どうやら苦手なものに好かれてしまうらしい
人前で話すのはいつまでたっても苦手なままなのに
旧友の結婚式でスピーチを頼まれてみたり
不得手解消と中途半端な意気込みで卒業した英文科の呪いなのか
....
抱えきれないほどに大きくなりたかった
青々としたたくさんの細長い波が視界を埋め尽くし
何処まで続いてるのかなんて見当も付かない
涼しい風が吹く頃には黄色く重い稲穂が頭を垂れ
やがて精米 ....
汚れたうさぎ色の空から
アスパラの雨が降る
雨は次々に根を潜らせ
背中から空へ白いまっすぐな筋を何本も何本も何本も
川の溜まりの鋼の渦に
くるくると浮かび上がるそのひとの「きのう」
....
そとは 篠突く
{ルビ=雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨}
{ルビ=雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨}
{ルビ=雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨 雨 雨} 雨
失うほどに ....
忘れたわけじゃないよ
ただ忘れようとしてるだけ
どんなにラララと歌っても
ふと寂しさの穴に落ちるんだ
小さな小さな穴なのに
逆にそれで落ち込んで
圧迫する息を丸呑み ....
{引用=
ハイビスカス
なき濡れる ハイビスカスよ 咲かないで キミに会えない 夏はいらない
「あいつって…」 噂話が 気になって ゆるゆる溶ける チョコレ ....
醜い姿でも暗闇に溶け込めるなら
私はそれでもかまわない
腕にできた赤く汚れた傷が眠っていてくれるなら
終わらない夜であってほしいと願う
鎮静の歌が聞こえる
回帰の匂いが立ち込める
....
夏は他の季節よりも、死にちかいと
たれかがおっしゃったのは天の声のようにも想え
または蝉の声のようにも想え
または緑陰をくれる梢の優しさのようにも想え
私は夏を見極 ....
“You don’t understand me anyway”
つまらぬことに
つまずく 娘
“What a Fucking Japanese you are!”
....
庭先に止まったアゲハチョウの羽には
感情の全てが閉じ込められている
そのざらざらとした声色が気持ちよくて
いつまでも肌をなぞっていてほしかった
淡い空にうろこ雲がほわりと浮かび
右目の向 ....
ひとつの卵子に
星屑が飛びちって
僕は生まれた
宇宙の端っこで
ブランコを乗り回し
木星の周りを
飛行船でもうもうと
旅をし
月で出家して
僧になり
蓮の花 ....
まわるまわる
空間に溶けだすように
しなやかな身体を投げだす
無限ステップはミニマムなリズムに隷属し
時間を引き伸ばそうと
あるいは無化しようとする
そのリズムに身体を預けた君は
....
追憶が虹を
否、追憶は虹/そのものだ
/追いかけても辿りつけない
否、それは俺/そのものだ
きのう死んだ俺は
きのう生まれた
正体はどこにある
追憶が虹を
否、追憶は虹/そ ....
鳥は
空を飛べるのに
なぜ鳴いているのか
あんなに苦しそうに
だれかを追いかけていて
だれかに追われていて
鳴いているのか 鳥よ
わたしだって同じ
こんなにも求めている
それ ....
……
ええ、それはもうよく聞かれるのでございますが。
本当のところ、私も理由などあったものかと
思っています。
お偉い先生方は、なにか公式でも探すように、
生き残った者達を類別しようと ....
海に行こうと決めたのは
季節の中に飛び込むためでも
まして楽しく泳ぐためでもなく
日常からあふれた出来事を
ほんの少しこぼすため
からだの中の水分が
外へ出たいと願うのを
悲しみ ....
まどろみは とうとう
流れ 流れ 夢をなう
漂い着いた 海峡の夏に
覚めきれぬ
想いのひらを あゆむ
深遠なうみの果て
空のはしを ちぎった 白いウミネコが、
つばさを止めて ....
渚を歩いていたときのことだ。
波打ち際に、細くなめらかな黒い曲線が描かれていた。
それは波の姿を象って視界の及ばぬ範囲へと延々と続き、
足元に目をやれば無数の点の集まりで、なにかの種を思わせ ....
僕たちは行進する
雨と雨と雨の合間を
かなしみの残る青空に
バシュポン
圧縮した空気は開放され
白い弾丸は
砲の初速を逃れた彼方で
小さな羽を広げる
あの
遥か積乱雲と日輪草の
....
明後日の今頃には
きっとわたし、泣いてる
ハナキンなんて言葉が流行ったっけ
週末の空気はほこりっぽくて
ろ過された部分だけを吸い込もうと
口を無意識にぱくぱくとさせる
大嫌いなもの ....
シグナルを待つ間
雨の音ばかり聞いていた
せつなさが押し寄せて
あわててアクセルを踏めば
頬を伝わる涙に気付く
外はサイレントレイン
あなたの声も聞こえない
まるで逃げるように車を飛 ....
父が亡くなっても泣かなかったくせして
MJの死にはわんわんと泣いた
そんなものだよね
近くて遠い悲しみと
遠くても近くに感じられる悲しみ
人生のアルバムから今まで生きてきた記録が ....
この部屋の光の具合もあるだろうが 其の皮は重く
赤みは幾分黒ずんでいるように見受けられる
産毛のようなものが軸の窪みのあたりに白くうっすらと生えている
以上からしても 其の林檎は若々 ....
迷質な氷はかたまり
時に 織りこみ
いくえもの波形をひしめく
たいらかになって 眺める日
ほのじろく
透きとおるロック・フラワーの反光
水凍された海峡は
北緯48°のあたりまで夏 ....
誰もがやり直せることを
その情熱の持続を
誰もがひとりではないことを
奇跡を引き寄せるからくりを
その情熱の持続を
ぼくは証明したいのかも知れない
雨が降る青い ....
僕は迷わず選んでいこう
来るはずの明日の為に
*
何をしたらよいのだろうと戸惑ったまま流れていく
海に向かって
揺れ落ちて溶け行く陽を
君とふたりで見ていたのは
**
....
午後
カーテンのすきまから
迷いこんできた空想がひらひらと漂う
うまく捕まえることができずに
言葉にならないので
そのままにした
きっと
そのままの方が良いのだと
勝手な理由を知る ....
暑さにうなだれている名も知らない花は
剥がれかけたマニキュアと同じ色をしていた
使われているひとつひとつの配色が
くっきりとしたものばかりなのは何故だろう
まぜこぜしないのがこの季節で
....
おおきいひとと ちいさいひとと
こっちの部屋に集まって
大騒ぎで追いかけっこしている
あっちの部屋の
ちいさくなったおおきいひとが
熱心に見ている
かたつむ ....
海面を泳ぐ光の青を捕まえようとして手を伸ばしてみる
伸ばしても
伸ばしても
届かない両手をばたつかせて
それでも懸命にもがく君の
溺れそうな
沈みそうな平泳ぎが僕は好きなのさ
夏はもう、
すぐ ....
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