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ITTANMOMEN (一反木綿)
薄っぺらな奴だと蔑まれても
捉えどころがないと疎まれても
何処吹く風を自在に乗りこなして
へらへらと今をすり抜けてやる
旗のように風をくら ....
傍らにつづくきみの面影に
いつか忘れようとした秋のいのちを
頑なに重ねることを覚えた日もあった
掬いあげた水溜まりの渇きに
助けられずにないた小鳥のさえずりを
音符に変えることも ....
停電の日まで雪だるまは元気でした
最近の私はからっぽだ
文字は浮かんでは消えてゆく
綺麗にだとかうまくだとか
とにかくそんなことばかり願った
ひとのきこえない言葉を
必死にききとろうと身をのりだしては
からぶりになって ....
じっと見つめる白いディスプレイ
画面の深淵に広がる混沌
ぼんやりとした影がふるえているのだが
コーヒーを一口 指先で机を叩き
たばこを一本 目を閉じ頭に爪を立て
五分 十分・・・
一瞬 ....
無数の雨達はアスファルトに、跳ね
世界を覆う
ざわめきを鼓膜に残して
私は夢から、目を覚ます。
布団から身を起こし、のびをする
朝のひと時。
夢の中で、瞬く間に
姿を消す雨達と
....
一つの苗を手にした、僕は
じぃ…っと屈み
{ルビ水面=みなも}に手首を突っこんで
柔い土に、苗を植える
どんなに風が吹こうとも
どんなに雨が降ろうとも
どんなに陽が照ろうとも
い ....
昨年、天寿を全うし、肉体の衣服を脱いだ
山波言太郎先生の御魂に捧ぐ手紙を綴り
我が家の神棚に、お供えした。
妻が蝋燭に、火を点けた。
少しして、じいぃ・・・と言って
火は、消えた。
....
無数の瞬間瞬間を
音もさせず
かき消していく
静かな雄大な
炎
の
半ば朽ちかけた美の前に
見上げると
人びとは立っている
感じられるのである。
響く鼓動を耳に
溢れる体温を ....
空がどこまでもどこまでも蒼いように
人はどこまでもどこまでも哀しい
朝焼けがどこまでもどこまでも赤いように
人はどこまでもどこまでもいとおしい
僕は生きますか?
僕は生きますか?
今日も僕 ....
お前らなあー
山がいつも大人しく
鎮座してると思ったら
大間違いだ!
俺様のハラワタは
いつだって煮え滾ってる
怒らせたら
熱いのをぶちまけるぞっ!
よーく聴け人間ども
山を ....
寝返りして ぶーぶぶ おならも出るよ
首をぐーんして でへへ よだれも出るよ
一日うんちくんが出なかったら 次の日
グション!ってママ音にびっくりしてたよ
寝返りして パリ子をパ ....
山間の道路が雪に覆われていた間
馬小屋に閉じ込められていた馬
雪が溶けると小屋から引き出され
四輪の荷馬車に繋がれる
出かけるときには
隣の家の生け垣の
樫の葉を食いちぎり
轡に邪魔 ....
右折を待つ
ウインカーが
正しくその意思を刻み始めれば
心臓の鼓動と
いつか同調する
反復
同化
ト切れぬ
直進の車
既視
夕日
影法師
見送ることに
慣れて ....
秋空の下に集合した夏の言葉が
口笛で
いつかの春に反射するから
風は今日も
それらを含んで
ざらざらしているよ。
優しい歌ではないからね、
この口笛は。
ほら、すこし前に、
セミが奏 ....
少年時代
今とは違う奇妙な生き物だった
そのころ家の近くには古い寺があり
髪の毛が伸びると噂される少女の人形が納められていた
人形を実際に見たことはなかったが
子どもたちが人形の存 ....
「この手術は何しろ心臓をいじるのだから
一00パーセント安全だとは言えない
まあ 三パーセントほどの危険でしょう
《ディスプレイでは
心臓を取り巻いた毛細管が
赤いイトメの ....
群青色の空高く 浮かんだ月は艶かしくて
女体の中心を穿つ臍のようだ。
月に向かって両手を重ね
ゆっくり優しく愛撫する。
時間をかけて湿った月の柔肌を
私はもう愛さない。
....
地軸のかたむきが季節をもたらすように
こころのかたむきは炎のまわりを公転し
くるくると自転し陰翳を刻みつづける
同乗したドライバー仲間と
仕事は5月と10月がいちばんいいね
あとは暑いと ....
子供のころ
父の話を聴く時は正座をさせられた
兄弟で並んで正座した
肩こりの父親の肩をもむ時も正座していた
母方の親戚の葬儀の時
肩が凝ったと言い出した父を
正座をして身体を揉んだ ....
冴え渡る青一色のそら
家々の屋根は
くっきりと尖り
わずかに色合いの違う木の葉も
それぞれに自己主張する
一枚一枚のさようならが
鮮やかに翩る
秋の日の真昼
三途の川で溺れている
青空にぷかぷか浮かぶ雲が 好き
頬をなでるおだやかな風が 好き
そんな好きを背に洗濯物を干すあなたが 大スキ!
かぜが
ここよここよと
ささやいている
こっちだこっちだと
よんでいる
どこ?
ぼとぼと
がさがさ
どんぐりが落ちるたびに
音が
響きわたる
響きが増殖して
沢 ....
学校帰りの女の子がふたり
ひとりはピンクのパール系ランドセル
ひとりは水色でステッチが入っている
驚くほど洒落たかわいい服を着て
(これは昭和の感覚 たぶん)
さえずりは巣の中の雲雀の卵のあ ....
昨日のことはよくわからないけど
明日のことなら思い出せそうな
シャンプーみたいな朝です
高校生は修行者のように林間に列をなし
小さな耳に枯れ下がるイヤフォーンと
丸い掌に膨れ上がるケ ....
絶滅危惧種のような気分のときは
おもわず星を探している
頭の中が明瞭に区分けされないまま
時計の針は行ったり来たり
姿の見えない人々は
あちこちでちいさな吐息をもらす
拡散する ....
ドラッグストアの棚に並んだ
石鹸の類い
これでもない
あれでもない
おそらくどこにもないのだろう
探している香りは
高電圧のくしゃみのように
蒸発してしまって
世界のどこにも、ない ....
濡れて帰った鞄から折り畳み傘
思い出した
思い出してしまった
宵の寒空
その底に沈む空気を吸って
木枯らし
髪は乱れ
呼吸は出来ない
内臓を風が通り抜ける感覚
僅かに揺れる身体
静けさ ....
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