よい父は、死んだ父だけだ。これが最初の言葉であった。父の死に顔に触れ、わたしの指が読んだ、死んだ父の最初の言葉であった。息を引き取ってしばらくすると、顔面に点字が浮かび上がる。それは、父方の一族に特 .... 未だ血圧の上がりきらない朝
乳白色の靄がかかった意識の西側から
コーヒーの香りが流れ込んでくる

オールを失くしたボートさながら
廊下をゆうらりと彷徨いながら
食卓のほとりに流れ着く
 ....
 あの……おれ、夢見るんですよね、海の。ときどき夢のなかに海がでてきて、おれはサーフィンやってるんです。でっかい波にのってると、そのままヒューッて空に飛んでっちゃったり……あと……パイプ・ラインのなか .... 部屋の中に集落ができた
小さな集落だった
本家、という男の人が話にきて
畑で採れた作物を
いくつかくれた
学校が無くて困っている
というので、近所の小中学校と
市役所の場所を教え ....
目の前に一本の道が現われた。

この道を行けば、海に出る。

ほら、かすかに波の音が聞こえる。

見えてきた。

海だ。

だれもいない。

天使の耳が落ちていた。

 ....
つらいことを
乗り越えるために
欲をこころの糧にする
けれど 大事な物事は
一つでもあれば良い


こころの深い傷と共に
生きるね
この傷の深さは
いのちの深さと
つながっている ....
電車に乗ろうとしたら
頭の先から尾ひれの先まで
すっかり人魚になっていて
人魚は乗れません、と
電車の人に断られてしまった
取引先には遅れる旨連絡をして
しばらくホームで待つことに ....
雨は降ったり止んだり降ったりで
四季のある国のひそかなもうひとつの季節

室内干しの洗濯物
取り込むまえに
ちゃんと乾いているだろうか、とさわってみる

乾いているようにみえても
繊維 ....
 暗闇の中には沢山の物語がある


  パリの老いた靴作りが
  ハンチングを傾けてかぶっているのは
  むかし街の女に
  とても粋だわ と口笛を吹かれたからという話

  それでそ ....
一人でふたり分の荷物を整理する

なんて過酷で残酷な(笑)

やり始めるとやっぱり記憶に飲み込まれそうで

それでも時々、楽しくて


壁のシールを剥がせば そこだけ白くて

こ ....
 手をコピーする。左手をコピーして、右手を
コピーする。腕をコピーする。左腕をコピーし
て、右腕をコピーする。顔をコピーする。光を
見ないように、目をつむってコピーする。肩と
胸をコピーす ....
 都会の片隅に、にっこり
 置いとかれたお地蔵さん
 短い夢にからかわれ
 ビルからまたビル渡り
 錆びた引戸の奥で
 さよならぽつり

 きみはやわらかに抱きしめ
 つつみながら
 ....
 夜

月明り
独り暮らしが始まっていた
絶望も希望も寝静まり
生活が一つ転がっている

 朝

目が覚めて思う
生きていた
しかも快晴だ
何にもないので
布団を干した

 ....
波がそよいで

靴底に、沁みる

遠い水を{ルビ浚=さら}い

 海が伝う。

    {引用=あの日}

そっと {ルビ掬=すく}い

手の内にきえる


一瞬、少 ....
誰にも故郷があって

それが心の拠り所と呼べるものでなくても

またその地を踏んでみれば 何か思うものがあって


私はなぜだか 駅に降りたら涙が込み上げてきた

帰ってこれたことが ....
夜の風 気持ちよくて
外でコーヒーをのんでみた

ええかっこしぃ みたいで
はずかしいけど
正直
かっこいい気分になった

しばらく飲みながら
ご近所をながめる

人気(ひとけ) ....
宇宙人が存在するか、しないか、それともこの話題に興味がないすべての人々よ、聞きなさい

宇宙人がいるのか、いないのか、それとも興味を持たないかを気にするその前に
最悪に備えて行動する必要がある
 ....
 グミ

どうぞ、と差し出された袋のなかには
色とりどりのグミ
お祭りみたいにひしめき合ってる

青いのをひとつ
取り出して
口に入れる前に電球にかざす

ママが言った
海の色を ....
おふとんとわたくしの
さかいめがおぼろげ

すなのこまやかさで
ぬりこめられて

まぶたをきちんと
とじたまま

きょうのしごとについて
まとはずれなだんどりをくりかえす

お ....
人間は個として
およそ同じ体積の中で
古い身体を処分し 新しい身体を作り 生きている

樹木というものは
死んだ古い身体の上に 新しい身体を重ねながら
体積を増やし続け 太く大きくなってい ....
目の前に大きな山が聳えている
あんなに高い所まで登れるんだろうか
と思っても
一歩一歩登っていくと
必ず頂上に着くから不思議だ
どうしてわざわざ苦労して山なんかに登るんだよ
という人がいる ....
家の窓の中にいると
そこが家の眼だということを
うっかり忘れそうになる
薄いカーテンを開け放ち
風を出迎えると
人の眼も
家の眼も
まばたきする
季節のかわりめに
少し驚くようにして ....
ひなたぼこ、
光の海を泳いでる
私の心はふわふわり

