遺書
田中修子

わたしはよく
遺書をしたためる

これから冬がきて
息凍るころ
体もしゃりしゃり
うごかなくなる
お布団に張り付く日々

いただいてばかりでいきていると
屋根つきぬけて
そらにかえりたくなっちゃうの
誰にでも一等の
金色おほしさまになれたらな

そんなときに
遺書をしたためる

ぐしゃぐしゃ書きだしたさいごのさいごに

ありがとう

しかでてこなくなる

滴るところを真っ暗にしてた涙
そのうちに
澄んできて
ひかりだす
涙まみれの遺書がきらきら
ありがとうをしたたらせる

お父さんが買ってくれた花柄ワンピース色、風にふわりと

お母さんと飲んだメロンソーダ色、ベロにしゅわりと

あなたの飼い猫の茶とら色、しっぽゆらりと

くしゃっと投げ捨てたゴミ箱から虹がかかる


自由詩 遺書 Copyright 田中修子 2016-10-04 23:19:47
notebook Home 戻る