哲学者と詩人と新宿のホームレス
もしも資質があればなんにでも
応用数学者と宇宙物理学者あるいは
ドビュッシーとツトム・ヤマシタ
こんな問題意識で生き伸びても
脳力もないのに戸惑うだけ ....
一秒一秒
時は真っすぐ進んでいると
信じている毎日
現実にある今は
つねに更新されていると
疑わない毎日
初めて見る場面なのに
使い古されたシーンが
またもいつのまにか ....
白く光る田舎の道を
カンカン鳴り響く踏切越え
海に向かって歩いていた
薫る潮騒、うねる波
空き缶一つ、浜辺に落ちて
わたし独りのたましいが
水平線を覗き込む
遠く船が落ちていき ....
世界で 私ひとりができない逆上がりが
夕焼けの色を染めていく
誰も 見つけられない 鍵穴の向こうに
通り抜けていった身体の痛み
まっしろな手紙を 下駄箱に添えた
....
コロナウイルスの騒ぎで
ウイルスというものに興味がわいて
いろいろ調べてみたが
調べれば調べるほど
ウイルスの奥深い謎の
底なし沼が見えてくる
その謎のなかで
最も面白いのは ....
薄暗い
漠然と広がった
空間のなか
台形の
ノッペリとした
大人の背丈半分程の
鉛色の工作機械が
等間隔で何台も
一列に並べられている
大きな金属音があちこちから
互いに呼応す ....
かえらぬ人々の
かつてかえっていった道を
あるく
うらぶれた街のシャッターには
等高線のかげがかかる
どこよりも遠い落日にてらされて
石室めいて閉ざされた家々の
木立のな ....
さて、読者のあなた。私は筆者です。これから主人公が遠い眠りから目を覚まします。そこで私は扉を開けておきました。そうでもしなければ主人公の彼は、素晴らしい外に出ることはないでしょうから。彼は引きこもりで ....
きれいだね、
ほんと
きれいだね
ひさしぶりの
ふるさとの浜辺で
花火を
とおく
みつめながら
やわらかな笑みをうかべていたきみを
うちわと、浴衣と、えくぼと
海のにおいと ....
被せものをしたお陰で
自分が
いかに臭く
いかに
蒸し暑いのか
思い知らされることになった
はずだったが
最近では
そうしたものにも
慣れてしまって
自分が
どれだけ
....
都会の蝉は真夜中にも鳴く
故郷の山は静まりかえっている
耳の奥で通奏低音
ただでさえ寝苦しいのに
あまり暑いと鬱になる
生きていけるのか なんて思う
そして やっぱり生きていたい ....
オセアニアの少女たちのように 裸足でさまよい 歩くことを覚えた
夏の
ネオンに透き通る
それぞれの肌
色鮮やかな光の波に漂うビジネスマンと ふれた肩
ゴムボールを落とした子供を
....
一本だけ
まつよいぐさに
自己憐憫は欠片もない
高速道路の高架下なので雨露はしのげる
水はない
疾走するクルマがはね飛ばす
わずかな飛沫かたまに流れてくる霧
あるいは迷い込んだ野良犬 ....
あとは標的を見つけるのみ、といった感じの鋭角的な光線は、ちょうど天井の一角を貫こうとでもするみたいに壁を走っていた、がらんとした部屋の中に突然展開されたそんな光景は、時代錯誤なパンク・ロックバンドのジ ....
車の助手席に乗って病院へ行く
アル中たる僕は運転などしない
母がする
通る自転車の若い女が僕の車を見て
もぅやだ~というとてもイヤな顔をする
ごめんねぇ、僕だってイヤなんですよ
そ ....
生活に芯というものがあるとしたら
花を挿していなければいずれは緩んでくるものだ
日々の心のゆらぎは錆びた弦楽四重奏
山巓からの水脈が生をうるおしているのならば
堕落した駱駝は回文好きだ ....
感染爆発の今だから
この街にはロックダウンが必要だ
金をくれよそうしたら
おとなしく家にいるからさ
テレワークもできない環境じゃ
外に出なりゃ稼げない
行きつけの食堂も瀕死だし
行ってや ....
セピアにくすんだ壁が
「ゆっくり休んでいいよ」なんて囁く夢の跡
ゆがんだ窓ガラス越しに
今日の少女が自転車で駆け去るのが見える
遠い昔に透明だった心は
何度も重ね塗りして濁ってしまっ ....
人がいなくなった庭は
草がぐんぐん伸びて
かつてその地に眠った心臓のありかを隠した
もう探し出せないし
探そうとする人もいない
よく見ればブルーベリーが細々と実り
小鳥が集う楽園になった
....
やる気が出ない
スタバのあんバターサンドを食べてもコーヒーを飲んでも、恋の欠片もなけりゃ、苦いまんまのLIFEに救いを
求めても開かないドアの真ん前に
花束持ってずっと待ってるナズナのようなこの ....
前期の授業最期だった。
無事過ぎたことが何より嬉しい
友達は一人もいないけど。
とにかく次の目標は、再試験を受けずに済むことだ。
がんばれ私
あの人も頑張ってる
昨年のこと
とある詩のコンクールの審査を依頼されて
はい、はい。と気軽に引き受けた
どうせボランティアなんだから
身構えるほどの責任もないだろうし
兎にも角にも
年金詩人は暇だったのだ
....
リモートで、寝ては見ての繰り返し
テスト勉強はできないし、1日だるい
リモート授業にテスト勉強の入り込む隙がない
それなのに一昨日お見合いなんかするから
話すことなんかほぼない相手と
苦 ....
夜の河を渡り、
艶やかな曙光の漏れる
真っ暗い雲の拡がりをただ眺める
漸く拳大の握り飯を噛り、
竹筒の水を飲む。
水は、化粧の匂いがした
ふと剣鉈を抜いてみたくなった
微かに残った夜 ....
無限につらなってゆく世界の果ての階段を
親しげな不条理とうでを組んできみがのぼってゆく
いつもおもうけれど
宇宙のなかの点にすぎないのに
点には面積がないのに
線にも幅がないのに
ぼく ....
妹よ 夕暮れの卓袱台にまごころがなくなり説得しか残らないのは淋しい
りかいしないままりようしようとしないでおくれ
日がな
海水浴に
明け暮れる
まだ胸のない妹よ
淡水学派と海水 ....
夏の空は前触れもなく突然、父親のように厳粛である。たとえばなんでもない昼下がりのこと、自分の影に肩を叩かれ、慄然として立ち尽くす隙に。たとえば空っぽの花瓶に、俯いたひまわりだが、せめて一輪でも飾ろう ....
意思か欲望か気まぐれか好奇心か
こうして今
あなたはこの詩を読んでくれている
つまり、23篇で100円のこの電子詩集を購入して頂いたわけだ。
不思議っちゃ不思議
自分の詩が売れたんだ ....
休日の午後4時、
大きな鍋にぐらぐらと
日々のあれこれが沸騰する時間
きっかり2分
それ以上でも、それ以下でもない
....
脳は頭がわるい
と顔が笑う
混色と純色をまだしらない
まだらのだらしない原っぱで
家を建てない
美と死と箸をすっともってしまうと
テレビのタモリと暗 ....
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