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すっかりと丸くなった母の背中を押し込んで
いく、とバネのように弾んで台所へと消えて
しまった。庭の隅で父は、苗木のままの紫陽
花を随分と長い時間見つめている。時計の針
はここ数日で速くなった、 ....
誰も知らない人が隣に住んでいる
もう十日になる、声を聞かないし聞こうとも、しない
私は猫を裏返しにしながら、誰か、がいない遠くのことを思う
もう、春だ
冬はかたちになってしまうから、駄目だ
....
ノックされた窓を開けると
季語が突然入りこんでくる
飾るべき言葉の、持ち合わせがないので
自分勝手に寂しくなってしまう
決められた五線譜に決められた音をのせて
決められた拍手が返ってくる
....