ひとつ うつろい Ⅲ
木立 悟






風が途切れ
銀は降り
野に鉱の手を
描きつづけている


冬の雨の指
砂と水滴
夜の右を
ついてくる光


階段は消えかけ
空を指し
夕暮れの匂いが
むずがゆく在る


糸の宙宇
耳にからまり
骨と同じ数
発し 放つ


花の名の夜に腕をのばし
ひとつの川を名からほどき
闇の行方を
たどる


擦り切れた
明るい夜に
海はまだ轟いている
うつぶせの 轟き


目には樹
息にはつぼみ
咲いてはこぼれ
雨曇になり


暗がりの平衡
坂が坂につながるところ
それ以上は無く
粗いまたたき


花びらを
陰を
喰みつづける魚の
雨をよぶくちもと


ひたいの光を
空は分ける
縦と手のひら 霧と中庭
渦と無人と みどり ひとりごと


目を透るもの 透らぬものの差が
水銀の粒の柱にあらわれ
消えては廻り
景を薄くする


夜にならない午後に
呪い座は未だ在り
流れぬ川に見つめられながら
流れぬ川を見つめている


やさしいものらは見えなくなり
やわらかく冷たく寄り添っている
野と街の境 ひとつの渦
空を映し 脈うっている


























自由詩 ひとつ うつろい Ⅲ Copyright 木立 悟 2011-05-22 17:12:53
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