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最近どうもこころの具合が悪いので
独協医科大学越谷病院で診てもらったら
末期症状の悪性腫瘍だと診断された
インターン上がりの小生意気なやつから
あなたのこころはあと数日の寿命でしょう
なんて ....
12月25日の灯火を持って
私は再び屋外に出た。
北風、南風、西風、東風。
自由きままに吹く風に身をさらして
この灯火をそれとなくてのひらで守りながら
私は前へ進むのだ。
12月2 ....
街路樹の下を黙りこくって歩く
憂いのある者や、行く当ても無い者達。
もし彼らの言うとおりの 光無き夜が来るならば、
恐る恐るであれ僕らも、その目のなかに
宿すだろう。かつて面影と呼んでいた
....
星の言葉 降る降る
空の端から
投げかけられた 放物線
かすめていったひとかけら
こぼれて描いた その軌跡
ほんの少しを呼吸して
小さな夢を叶えるために
届くといいな 流 ....
桃の花が散って
春らしくなった
今は
桜が満開
これからは
いつだって
桜は散ることがない
何時だって何処だって
何処の国にでも咲いている
今年も
小面をつけて五穀豊饒を祈 ....
ご用納めの日
いつものように
あなたのいる病院に行く。
いつものように
ねじまがったスプーンを
ふたりで使い
あなたの口に
夢を届ける。
あのね
今日、ご用納め
な〜ん ....
年の瀬は嵐のごとく
みるみるスピードをあげて
通り過ぎようとしています
ごう と鳴る風の中
あまり高くない太陽のそばを
うすっぺらい雪待ち雲が
幾度かゆき過ぎて
まるで ....
12月29日
今年最後の出勤の朝
玄関で飼い犬を抱きしめてやると
不思議そうな顔をして
それから頬を舐めてきた
ぬくもりというのは
無条件に愛しいもので
一度味わってしまうと
決し ....
静かに燃えている胸の炎
雪の舞い散る冷えた空気にも
消えないで燃え続けている
このままあなたに会えないで
一人きりせつなさにとらわれて
涙の河で溺れてしまうなら
胸の奥の埋み火消してしまお ....
深い谷に橋を架けよう
向こう側へ行く 旅人のため
大きな川に橋を架けよう
渡し守が 今以上傷付かないように
こちら側と向こう側があって
渡るための橋が架かる
どこにも属さないそこは
....
庭に落ちた夕焼け、それだけじゃ
君を好きになる理由にはならないけれど
よく挨拶を交わす新聞配達夫がいつもよりも少し急いで
豆腐屋のラッパがいつもよりも何だか妙に心地良い
ご無沙汰だった静寂を内 ....
それはかすかに透きとおっているので
向こうの景色がいつも滲んでいるのでした
朝霧を 食み食み
押し殺されたような時間を過ごし
まれに降る雨のために山裾で低い警笛を鳴らしたり
青い ....
揺れるベッドから理性が零れ落ちた
神性を目指した船の軌道が僅かに逸れたが
荒れたシーツの波は誠実な舵を狂わせる
足早に落ちてくる星 激しく吹く風
互いの舌の先から 獰猛な動物が飛び出して
互 ....
場末の小さな店を出ると
もう真夜中のはずなのに
不思議とあたりは白っぽく明るい
街灯もひとつもともっていない
しかし明るいとはいえ太陽がないので
なんだか昼間とはちがった
さびしい明るさだ ....
湯せんにかけて
やはらかくなった冬の月に
銀河のアラザンをちらし
薔薇色の粉砂糖をまぶし
僕がひとかじり
君がひとかじり
微炭酸の夢が
恋人たちの舌の上を
ゆるりゆるりと ....
僕がなかなか寝ないので
ママが「おやすみなさい」の森へ
行きなさいと言った
僕はしかたがないので
安心毛布を引きずって
「おやすみなさい」の森へ向かう
森は暗くて静かだった
誰もいな ....
旧校舎の
三階と四階の間の
踊り場の窓から覗く景色は
いつも違う
ことを知ってるのは
私と少女だけ
少女は
私たちと
制服が違う
遠いところから来たから
ただそれだけで
何か ....
ラウリ・ラパラは
松の木を削ったらしい
そいつから比べれば
なんてことない
作業の筈なんだが
気がつきゃ
にらめっこだ
また
やんわらかい
バル ....
オキアミ臭くなった手じゃぁ
硬くなった握り飯を
頬張る気すら薄れちまう
オキアミ臭くなった手を
イソメの汁のついた手を
ごしごしやったタオル取り出し
額の汗を拭いてみるが
あれよ
....
そういえば
愛していた名前を忘れました
みっともないなぁって
笑ってました
毎日毎日
ターンテーブルに向かって
韻をふむのです
そしたら
右と左が分からなくなりました
....
今夜は酷い夜霧だ
むやみやたらに出歩くと
街の真中で遭難してしまいますよ
旦那
今日の所は
この常夜灯の下で
霧宿りいたしましょうよ
『常夜灯の下で』 ―銀の夜を溶かして ....
飛ぶ鳥の名前などは
どうでもいいことかも知れない
晴天をかもめ、
夕暮れには
からす
一応の名前で
呼んではみるけれど、
きっと何かが間違っている
かれらは一途 ....
戦争のあとにはいつも
殺されなかった死体が転がっている
それが君の言うところの
正しさなのだろう
ぱたりと本を閉じる
車窓の外へと目を移せば
淡い色の田畑が広がっている
「次 ....
あの曲が青色に聴こえた
今まで曖昧なオレンジ色だったのが
急に冷たく
研ぎ澄まされた
音に変わった
彼女は夕暮れ道を歩きながら
緑色の影を引き連れた
散歩代わりにい ....
私が欲していた言葉の先にはあなたがいた
たとえその姿が偽りであっても
私には溺れるより他にない
軋む身体をつなぐあなたの声が
また私を壊そうとする
寂しさと不安の合わせ鏡に写るのは
あなた ....
欲しかったものを手に入れたとたんに
他のものが欲しくなる
判ってはいても止められない
「欲しい」には夢と希望が満ち溢れ
手に入れた後には虚しさが残るだけ
(捕らえた獲物には…なんて言い訳がま ....
私が知らない、あなたの息遣いがある
私が知らない人の前でその息遣いを
あなたは、する
固く組んだ指を解いて
代わりに軽く瞼を閉じて
あなたの裸体を描くことができる
その正確さにやるせな ....
ロマンチックにおなり猫
あまりにも淋しすぎて
おまえに何ができるというの
ロマンチックにおなり猫
夕冷えのする野原の中に
ひとつだけ咲いた白い花
おまえのようだと言いたいけれど
ロマンチ ....
黄色の花は枯草に足元を譲り
冬の陽だまりが
影もつくらず
土に隠した春の気配を
内緒で温めている
霜を忘れた僅かな緑は
十二月の大気に身じろぎもせず
去年のうたや
....
何を探していたのだろう
散り積もった日々の
瓦礫の中より
それはひとときの温もり
顧みることさえ叶わずに
北風にさらわれてしまった
あなたとの思い出
ことばなんてくだらない一葉に
思い ....
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