溢れる海の{ルビ思想=おもい}を
透いた生命の鼓動にのせて
ぼくはきみに語りたい
{ルビ灼=あつ}い 熱い視線の息吹に恋い焦がれ
ひとり 沈んでいった人たちのことを
ふるえる ....
刃ものみたいに
とがった穴を
言葉たちがすり抜けるたび
けずれる
文字とも音ともつかない粉が
一杯になって
それはもうやわらか
刃だってだんだん鈍って
いまはやさしい熊ぐらいに ....
こころ
これを現すためだけに
仏像はのみにおのれをきざみこむ
こころ
これに衝かれるためながら
少年は姉からはしりさる
季節の寒暖の表層をおよぐ小魚たちよ
都会の風に恋した枯れ草 ....
時は大洋の彼方に浮かんでいる。
私の土地からは見えないが鼓動は確かに響いてくる。
さてこの時を何に使おう?
まずはひっそりと旅に出ようか。
海の見える街は憧憬の彼方に佇んで ....
私たちは流れゆく時には悲しみを分かち合い押しつけあう笑顔を見せて
見ている見ていられる友だちの姿は今転ぶごめん笑って
射て、的がないのでドーナツの穴を見て
優れた機構を持つ君は心臓の ....
乖離した俺の右半身が壁の亀裂の中で瞬きの真意を窺っている、先週までの熱が嘘のように冷えた部屋の中、とある境界線の上から確かに爪先は僅かに踏み越していた、変えたばかりの蛍光灯の白色がギロチンのよ ....
一生なおらない病気であるならば
それは病気ではなくわたしの一部なのだろう
そう気づく秋の景色のなか
定期的に通う道の
木は色をかえて
それでも同じ木に安心して歩く
秋の夕暮れは氷塊のようで
たった一つの亀裂も
存在することが許されない
完璧に冷たく充足し
いかなる反撃も許さない
そんな氷塊が大地を覆っている
私はゆったりとページをめくる
秋の物 ....
みどりの鳥居をくぐるには
あなたの笑みが必要でした
まもなく消える身であれど
この世は占いじゃないから
意味しかないところだから
焼け石に水であろうと
二階から ....
常識って
当たり前で
つまんない
ぶち壊すために有るって
思ってたけど
違うよねって
感じるようになりました
お肌も曲がり角過ぎたしねぇ
なぁんだ
イケてない奴って
思われ ....
インターネットの中は電子の海
膨大な量の情報が時の流れと共に
増え続け広く深い海になった
インターネットに海を作ったのは人
この世界の海にはなんにもなくて
欲しい物をどこからか捕まえては ....
堕ちてゆく
崖の上から
海の底へと
一直線に
目を開けていられるくらい
速過ぎることなく
頬を逆撫でる風が心地良く
恐怖心もなく
ただ真っ直ぐに堕ちてゆく
理由は分からないけれど
....
深刻ではなく 淋しい瞳をもった
サーカスのピエロ
ぼく きっと 透きとおった
この時代の住民にちがいない
古代マンモスのふかい皺をもった
象たちが踊り 踊らされる
過 ....
西日の射す部屋で
裾に黒い炭を付けたレースカーテン
輝きながら汚されていくことを思う
私は寂しい
ベッドの位置から進むことも退くこともできず
手のひらに収まる程の空気の厚みにす ....
悲しいとかじゃない
惨めとかじゃない
傷つくとかじゃない
水溜まりを見ているだけ
雨に降られているだけ
雑踏で人にぶつかるだけ
タクシーをひろう
行く先を ....
わたしはよく
遺書をしたためる
これから冬がきて
息凍るころ
体もしゃりしゃり
うごかなくなる
お布団に張り付く日々
いただいてばかりでいきていると
屋根つきぬけて
そらにか ....
お月様が燃えている
先端を齧った苺から
液体が滴るように
金魚の尾鰭がゆらりと
鉢の中で弧を描く
血を垂れ流しているかのように
サクランボウに鷹の爪
カーネーションに
情熱 ....
幼い日
ふたりで日向ぼっこをしながら
影をみていた
ぼくの黒い指先が
少女の頬に触れようとする
と 触れるその直前で
影だけがふやっと膨らんで
ぼくより先 少女に ....
今日は稲刈りの朝。
いつもより早く起きた私に
父は焼きたての目玉焼きを差し出した。
「今日もよろしく頼むよ」と
小さな茶碗に白いご飯をよそいながら。
それから約一時間後
トラク ....
ふらり
ふらふらと
目的もなく
街をさまよう
烏に慄き
野良犬に脅され
飼い猫に見下され
それでもあるき続ける
すれ違う人は
挨拶どころか
笑顔もくれない
風が吹 ....
そうしてお腹を空かせては
仏の唇を食み、人の指を食らう
曼珠沙華咲く薄暮の川岸
醜い心をさらしては
とりとめもなく涙し
あてどもなく歩く
雲は燃えつきて微かな煙へ
吹かれゆく先の名残 ....
もしも真夜中がこれ以上長かったら
私は姿を変えて
あの街の塀の陰へ急ぐだろう
深海の鯨の死骸のような、
黒塗りの木のそばで、
優しい月を見つめ、
静かな排気のバイクで、
蛍光する速度制限 ....
私たちは望んだ
林檎の木のやせた小さな実を
うなだれて実をこぼす廃れた窓辺を
細い水のはねる汚れた低い蛇口を
あの庭から私たちは始まった
私たちは紫の実をつける香りのよい果物を欲しがった ....
まっくらにしたよ
虫の声
とぅとぅとぅとぅとぅとぅとぅ
るーるーりーりー
とぅーとぅーららららら
ふぃーーーーーーーーーー
近所のちいさい子のわらいごえ
水溜まりの上を車が走 ....
なにもいいことが浮かばない空に雲ひとつ
今日の初めの一歩は
泥濘んだ土の上
靴が滑るのを必死に留まった
右足が自分の意志に逆らって
少し前に進む感覚は
ほんの少しでありながら
驚異であると同時に
快感さえも感じられる
....
雨のおとが体に刺さって下に抜けて行く
その先のまちで
男が酒を飲んで煙草を吸い
女が風呂に入り石鹸の香りを嗅ぐ
花は季節に散る
どうということもない
あたたかな食卓が
どれだけに ....
花火に
なりたかった
アタシは
果物が大好きで
ゆえにアタシは
果物で出来てると信じてたので
花火になって
夜空で開花すれば
イチゴや
サクランボや
リンゴや
マンゴーを ....
たぶんそこには 無 すらなかった
透明 すらなかった
そのまなざしは父親には赦された
だけど母親は女の子だったから赦せなかった
のだろう(たぶん)自らを
#
無、を得て ほし ....
かん高い声の騒ぐ言葉が部屋中を這いまわっている。声の主は女と女なのだが、女と女は椅子に座っていて向かい合ったちょうど真ん中にテーブルに載った紅茶とポッド、そしてナイフで取り分けたそれぞれのビクトリアサ ....
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