さっき夢に見たよ、
あけっぴろげのあなたを
初めて立ち上がるあなたを
珍しそうに言葉に触れるあなたを

僕ら、光の向こうからやっ ....
本当は完結したなりにしておこうと思っていましたが、今回のシリーズを読んで下さった方々のために幾らかの説明責任がある気がずっとしていました。そんな訳で蛇足を足し添えておきます。

 ....
春の日も夏の日も、そこに行けばそこに海辺があり磯があり、秋の日も冬の日も、そこに行けばそこに丘があり林があり、そこはいつもやわらかく甘い匂いが流れてくる場所。焼き場があるのだ。木陰のさしかかる三角屋根 .... 田舎に住んでたから

私たち お互いに車を持ってた

お互いに お互いの車のキーを持ってた


あなたが去る日 キーを返したの

ホルダーの重さが半分になった


去ることはわ ....
 正しい貨幣観に気づくと、財務省の官僚を筆頭にした、財政均衡主義者や、財務省の御用学者や、その取り巻きの財政破綻論者や、訳の分からない緊縮財政派の主張していることが、バカバカしすぎて、とても聞いていら .... ディオゲネス・ラエルティオスの『ギリシア哲学者列伝』を読んでたら
アリストンという名前の哲学者が、ハゲ頭を太陽に焼かれて死んだって書かれていた。
べつに、ハゲでなくっても、日射病ぐらいにはかか ....
人生が ぽつねん 立っている
カエルが キーキー鳴いて
そうして 朝の間際 僕も泣いていたのでした

運命が純白の手を 僕にふるから
僕は さむざむ と泣いているのでした
ふわふわ 青 ....
「今日の貨物も 重そうだな」
「ああ 空の雲も 重そうだな」

凍り付く森の枝先 すり抜けて 
貨物列車がゆく
港の駅まで たんたたんと

コンテナの奥はガラスの水槽です 
銀の平原を ....
山人さんのおすすめリスト(5755)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
陽の埋葬- 田中宏輔自由詩10*23-7-17
食卓に朝を置く人- 夏井椋也自由詩14+*23-7-15
陽の埋葬- 田中宏輔自由詩14*23-7-10
集落- たもつ自由詩23*23-7-9
陽の埋葬- 田中宏輔自由詩14*23-7-3
※五行歌_四首「どこに転んでも大丈夫」- こしごえ自由詩5*23-7-2
距離- たもつ自由詩10*23-7-1
梅雨の通夜- そらの珊 ...自由詩11*23-6-30
ヨル- リリー自由詩10*23-6-29
引っ越し- 短角牛自由詩16*23-6-29
コピー。- 田中宏輔自由詩15*23-6-26
お地蔵さん- soft_machine自由詩823-6-25
One_Day_- 空丸自由詩1623-6-22
raindrop- ryinx自由詩8*23-6-22
小旅行にて- 短角牛自由詩9*23-6-19
五十の夜- 日朗歩野自由詩2*23-6-13
意味の有無を- ゼッケン自由詩323-6-11
群青- そらの珊 ...自由詩12*23-6-9
おふとん- 日朗歩野自由詩14*23-6-3
樹木のように- 日朗歩野自由詩11*23-5-18
山に登ると- ホカチャ ...自由詩6*23-5-18
まばたき- そらの珊 ...自由詩16*23-5-8
ひなたぼこ- ひだかた ...自由詩8*23-5-5
女學生日記について- TAT散文(批評 ...6*23-5-4
わたしたち死ぬと甘く軽い生きもの- 片野晃司自由詩1023-5-3
軽くなったもの- 短角牛自由詩7*23-5-2
「クレクレ星人の独り言8、正しい貨幣観を理解しよう。」- ジム・プ ...散文(批評 ...3*23-5-2
カラチョキチョキ。- 田中宏輔自由詩17*23-5-1
夜です- 家畜人自由詩523-4-18
水_槽_列_車- 松岡宮自由詩15*23-4-12

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