すべてのおすすめ
二本の指で
煙草の先端を揉み消して
どこか遠い空に
未明から鳴り止まない
海鳴りのような響きに
耳は ひらいて
放 ....
乾いた大地に
夏の厳しい日差し
しおれてしまった花に
水をひとしずく下さい
*
空っぽになった部屋で
なくした希望を探す
仕方がないと言いながら
耳障りなため息を吐く
* ....
時がすぎる
ひらり 舞い踊るように
いくつもの掌から巧みにのがれて
はやすぎる
スピードで通りすぎていく
再び口を開いて何事かを囁く
すぎさったはずの君の傷
ゆっくりと
おそす ....
積み木、
ほとんど役にたたなかった王国、
風のつよい日に、旗がゆれている、
夏のおわりのひ、
中央広場の噴水で自害したもの、
おおよそ、比喩的に、
再生したもの、
水耕栽培の ....
{引用=それを、聞きのがして、
提燈アンコウのように、ひかり、
ただ、
春を、まっている、
鋏をいれて、ほつれをひろげる、
物語がはさまれる、
この浴槽で、犯行におよんだのだ、
強い、断 ....
雨が降った。わたしは雨の足に圧迫された。爪先から踵まで力に満ちた足は、わたしの体に、触れず、目の前を塞いでいく。雨水の、どの部分も干からびていて溢れてくる。一粒でも零れると、それは止まらなくなり、旱魃 ....
朝でも 昼でも 夜でもない
永遠に続く 冬の黄ばんだ夕暮れ
狂おしい町の風景
射光の跡を追う
強いコントラストに
明らかな形の針葉樹
見覚えのない風 ....
だれかぼくに
長い手紙をくれまいか
すっぽり暗いすり鉢の空の底
吹雪のあけた だだっぴろい広場に
まんべんなく雪は敷き詰められて
だれかが夕暮れの紅いろうそくを吹き消す
すると
取り ....
ずっと受け取っていない郵便物がある。私はその中に何が記されているかしっている。
―タイミング
雲と雲とが重なる。煙と煙が混ざってゆく。
存在を認識していた人とやっと出会える瞬間があった。 ....
骨の
喉に
落魄する
水滴の味を
舌は、しらない
喘いで、ひねり
捩れて は
求めて ....
腕を見付けた石膏像たちが安堵して眠る夜に、うさぎのようなあなたはうさぎのよ
うにフェンスの向こうを見ている。時差の向こうでは冷たい水を飲む長髭の数学者、
僕たちは精密に一四四〇分を刻み終えようとす ....
永遠とはひとつの歴史のイロニーであったのだろうか/永遠に回帰する子宮のなかで
いとけない卵たちと精子たちは無限にちかい増殖を繰り返している/この柔らかな ....
土のにおいの月がいくつか
夜から朝へと転がってゆく
鏡を造る鏡
暗い水と溝の道
星と星のあいだのむらさき
へだたりと境の腕
羽と羽のあいだに起ち
剣のように
....
家の中で一番大きな窓に身体が映る
わたしの本当に美しい姿は
ピアニストになり損ねた青年の指にゆっくりと裂かれるとき
離れていく右半身と左半身が完全に分離する寸前に
皮膚が結露に触れて濡 ....
{引用=ひとりでは淋しすぎていられない
震えて眠る私はうさぎ}
抱いて欲しいって言えたらいいのに
もわもわの毛皮をまとっていても
寒くて寒くて震えてる
{引用=耳を立て周りの音を ....
六月にみた
砂浜にまして白く
海に洗われるたびに
やわらかだった
きみの肌が
よろこびに
ふるえていた
明けがたに敷かれた
シーツの上で
きみの土地
はためいては
朝露にぬれ ....
re
雪原の果てに、捩れた樹木が十字架の形をなして、風雪の中に佇んでいる。
純白の地平に、いかなる嘆きの声も、ここに反響することはない。
遠く、一切から、遠く離れて。誰しも一人となってここ ....
ベッドが
解体されて、きみの死を
模倣する
抉りぬかれた
目、きみが見ている、わたしで
あり、言葉で
あり、盲た
光であり、
切り離されたもの、半分に
されたもの、
....
ねむりの海岸にうちあげられて
ぴくりともうごかない魚のようなおとこ
その手の甲が
ずいぶんとひびわれているのがわたしにはさみしい
おとこのかたちに馴染んだシーツを
鉛筆で ....
重い荷物を背負って
物憂い坂を上る
一番好きな歌を
でたらめに歌いながら
*
押入れの中には
持て余した夢の残骸
潔く捨ててしまえ
できそこないのガラクタなんか
*
....
木に実っていた最後の世界が
その重さに耐え切れず
落ちる
あっ、という誰かの叫びは
空気を震わせることなく
そのまま大気中へと浸透していく
店頭に並んでいた時計の化石を
少年 ....
さざなみと待ち合わせの時間だった
薄くなってゆく空とおおいかぶさる雲
淡い紫色とオレンジ色
飛行機の窓から見える雨の気配
寄り添えない事情がある
耳あてに、やわらかい言葉がくっついている ....
新しい名前を探す
けつえきいろのてのひらは
ひらひらと音を立てて
コンクリートの上をのた打ち回る
{引用=(あの子が死んでわたし、
新しい名前がつくの)}
あの子の
体の
一部 ....
永遠が何だって言うんだろう
そんなことを考える暇があるなら
今すぐこの喉の渇きを癒して欲しい
君の首筋に咬みつきたい
それが僕のすべてさ
暗闇の中で求め続けるもの
それはこの喉を潤 ....
年二回の定期刊行物である其れが
冷たい丸い石に寝ている猫のようにひっそりと届いていた
其れは小さな宇宙
僕の掌の中で命が明滅する
ゆぐどらしぐ
ヴぇずるふぇるにるに逢ったのもこ ....
降り積もる雪の重みに
夜が
耐えきれず落ちていく
そうして彼女らは埋もれていくのだ
ひるがえった真夏の
影を踏んだあなたと
鳴くこともなく
死んでいった虫たち
....
マヨルカ島にふきよせる地中海の青い風をすくいとる
ピアニストの手のひらは白い
葉叢を束ねる小鳥のさえずりに頬ずりをして
月光にきらめく細い爪をみつめていた
風の家にあ ....
あなたはわたしに「ななし」と名付けた
それ以来わたしは薄い皮膜を漂っている小さな虫。
光らない星、開かない窓、結ばれない紐、濡れない傘、
ない。ない。ない。ということでしか ....
1
窓
表面積に
くちづけ
2
空が
墜落する
ポケットへと
3
ひたひたと
歩く
電信柱を
4
痛み
翼を ....
わたしのなかを
あなたのなかを
風がいちど
吹きぬける
あつくもなく
さむくもない
温度とは
呼べそうもない風
放浪、漂流、点在、葬 ....
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