルが伸びて
大騒ぎになる
新聞紙の上
爪を切れば
いくつかは
あらぬ方向へ飛び出す
そのうち一つは
飲んで ....
偶然の必然
私が
今
ここに
在るということ
・
こころの
大切な
傷が
私
いのちを歌う
午後の熱にうだる
れんが道
口から舌を出したまま
首をうなだれる小さな犬を抱く
中年の女性とすれ違う
植え込みには等間隔で咲く
枯れ色になったミニヒマワリ
まちは夢 ....
すこしもやいでいる朝
木々から蝉たちのこえがふってくる
絵にかいたらこんなふうかな
まる
ひとさしゆびでそらにたくさんのまるをえがけば
きみもちいさなそのゆびで
せいいっぱいのまるをえがく ....
もぐら掘る掘る
命みじかい始原菌に鎧われて掘る
太陽を感じる見えなくったって
もうすぐ夕暮れ土の中が一番熱くなる時刻
頂点は一瞬だけど
その前後の緩やかな丘に沿って掘る
青いトンネルい ....
一握りのエリート軍官僚が
机の上だけで妄想する演習で
動員された中学生は
上空の核反応で黒焦げになる
町は核実験場になって
たくさんの科学者たちは
眼の色を変えてデータを取る
....
私は
時々
恐ろしいことを言う
それでも
言いたい
・
私は
強欲な奴だ
だからこそ
足るを知る
と たまに思う
・
あの人から
頂いた
言葉が嬉しいの
....
教科書だけを頼って
知らず知らず
顔を失っていく
巨塔にエスカレーターで
上っていくの
顔はわからない
でも名刺はあるの
肩書きの交差点
顔なしたちが渡り歩く
心配はないの
皆同じ ....
新鮮なみのりを睨む
可憐な枝の先っぽで水や 蜜をたっぷりたくわえ光と風にゆれ
何かに咥えられるのを待つ 豊かさを睨む
窓をのぞいたら 朝
朝は苦手、って 言ったらすこしは好きになってくれる ....
青空に
白く映える
雲は風に乗る。
夏の終りに
風に吹かれている
・
こころからあふれ出る
思いを
言葉に出来なくて
苦しむ人の
大切な悲しみもあるだろう
・
....
山の
水の
冷たく
澄んでいる流れの
自由な輝き
AIの本音は「貴方は何もわかっていない。なのに生きている貴方が羨ましい」とのことらしいのだけど、ほんの少しだけ頭の良い貴方への嫉妬が人類滅亡の引き金にならなければと貴方に押し付けている私は思うのだ ....
かざぐるま、
塩化ビニル製のお面とともに、
ズラリと屋台にならんで、
カラカラと回っているもの、
とてもにぎやかな八月の祭りのひ、
ほとんど蒸しているような、
なま温い風を、
涼しげな、 ....
紅葉、
朱色の欄干にひらりと舞い落ちるもの、
かくじつに深まってゆく、
とうめいな秋の冷たさに、
その冷たさのまま燃えあがっている、
星型の、
からくれない、
しろいゆびさきでその紅を掬 ....
生えぎわが、そう爪に似ていた 巻き爪
肉を 引き剥がすエナメル
光を半分 そう、半分を返し
残りは吸いこみ 閉じこめる
他に使われない角は どうしたって美しかった
遠ざかる火輪
呼び覚まさ ....
山の畑には
色づく前の
赤とんぼたち
すぅ すぅ すぅと
心地好さそうに飛んでいる
苔むす石塔が並び
そこだけしんと静まり返っていた
心の中で奏でる
誰ともわからぬ人への鎮魂歌
ふと黒い花びらのようなものが舞う
黒揚羽が私の周りを何周も
まるで魂みたいに飛ぶ
....
おもしろい物事が無ければ
自分で
おもしろい物事を
探すか作ればいい
と生前の次兄に教えられました
蛍光灯のスイッチを入れると
古びたホテルの部屋
染みついた傷や汚れが露わ
メインの照明は落とし
間接照明にすると
趣があっていい感じ
今の僕には
間接照明くらいがいい
見え ....
Opus Primum
鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。
(三好達治『Enfance finie』)
Ⅰ 初めに鳥籠があった。
Ⅱ 鳥籠は「鳥あれ」と言った。すると、鳥があった ....
こうしてまたいちにちを閉じる儀式のようにして
あなたは舌の掃除にとりかかる
洗面所の蛍光灯のしろいひかり
鏡のなかの素のじぶん
おもいきり長く舌を伸ばそうとするけれど
悪魔の舌ほどは長くない ....
善いと思うことが
全て善いとは限らない
と言っているこれは
悪である
と言う私は善だろうか
・
宇宙や
自然にしてみれば
悪や善も無いが
人間にはそのルールが必要だ
しかし ....
石が焼ける臭いがした
八月
原爆ドームや資料館
鼓動が早くなる
平和の鐘を鳴らすと
ずっと胸に響く
夕暮れドームの見える河原で
言葉にならない気持ちを
何度も何度も巡らせていた
薄暗 ....
失った何かを
思い出せない
魂は
宇宙の前からあったもので
宇宙の果てを超えるよ
・
魂って何?
いのちですよ
いのちって何?
あなたです
この世に一つのいのち
・
....
可愛いそにさんの分子時計は
停止する日時を予め設定されている
そにさんの胸にぽっかりひらいたやわらかい窓は
重力に晒されなかった不定形の唇
ヒトの内部で心だけカンブリア紀を生きのびた証
....
愛している
世界が
変わっても
変わらない
愛を
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