積むひと
恋月 ぴの
あなたは積み上げる
与えられた積木を丹念に積み上げる
それが人生
※
親指と人差し指で作った輪の大きさぐらいな積木
いつも何かに苛立っていて
終りの無い議論を隣の積木に吹っかけてみたり
時には手を出して大騒ぎになる
それはあなた
わたしにだけ優しいつもりなのか
夜空に届けとばかりに息を切らせては
お腹の奥に愛の記憶を象った
※
やがてわたしは身ごもる
満月みたくに膨らんだ臨月間近なお腹
片時も忘れて欲しくないのか
それとも自らの存在を誇示したいのかお腹のなかで暴れてる
あなたと
わたしの
ふたりの子供
※
せっかく積み上げた積木を崩される
それも人生
生きている限り諦めることなど許されないから
どんなに愚痴をこぼそうとも
再びと積み上げる
積み上げた積木の頂点には古びた三角錐を乗せて
ぐらっと傾いた
その刹那
あわてて押さえた積木の揺れは
生きてる証であるのだから
何かを握って離さない幼い掌の力強さに気づかされる