すべてのおすすめ
零れ落ちた詩を拾い集め
パズルを組み立てる代わりに
初めて出会った場所の記憶を掘り起こす。
(それがどこなのか、悲しいくらい忘れてしまった。)
今
目の前に居るのは幸せに ....
くるくると回る提燈の灯りの元
笑ったように眠る父が居る。
父の横に座り
口元に耳を近づけて
微かに聞こえる寝息を聞いた1月15日の深夜。
父を挟んで布団を敷いた妹たちは
....
先生、私たちの昼間が消えていきます。
カレンダーに休日がひとつ、足りないのです。
青と赤の隙間に、数字のいち、が。
時計は、今、だけを、さしたがる、から、痛い。
数字が昨日と明日を覚え ....
発する柔らかな音のかたちが
まだ定まらないころ
神経衰弱でトランプを捲るように
何度も見て触れて味わって
モノとなまえが一致して行く
意味を纏うのはまだ先のこと
ちいさな器は無限に広く深く ....
きみの悲しげな 薄茶の瞳が
雨に濡れた 捨て犬の耳に重なる
愛してるんだよ と 大きな声で
もし あの雨の日に戻れるのなら
真っ直ぐな思いに 応えられなかったのは
どこかに 罪の ....
テレビの中
子供の頃の私の口癖は 「テレビの中に入りたい!」だった
華やかな舞台の上で 踊って歌うアイドルに憧れて
親戚の前で物まね 未来のスターの誕生ね!って
皆が褒めてくれた 私はすっ ....
足の小指が嫌いなのだ
気付いた時には、箪笥の角にぶつかっていたりする
足の小指が嫌いなのだ
爪がひしゃげて白くにごり何よりひどくみっともない
足の小指が嫌いなのだ
スマー ....
突然ブガチャガ窓の外
ブガチャガ悪い缶蹴りが
ブガチャガドリブル人を避け
ゴールに向かって一直線
どんなに悲しいブガチャガに
どんなに苦しいブガチャガに
今日は繕い(つくろい)知ら ....
欲しい
記憶媒体として
テープと言っても
樹脂に鉄粉を仕込んだ
アレじゃない
金属のリボンと言えば
正しいであろう
とても高価
磁気記録装置の
最高峰である
シーケンシャルにしか
....
「あ」と
「い」の間に
それが存在すると仮定して
そこにきみの姿を描いてみる
知らないから知りたくなる
知ってしまうと見たくなる
見てしまうと触れたくなる
触れてしまうと手に入れた ....
あの窓の1つ1つに
今日というドラマが詰まっている
喜怒哀楽では語りきれないようなドラマが詰まっている
あの光の1つ1つに
明日というドラマが滲んでいる
喜怒哀楽では伝えきれない ....
拝啓、冷蔵庫様
長い間ご苦労さま
十六年間、寝食を共にした
おまえが逝ってしまい
わたしはとても寂しいよ
突然のお別れだった
何だか、冷えが悪いと思っていたら
冷凍食品が自然解凍 ....
{ルビ処女=おとめ}はその森に入ってはならない
森に入ればきっと出会ってしまうだろう
そして血よりも紅いその薔薇を手折ってはいけない
薔薇を手折ればきっと恋に落ちてしまうだろう
それは ....
この世を渡り歩くには
涙は欠かせない存在
広大なこの世に対して
涙の粒はあまりに小さ過ぎる
この小ささであの広大さに
対峙するには どうしたらいいのか
悲しみ 喜び 絶望 歓喜 不条理 ....
君は一杯着飾っていたね
着けるだけ飾るだけ幸せになれると
友達も言っていた
君には複雑な鮮やかな柄が似合う
肌着はもっと暖かい真っ赤が良いよ
もっともっと着飾った方が
君はいつ ....
愛は儚い
愛は尊い
愛は
愛は
美しい
真昼に見る夢の様だ
一輪の野の花を
撫でる少女の指先に似ている
どんなに形容出来るだろう
愛を
愛は ....
時間を つぶすと言うのか
やっと生まれて来た この
小さな 幼気な時間をあえて
つぶす と言うのか
梱包材のつぶらな可愛いプチプチを
訳もなく指先でつまんで破裂させるように
このささや ....
まだ若い老人であったころ
同僚と紅葉の山麓へドライブ旅行にでかけた
秋空のもと 静かな集落を抜けるとき
前方遙かに 背をかがめた人が横切るのを見た
同僚はスピードをやや落として言う
「老人は ....
不惑など疾うに過ぎた初老の男にとって
忘れ物に気付いたことは
捜し出すべきものが
茫漠たるサハラやゴビの砂粒の中に埋もれた
小さなダイヤモンドの様に思えた
とりあえず砂漠をイメージしてみ ....
ドライアイスの冷たさが
置いた手の感覚を奪ってゆく。
触れていれば・暖めていれば
父は目を覚ますと考えた。
指先の感覚が無くなった手を離してタオルで包み
霜で覆われた父の ....
激しい夕立は
突然やってきて
落雷で鉄道が遅れている
小さな駅舎で
雨宿りをしながら
駅の改札で恋人と
待ち合わせをしていて
豪雨は短いうちに
まるで屋根を
ひっくり返したように ....
あなたは、今もあなたで
わたしは、今もわたしで
それでいいんだけどね、でもなんだか、なんだかね
涙が滴り落ちた先には
絢爛たる辻が花の文様
涙と文様が醸し出す
融合は偶然の成す技
今にも落下しそうな
涙は ほほで弧を描き
柔肌から離れた途端に
滴と化し宙を突き抜ける
まつ ....
山を駆け下り開けた浅瀬に出ると
ゆるゆると草を揺らしながら往く
水の膨らみは千変万化を繰り返し
陽射しに微笑みを返すのだ
小学生の女の子ばかり六人
紫外線から完全に身を守った女の先生と一 ....
いつのまにかの筋肉痛
ちょっとのことでこんな憂うつ
知らない間にできた青あざ
気になっちゃって押してみる
「ねえ、人生ってどう?」
ってインタビューしたいな
「楽しい」って言っ ....
声よ
もっとさびしくおなり
いい風がふく
青葉がいっせいにひらく
ささめく噴水のしぶきあがり
陽が当たって
きららら
金粉みたいに散らばり
水面には細い銀の腕輪
さみどり ....
都心を射ぬく沈黙のバスを執拗に尾行する
半分にすり減った横顔のまま
ビルの狭間にこうこうと深く冴え渡る闇の遠くで
連動する疲弊の連鎖に眉を震わせ
容赦なく目に斬り付ける
横殴りの光の ....
嫌い、っていうと
とうめいなこざかなが
わらわら 集まって
そこに
かすかな波を生じる
なんだろうこんな不安は
好き、っていうと
ちいさなひなげしが
いっせいに帆を上げて
あ ....
一瞬で
りんごもにんじんも正論も砕かれ攪拌されてどろどろのジュースになるみたいな
彼女だけの鋭いミキサーのすいっちは日常のいたるところで押されるのだった
あるいは一瞬で
女子なのにおおかみ ....
盤面に行儀良く並んだ歩兵
敵の攻撃を真っ先に受け将を守る
時には味方にも無視され
時には邪魔もの扱いされる歩兵
敵陣深く突入して将となるも
あっさり討ち死に
そして 次には
味方だった将 ....
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