夜、起きて台所に行く
冷蔵庫を開ける
豆腐が二丁入っている
皿に豆腐をのせる
豆腐を握りつぶす
二丁ともつぶす
皿も豆腐も白いのに
皿を握りつぶすことはない
世の中の仕 ....
〈好き〉ってなんだろうね
*
わたしってさ
誰かを〈好き〉なったことってあるのかな
〈好き〉ってね
愛しているとは違うし
意外と精神的なものだったりして
Like ....
真夜中
静寂に耳をつかまれる
今夜は 星も
月も風も犬もない
どこかの
高い塔の
窓の暗闇から ひっそりと
花びらを撒くひとがある
それは恋をするむすめ
それとも
も ....
虹がかかると
いうけれど
ほんとうはぜんぶ
水なのです
風がそよぐと
いうけれど
ほんとうはぜんぶ
波なのです
町が見えると
いうけれど
ほんとうはぜんぶ
光なのです
....
履物を脱いだらきちんと揃えること
食事のときはちゃんと座ること
きちんと ちゃんと
口癖の祖母の跡
入ってきたドアの
でてゆくドアの
閉まりきらない姿が
あくまで悲しいのでなく
....
会社は休みだけれど
早起きをして
いつもとは逆方向の電車に乗り
潜水艦が停泊する港街に来ている
海岸にある公園で
安っぽい
ビデオの撮影現場を横目で見ながら
海に面したコーヒーショップに ....
部屋には窓が必要だ
四方を壁に囲まれた部屋に放り込まれてから
俺はそんなことを考えている
部屋には窓が必要だ
日当たりのいい場所には
きれいな花が咲く
見渡す限り、高層ビルに埋めつくさ ....
何もない時代に
何もできなかった私は全く幸せではなかったのかもしれない
何もできなかった
私は
時の中で 何故 何もしなかったのだろうと思った
未来について 何も考えなかった私は
そし ....
アナル、いわゆる肛門の奥には
秘密のスイッチがあって
それを押すと
あの町に行ける
真っ赤な部屋を抜けると
あの町、独特のモノクロの世界
娼婦の塔
高架を走る思い出
そして、涙に濡 ....
{画像=110417072954.jpg}
(一)
大きな風は流れ
黄色い砂を運び
赤い砂を運び
緑の大地へ至る
(二)
街に砂が ....
にんげんかんけいって
なんなんだ
はながさいたとか
むしがうるさいとか
そういうことじゃ
ないのか
はるは
とくにうるさい
さかなかった
はなのこえが
....
けものたちが順番に目覚める
芽吹き始めた草木も
長い眠りから醒める
こんこんと湧き出る水に口をつけ
唇を濡らすと
また新しい路に出会う
まだ見知らぬ誰かに出会う
新緑とは、出会い ....
ひととして
といわれても
もはや
ひとではないのだから
しかたがない
ひとさまのたべものを
ぬすみぐいしてる
むしよ
おまえのおやの
かおがみてみたい
....
我が国の
女は 懐胎を知ると
結わえられた何本もの糸が ぶちぶちと
引きちぎられていくのがわかる
やがて 星型をした陽だまりを我が手に抱き上げ
母となる喜びを知るのもつかの間
....
それは腕でした
ベッドは空を飛ぶいきものになったので
わたしのライフカードからは
にんげんが外れました
それは腕でした
ブランケットの内でまどろむわたしを抱き
耳を塞い ....
今日は落日は見なかったな
見なかったな。小雨に覆われて
道行くケンタロウも見なかったな
ケンタロウの紐に引っ張られていくおじいさんも
やっぱり見なかったな
観察という行為が
とても少なくな ....
私の胸の
奥に手をいれて風がなく
どこからの風か
不安の風か
震えながら抱きしめる
私のいのちが
かきけされない今は
この震える風が
どこからきていようと
一身にうける
....
貰ったキーホルダーを見る度に
僕の心は体を離れる
ずっと遠いあの街まで
丘の上には大きな桜の木があって
公民館と図書館と体育館と
少し行くとスーパーがあった
公民館には児童館がつい ....
朝焼けをふたりじめして。
舌に乗せたらいいよ。ひかりのバター。
とけるものは。ぜんぶさみしいから。
すきなもの。屋上にあるもの。
給水塔。ふるい排気ダクト。
埃の匂い ....
いじわるそうにあなたが笑うと
背中の真ん中がゾクゾクして
どうしてもその唇に触れたくなる
この衝動をなんて呼べばいいの
その長く白い指が私の頬に触れる時
自分の全てを捧げたくなる
これ ....
特に何も意図していない時に訪れる 色々な物事
今回の災害のような出来事を 人はいつも 考えられない
パチンコ屋に入る時の気分のようなものなのか
しかし つまらなく思える 見ている何もかもが
....
空車、と書かれた
駐車場の表示を見て
娘が空を見上げる
もちろん空に
車などあるわけがない
雲しかないね
つまらなそうに言う
娘よ、きみには
遠い昔のことかもし ....
飲み会の帰り道 二人きりになったとき
きみは突然腕を組んで僕に寄り添ってきたね
そのおっきなおっぱいが肘に当たっていたよ
とってもいいにおいもしたよ
きみがあまりにセクシーでかわいくて
僕は ....
まどろみの風下で
アミメキリンの夢を見た
縁側の木漏れ日の
網目をかいくぐって
鯨偶蹄目キリン科の
枝先に腰掛けていた
うたたねの岸辺で
アミメキリンの夢を見た
首を長 ....
仕事帰りに街を歩けば
赤い灯青い灯夕闇を照らす。
裏通り馴染みの
一杯飲み屋に
そこに
今日を捨てに行く。
そこでぼくは
ひたすら喋りながら
呑み続ける。そしたら
なんだか偉 ....
眠れない夜明け
失った言葉達が
くるくる回る
たばこに火をつけて
煙を吸い込んだら
不遠慮なシナプスが
何本か繋がり
六つ目の感覚を
取り戻そうとする
こんな時は
洒落たカフェにで ....
星をみようかと夜半そとにつっかけて出てみれば
降りそそいでいたのであった
降るような、とはよくいうが実際
音をたててばらばらと降るのがこんぺいとうのようだと
妙に冷静に思いながら
....
春光に
匂う
息をつめ
畦道をゆく
(ただのいきもの
(ただのいきもの。ここでは。
匂う
緑、
汗、
夢が
....
風を数えることができない
今私にぶつかった
私の髪をさらっていった
風を色分けることができない
だれかの悲しみに
順列をつけることができない
少し待ってくださいと
目をふせる人をフォ ....
樹が樹である理由のひとつ
遠のけば近づく光のひとつ
空の切れ端
うなじになびき
夜と鈴しか通らぬ道に
いつのまにかできた水たまりには
ずっと雨しか映らない
雨では ....
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