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静寂のクレーターの縁に座って
古いモノクロの写真を見ていた
塚山は緑に覆われて
そよ風は 海の方向から
茶色い戦いの記憶は 靄の彼方に
透けるシルクに描いた 絵物語
善悪の彼の ....
傘が行く
三叉路の紫陽花を横目に
靴がついてくる
水溜りをかろうじて避けて
身体は押し黙る
雨音の朗読を聴くともなしに
思考は潜り続ける
内側の後方の下部の
定位置に落 ....
<矛盾>
あなたを殺してしまいたい
でも
幸せにもなってほしいよ。
<矛盾なき矛盾>
本当に大切なものが
なすすべもなく消え去った時
もう残りの人生が余生でしかないと ....
つばめはどこかからきて
その羽とくちばしで巣をつくる
からだいっぱいに巣にすわり
せいめいをうみだそうとしている
わたしというにんげんが
うろうろとその下で動いても
まっすぐにただ ....
醗酵することは発行されたものをもたないこと
あるいは発光する冷たい微熱をかかえた昆虫の夜を生きること
あるいは薄幸な女の身の上話にあいづちをうつ場末の安酒場の空気
欲望は醗酵し発熱し自分の足 ....
物作りという仕事には
終わりも・崩壊もありません。
そこに生きる人々の手作業で
長い間守られ
今日(こんにち)迄
続けるという心があります。。
(人の生活を、より豊 ....
血塗られた常陸の土蜘蛛は
山の佐伯に野の佐伯
穴居
人が来れば窟(むろ)に隠れ
人が去れば野に遊ぶ
牧歌的な生活をする。
人と自称のわが鬼は
留守の窟に茨を敷き詰め
野に遊ぶ土蜘蛛 ....
ちぎれた 火の粉を雫の中にやどした言葉たちを超えて鳥が謳う
ほととぎすは 夜通し歌をもやし、カッコウは霧雨を もやし
溶接工は、鉄を燃やして繋ぎ合わせノアより巨船を創り
アリアは、魂をすく ....
月の涙を避け傘の中のふたり
{画像=140605223459.jpg}
人は他人無しには存在できない
自分だけで自立しているように見えて
他人の評価を気にして生きている
自分の生き方も定まらず自信を失 ....
ふたりあやとりがしたくて
赤い毛糸をひろげてみたけど
まわりに
ひろってくれるひとはいなかった
ひとは
ひとりで生まれて
ひとりで死ぬんだというのに
ところどころで
どうし ....
ことがら は 昨日の記憶
そばがら は 今夜の枕のなかで
ひとがら を 朝のヒカリで描きこむ
うまれたての雛のあたまに
残された
一片の から
どこからと問うこともせず
....
今日も生息した
生きて息した
それだけ
役立たずで
怠け者で
どうにもならない私
でも確かに
生息してた
そのことで保たれる
平穏もある
生きて息する
と
生き ....
寝息を聴くヘッドフォンのむこうに雨音
心をひっくり返してみた
雑多なものたちが床に落ちた
ざらついた猫の舌
尖った黒曜石の破片
排水溝にこびりついた髪の毛
紫色に変色した米粒
証拠を隠滅してやろうと
慌てて足の裏で踏み潰した ....
初夏の夕暮れ
見舞いに来た僕は君と歩く
五階の病室から一階の売店まで
五階のエレベーターホールまで
病室から二〇メートルほど
エレベーターに二人で乗る
乗るときも手は離さない
三五年 ....
砂漠に降った 春の雨
港に張った 薄氷
夕陽映した 水田や
虫泣き渡る 磨りガラス
あなたはきっと そのすべて
美しいと思うのでしょう
おやすみなさい 目を閉じ ....
もう二十年も昔になるだろうか
「政府の備蓄米が放出されているらしい」と
うわさが流れていたころ
「あんたの家のお米ぐらいはいつでも確保しておくからね」
そういった町の米屋さん
近くにスー ....
唐突な話なんですがね
最近 魚になりたいって思うんです
いえ 泳ぎは得意じゃありません
なんか太陽とか土とか風とか
面倒臭いなあーって感じるから
海の中はいいだろうなあー
何処までも
....
血のつながりの有無などは関係なく
子供の保護者としてこの社会に登録した者は
個人であれ行政に携わる者であれ
社会に監視され続け
何かあればすぐに疑われることが正しいと
覚悟しなければならない ....
穏やかな気持ち
鏡のあちら側にいる 羊
軋む階段の踊り場から
見下ろしている 外は月夜
白いドレスの裾は ひらひらと
ドアの隙間から洩れる
蝋燭の揺らめきに合わせて
昼間の庭 ....
♯と井の違いぐらいで君を嫌いになった
電車を待つ駅のホームで
小さい両手いっぱいに
飴玉をのせ
ほら、とパパに見せる女の子
(夢がたくさんあるんだねぇ…)
改札口を出た脇で
人々の過ぎゆく中に
突っ立って
開いた本とに ....
愛して欲しいと嘆く
私は淋しい薔薇の花
きっと嫉妬で燃えたぎる
炎のような黄色い薔薇
本当は清楚にたたずむ
白い薔薇になりたかった
やわらかくはにかむ
ピンクの薔薇の花でもいい
....
鳥は羽ばたき
車は車輪を回転させ
互いに併走し
時を追いかけ
滑らかに太陽に向かう
羽ばたきと回転
鳥も車も
全く異なる動きで
自分のリズムと歌で
滑らかに太陽に向かう
....
犬と歩いていた畦道
蓮華草の洪水、うららかな風
晩春の自然は生命を礼賛していた
突然、犬が強く引っ張る
そして、嬉しそうに吠える
畦道の行く手に
冬眠から覚めた蝮が横たわって
ぬらぬ ....
今年友達になった人が
フウセン蔓の種をくれた
うちの庭に咲いたの
私が種を採ったのだから
春になったら撒いてねと言った
フウセン蔓の花というものを
私は見たことが無い
二十年も前に
....
風呂で屁をこいでみた
すべてからの自由を約束する泡が破裂する
諸君! 解放だ! 解放だ!!
バーチャル世界を漂う夥しい単体から
吐き出される0と1の記号は
フェロモンを伴って 波に乗り
キーボードの前に佇む孤独な心の
隙間に入り込む
ディスプレイの
向こうとこちらで ....
今日は 10回言おう
さみしいって
さみしい
さみしい
さみしい
言えてるうちは
大丈夫
哀しみは
まだ
そんなに近くにはいない
私には
あなたがいる
私が
さみ ....
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