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 リアルには実態がない
 わけではない、勿論
 ただそれが波及する場所に
 なにかしらの不具合が
 生じてしまうのだ、きっと

 リアルはとても
 いたずらっ子だから

 リアルは
 ....
 敷地のすぐ南側に土蔵がある
 今や歴史はすっかり耄碌し
 殆ど零れ落ちた漆喰のそこを
 しかし私は依然として
 こよなく愛でる

 穏やかに晴れた日は
 土壁の体温が心地いい
 昼下 ....
 ゆで加減に失敗した海鮮パスタを食べていると玄関のチャイムが鳴って、ますます気分が滅入った。お届け物でーす。ドアを開けるなり、男性宅配員の間延びした声とともに――これはなんだろうか――賞状などをしまっ ....  父さんはニ層式洗濯機の中で
 ぐるぐる洗われている
 家族みんなに
 臭いって言われるから

 姉さんは乾燥機の中で
 父さんと同じように
 だけどひっそりと回っている
 好きな ....
魚の小骨のように胸腔にナイフが引っかかっております。
子どもの時分からずっと引っかかっているのです。

(おかしいですか?
 たいして悩みでもないのですが、
 やみつきだなんてとんでもない。 ....
 いっぱしのおとなになりてえ
と泣きながらうそぶく四十男を
わたしは胸の中に招き入れる
 いっぱしのおとなはつまらないわ
と慰めてあげることも
 いっぱしのおとななんかくそくらえ!
といっ ....
 「泣き腫らした家」

 その家は号泣する
 時間を失った丘陵にたたずみ
 家主の帰りを待ちわびながら

 その家はときどき夢想する
 彼女が門扉を開き
 飛び石伝いにやって来るさ ....
 生まれたばかり――
 あまりにもまぶしかったので
 まぶしい と
 叫んだはずなのだったが

 揺籃期――
 プロレタリア文学だと称する
 ひなびた小説を口に入れるが
 不味くて ....
 「骨音」

 その森の中のまぶたは
 たいへんうつくしい

 背骨を失った世界よりずっと

 まぶたに広がる昼下がり
 湖のほとりで
 老人は 骨を拾う

 露の輝く草を分け
 ....
 母が私の靴をはいて出てしまった。
『せちがらい世の中です。どうか探さないでください』
 朝起きると母の書き置きがあった。あまりにも淡白なセンテンスだった。私は泣きながらトーストをかじり、泣きなが ....
(私はいつも仰向けで寝入り
 決まって仰向けで目を覚ます)

その日天井のしみは、妹のクラスメイトの顔だった
昼下がりに学校を早引けしたきり妹は姿をくらました

(私はいつも仰向けで寝入り ....
 もうふた月ほどたつだろうか。わたしは毎日、すこしずつ家財を捨てている。家財、といっても、どれもさまつな――そのほとんどは夫と共有して、それなりの思い出がつまっているのだろうが、もはやさまつとしかいい ....  目には見えないが
 確かに巨人の朗読が聞こえる
 すぐ近くにいるときもあるし
 間遠いところから
 細々と聞こえるときもある
 詩や あるいは詩が

 巨人は聖書のゴリアテとは
 一 ....
 会えてよかったですあなたが遠いところに行ったみたいで淋しかったから一つずつ小さな部屋の窓ガラスが静かに開け放たれていくようなお話かしらあなたがこれからも清潔な歌をうたいますように瑞々しい歌がうたえま .... 猿ぐつわを噛まされた
裸の青白い男が椅子に坐っているので
私はどういうわけか
ふるさとを思い出さずには
いられない

椅子の背に両手を縛りつけられ
陶器のようにつるりとした太ももに
一 ....
 たった一本の卒塔婆のように
 不健康に伸びた櫓から
 私はずっと向こうの火山を見守る

 今にも昂りそうで昂らない
 噴き出しそうで噴き出さないそれを
 ひたすら見守りつづけて幾星霜も過 ....
nonyaさんの豊島ケイトウさんおすすめリスト(16)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
リアルのすべて- 豊島ケイ ...自由詩14*10-11-26
土蔵の中の子供- 豊島ケイ ...自由詩11*10-11-16
そこらへんにいくらでもいる人- 豊島ケイ ...散文(批評 ...15+*10-11-11
ちぐはぐな家庭- 豊島ケイ ...自由詩28+*10-11-6
反映- 豊島ケイ ...自由詩17*10-11-1
情事- 豊島ケイ ...自由詩9*10-10-29
泣き腫らした家/泣くまでの経緯- 豊島ケイ ...自由詩14*10-10-26
軽妙なるクロニクル- 豊島ケイ ...自由詩14*10-10-21
骨音_他二篇- 豊島ケイ ...自由詩16*10-10-10
母の靴、私の靴- 豊島ケイ ...散文(批評 ...18*10-10-6
しみ- 豊島ケイ ...自由詩17*10-10-2
花冷え- 豊島ケイ ...散文(批評 ...14+*10-9-27
朗読する巨人- 豊島ケイ ...自由詩15*10-9-15
六月- 豊島ケイ ...自由詩17*10-8-3
猿ぐつわの男- 豊島ケイ ...自由詩15+*10-7-25
対峙- 豊島ケイ ...自由詩13*10-6-25

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