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明け方の悪夢が目を覚ましてからもずっと漏水のように滲んでいる、それは猛烈な夏のせいだけではもちろんないだろうし、まして狂いかけた脳味噌のノイズのせいだけでももちろんなかった、正気の方が狂気よりもず ....
川底で足を滑らせ 深みに沈んで
水面を見上げていた 外は明るそうだった
記憶は二秒くらいで途切れ 後は母からの昔話
父が飛び込んで 助けてくれたのだって
そうなんだ そんな人 ....
羊水の中は温かく
世界を知らない
夢見る神の子
トンネルを抜けて
肺に空気が突入する衝撃
重力の宙ぶらりん
世界の始まり
胎内の記憶は引き剥がされ
あらゆる感覚器官に
ジャンクが ....
私を
知るのは
誰もいない
と幽霊の私は思うけど
魂は私を知っている
・
星の
心音を
聴き
透けて青く光る
小鬼
・
水の記憶を
知る
葉の細胞は
光合 ....
大切な悲しみの
光は
しんとした影を
つくる
愛
ひより、アヒルのひなどりの顔をしたとてもちいさな黄いろいペンギン。そのずんぐりむっくりな身体から、ほんのすこしだけ出っ張っているだけの、ちょこんとした、そのとても短い手足。その橙色のタラコのようなクチ ....
そんな記号の縺れや絡まりを休日に解いている
きみは雨音に聞き入って 雨などとっくに止んだのに
トンボの翅を咥えたことがあるかって
森をさまよった少年が手入れもしないナイフを持って
復讐に来るよ ....
食べるものを作る人の手が触れる時
その土は地球だ
人を殺すものを作る人の手が触れる
愛する者たちの息も
貴方のものと同じ空気に違いない
星を眺めるものを磨き
星を渡るものを組み立て ....
俺は「無」から生まれた
なにも苦しみや悲しみや絶望や失望から
生まれた訳じゃあない
膨張する欲望を
慎ましく隠し込むことが
正しさに似たおこないだと
知ってずっと
知っ ....
群雄割拠の時代が終わろうとしていた。久慈の豪族、佐川義久は隣国の領主たちを自分の城へ招いた。月丸扇の紋章が描かれた屏風絵を背に、広間の上段に義久が座り、宴の席は中段に設けてあった。下段には着飾った遊 ....
{引用=音}
拾ったノート
裂かれた紙片
路地裏で思案する
この筆跡は、
群青に滲むヤドカリの砂
いまに消える声
ゼンマイの破片
砂利に、ちいさな仔犬
....
風鈴の短冊に書いた願い事
神社の参道に飾ってもらった
風にくるくる回って
思い出しているのは
遠い日にかすんだ夏祭り
知らなくてもいいことを
いっぱい知って
裸電球に輝いたは ....
世界は美しい
その美しい世界が歪んでしまったら
俺はそのとき
それでもまだ世界のことを
好きでありつづけられるだろうか
夜はいつだって
泳ぎたくなる星空をしている
夜はいつだ ....
外面より
内面を見る
何でも
上手くいく
方法
独り泣きたい夜
傍にいるのは鴉だけ
思い出すのは
存在の温もり
差し伸べてくれた手
何も返すことなく
振り切ってしまった
あれから遠くまで来た
塗り替えることのできない日々 ....
闇の中の
黒い石に
光が当たり
私は黒い石だと
初めて知った日遠く
・
生きるとは
こころ
傷つき
時に
愛を知るということ
・
青空の深さに
手を合わす私。 ....
飛ぶことが苦手で
さえずることを覚えた小鳥は
せめてこの歌が朝空高く
飛べばいいのにと願うのでした
誰も傷つけない歌なんてない
....
反芻する燦き
一瞬に繁茂する刺の立体に
軟い平面を見つけたと喜ぶが
巨視による立体構造の発見に
落胆する背中をみて育った子
ゴーフレットを手に取って
割れる音に音階を
割れた形に幾何学を ....
人は
誰でも
複雑だ
ただそれが
表に出るか出ないかだろう
・
人のこころを
傷つけて
私も傷つく
ごめんなさい
あなたへ
・
人と人の
縁も
ふしぎだ
....
岬に立つと
陽の輝きが急に増す
気がつけば波間に閃めく舟も
ずいぶん遠かった
入道雲のわき立っている水平線
みづ色の{ルビ礫=こいし}のように光る舟のそばで
一羽のかも ....
ある日風が吹く
身が軽くなり自由で
ここがどこかも忘れて
唄いだす
上手いかどうかは
関係なく
好きなだけ
唄えなくしたあの人のこと
やっとどうでもよく思えた
唄は風に乗 ....
カモメが翼を一文字に広げて飛んで行く
灰青色の空
雲は途切れ途切れに流れた
生温い風と遠くざわめく静かな波
周りの声はいつの間にか波にかき消された
水平線の境はハッキリと分か ....
夏が押し寄せてきた
ブルーのイメージ
ブルーだけど薄いブルー
暑さだけで考えればレッド
全体的に考えればブルー
夏は海というイメージ
青空というイメージ
ブルーで包まれている
....
夏休みだと言うのに
恋も夢もお金もなくて
カラオケ帰りに
パピコはんぶんこしてる
のんちゃんと私
暑いって言ったらデコピン!
って言ったそ ....
陽が暮れて
街灯が照らす
ベンチにポツン
もう来ない
来るかもしれない
動けずに
待てば待つほど
暗がりに浮かび上がる
{ルビ画布=カンヴァス}の中に
(夏目漱石『三四郎』三)
海がある。
(詩篇一〇四・二五)
海辺のきわまで
(エリノア・ファージョン『町かどのジム』ありあまり島、松岡享子訳)
....
お祝いを あつめたから お祭り
あつめて こねてかためて 高く
火を点す
足もとに藁つんで
焼けた 爛れた どぉんど昇れ
マイマイの空家は渦の声
ことば忘れて かぶせ 転がす
あわい ....
乾いた金属音に、たるみ切った意識が醒めても
しぼんだ脳は白球の行方を捉えられない
職人が切換える幾つもの映像が
先へ、先へと白球を追いやるから
僕は冷房の檻に這いつくばったまま
コピー紙の裏 ....
激しく降った雨で
低い土手の生い繁る雑木は
いっそう緑濃くなり
駐車場の水溜りをよけながら
歩くスカートの裾が
まつわりつく
建屋の脇には短い竹林の小径
聳り立つ ....
陰影の先端
あなたの問いかけ
あなたへの問いかけ
か細い海はある朝
空白に塗りつぶされて
涼しい駐車場になった
壊れた何かが転がっている
見入ってしまった
初夏が立ち止まる
....
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