地下鉄の窓に
乳母車の娘の顔が
蛍光灯に照らされてぼんやり映る
背景はグレーの壁で
配管が横殴りの雨のように流れる
全体が切れかかったTVのような眺めだ
帰れなくなった宇宙飛行士が
....
話せば判る
夫婦喧嘩した際、父が母に言い放ったような
パパとママ、どちらが好きなの
そんな母の発した答えようもない問いかけに弟と私
布団のなか、ひたすら息を潜めるばかりで
話せば ....
大人になって
触れないものが増えました
こんな顔をして家には帰れない気がした
ヨシミは自転車で夜を町を走っていた
お母さんをさがしてパチンコ屋さんをわたり歩いていた
カゴのなんでもバッグにケイタイがのぞいていた
目からなみだがあふれていた ....
{引用=
またいつもの
自転車にのって
ぼくがむかっていた
先とは
どこだろう
でも
いまは
どこだろうがかまわないおもいでいっぱいなのは
はたして
ど ....
昔々(むかしむか〜し)は無関心
徐々徐々にに親しくなって
今は友と呼べる奴
昔々いつも傍らに蹲(うずくま)り
たまには気になるときがあるが
それはいつでも憂鬱さとともに
昔々は青と ....
蜂蜜の瓶で溺れ死んだ
ミツバチのことを想ったら泣けてきた。
べつに私の涙なんて
彼の家族の足しにもならないのだけれど。
朝の訪れるたび
切り離されたからだを思う
昨日との交信が途絶えて
寄る辺ない
なまぬるい風に
輪郭を確かめる
季節がしみこんでくるのと
季節に染み出していくのが似ている ....
泣く女
泣く女は階段の下で
セーターを編んでいる
赤い毛糸と緑の毛糸で
哀れな女
シンデレラは靴の片方をなくした
シンデレラは靴の片方を探している
シンデレラは義足の片足 ....
ママは
数センチ 浮いてるんじゃない?
なんだか
ふわふわして
とらえどころがないよ
娘は言う
中学の頃
娘の友人と同レベルの
テンションで話す
あたしが
恥ずかしく ....
逃げ水の中で魚が跳ねて
アスファルトが柔らかい
太陽は無関心な発光体
空はどこまでも遠く
僕は許されている
「だけど」 ....
たった一本の卒塔婆のように
不健康に伸びた櫓から
私はずっと向こうの火山を見守る
今にも昂りそうで昂らない
噴き出しそうで噴き出さないそれを
ひたすら見守りつづけて幾星霜も過 ....
月の晩には誰も知らない小さな島が
沖の静かな呟きの上に姿を現わす
まるで忘れ去られた溺死の骸が
呼ばれて浮上したように
月の晩には紅い魚が青いヒレで
黒曜石の水をかき回す
眠る白砂が舞 ....
夕暮れ中央道にのり込んだ
明滅するテールランプが湿度ににじんで美しい
すべての初めては心を激しく呼んでくる
生きている
くるしいし高ぶるし泣きたくて笑いたい
センテンス
台 ....
{引用=
君の調子がどうだか
気にならないし
君の虚偽が
いくつずつ
世界の果てに通信されていくのか
知りたくもないよ
この世は
通信教育なんかじゃない
僕は昨日
大型 ....
疾走する赤き車
似つかわしくない車
それでも
気にならなくなった
麻痺したのだ
新産業道路から
尾久橋通りへ
さらに環状七号線へ
夜の四車線道路をとばす
その恍惚感
月の光 ....
えっ、ここなの?
翔太さんに背中押されるようにくぐった暖簾
彼とはじめてのデートだしお洒落なイタ飯屋さん期待してたのに
お母さん、ただいま!
彼の挨拶に笑顔で答える和服姿の女将さん ....
桜に混じって散り始めた朝も
川面を滑る鴨たちの口ばしも
濁さないほどそっと静かに
重ねた手のひらからさらさらと
留まることなくこぼれて落ちる
喉元がとくとくと同じリズムを刻む
指の ....
些細なことなのですが
気に病んでしまうのです。
SNSで申請を弾かれ
呟きを拾うことを拒絶され
作品を否定され
ブラウザも言うことを聞かず
よくあることです。
些細なことなの ....
ヒトとイヌが
並んで歩いている
こんな光景が
朝と夕方にあちこちで見られ
夜
ヒトとイヌは一緒に眠る
遺伝子を未来に運ぶ乗り物として
イキモノはこの世に産まれてきた
だから
....
もめんの色
出会い
かりそめ
息をつく
蒸気をとおして
戻すつながり
熱さまし
衣ずれ
目的地
季節と、契る
ちらばった雲に
指をさして
【マルボロ】
かあさん あのね わたしがうまれた世界って
本当の本当は しろい正方形だったのでしょう
そこはとても清らかな場所だったのでしょう?
エタノールで消毒した 清らかな ....
モンパルナスのキキ
信頼できる男は
愚痴を言う集まりに
えげつない
どんちゃん騒ぎ
ロスト・ジェネレーションが
....
ぼくはまだいちご泥棒と眠りたい置き忘れたものばかりの園で
衝動を積み上げていく指先に梶井のレモンわたしのオレンジ
気だるさはインクに滲み水底の青い散文髪に絡まる
....
道の歪みのそこここに
溜まって出来る水たまり
昔の雨にはつきもので
道行く人の迷惑で
車が通れば泥をはね
人が踏めば靴汚し
道の歪みの性格を
そのまま見せる水たまり
そのうち道 ....
億劫な時間に堕ちた鼻声
飲み忘れた風邪薬はじっと息を潜めていて
嫌なことばかりを思い出してしまう
咳払いをする度に捨てられてゆく羞恥心と
塵も積もれば山となりゆく倦怠
冷房の真下で居眠り ....
久かたぶりに訪れた渋谷センター街
取り壊し中の建物とかあったりして何となく余所よそしさを覚える
平日の昼間ってこともあるのだろうけど
チーマー、ガングロな人びと
そして神話の国の神話な ....
100612
晴れたので
トロンボーンを吹く
トランペットだと
昨日の人が泣くのだ
夏が来たと騒ぎだし
夜の石を捜し出す
晴れたので
....
遠い風/海の凪
光の海/遠い風
潮騒を割り溢れ出る光の帯
遠く海を渡るカモメが一羽
君のもとへ早く
焦らずに帰ろう
遠い風/海の凪
もう陽がしずむ
曖昧になる境界
遠い海 ....
忘れられた小さな空がある。
初夏の風を受けて
駅に続くなだらかな坂道を
歩く途中にある
金網のフェンス越しに
名も知らない花の群生
赤紫の小さな花を
背の高い茎にたくさんつけなが ....
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