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気持ちをなだめてくれる
けやきの葉たちの向こう側
濃い青の空に 夏雲が湧き上がって
激しい季節の予感
夏雲たちは 次々に力を秘めた体を起こし
見渡す限り 雲の輪に囲まれる
....
世界が滅びて
ただ一輪そこにある花を
太陽が照らして
空虚な僕は問いかける
すべてが消えて自分だけが残り愛もない世界で
どうして君は咲いているのかと
花は答えた
あ ....
流れるように月日は過ぎて
あんなに恋焦がれていたあの娘のことなんかも
色褪せて
季節風に乗って運ばれる俺達
君の暖かい声
君の輝く瞳
君の柔らかな頬
すべて時の船にゆらゆ ....
心が切り裂かれ涙は星になって
君は呟いたね
何を愛していたのだろうと
星になった君の涙を
僕が一粒指で弾いて
未来に零れる流れ星に変えた
満天の星空は君の美しい涙
とめどなく ....
架空の鋲 雨に打たれる
錆びついた工場の手すりや階段
タンクローリに描かれた落書き
めくれ上がったその名残
あるいはまた
背中を丸め 雨に濡れるままに
オンボロの自転車に乗って
工場 ....
地下道で出会ったあの子は
身体の周りに薄赤い魚を
泳がせていた
着ていたのは薄い綿のシャツで
ローリングストーンズの唇 臆面もなく舌を
突き出していた
タンゴのリズムで十まで数 ....
アラハバキ
傷のあつまり
攻め滅ぼされても
なおよみがえる
ただひとつの欠片から
なお猛々しくよみがえる
アテルイ
胸に突き立つ矢と刃
ひとつの穴のような赤い花
背の ....
首を傾けたまま
縫い針を
炎で焼いて
縫いました
ひと針
ふた針
み針目で
あなたは目を覚まし
俺の目を縫いとめるのは誰だ
と申します
私は器用に玉結びをした後 ....
ハチドリたちの季節、タービンは回る、小さな声で歌うように
頭上の日輪のように、熱死しながら、糸を紡ぐ、それは機械
赤い石楠花は大輪のままに、「儚げな」見せかけで、花弁を散らし
ただ地面に積も ....
六月の薄い胸に
雲の痣が白く浮かび上がる
体育座りの女の子の膝のような
山々は
深緑にけぶる
出発するはずの電車は
死んでしまったかのように動かない
信号機はうなだれ
....
蝉の声降り注ぐ非常階段で
噛み千切るみたいにして
きっと
これでもう最後だから
甘い汗の匂いも
舌に残る塩辛い苦さも
肺から洩れる吐息も
腰を掴む指の強さも
腿の内側を撫でる風 ....
「もしもしかいちゃんいますか?」
かいちゃんは今日も
おもちゃの受話器を耳に押し当て
どこかへ電話をする
「もしもし もしもし」
まだ言葉にならない言葉で
一生懸命お話をす ....
ー盲目ー
まだ陽の上らぬ未明の朝
風紋が鮮やかに浮き出る灰色の砂丘を
暁の月へとむかう 黒烏
凄絶な月の海に至る道は
煌々と白い光に照らされて
泥だらけの足で踏みこんで ....
シャープペンが紙を滑る音で
断ち切られる記憶が鼓動になる
遠い日、焦がれた痛みを愛しく思い
あなたの体は柔らかいという方法
私の融点を
花の名前を当てるように
ほほえみ ....
海のない海辺。
砂から突き出た、跳箱のような駱駝の死骸の瘤。
得体の知れぬ不可視光線によって蝕まれる膚。
虚空に漂い、あらゆる輪郭を溶かしだす陽炎。
方角のない土地。
風に舐められた砂が舞い ....
赤坂
佇む
電波塔
赤い
夜にライトアップで
ドレスメイク
浜離宮
綺麗
綺麗
見とれて惚ける
赤い巨塔
登って
見たんだ
夕焼け
港区を紅く覆う夕焼け
喰われていた
....
沙漠から取り寄せた砂を
僕たちは浴槽に撒く
言葉に塗布された意味を
一つずつ丁寧に
酷くゆっくりと落としながら
シャボン玉を
空間を埋めるために飛ばす
乾いた砂に埋もれた言葉を
....
かろやかに
自転車を漕いでいた風は
あの日、突然
吹くことを断ち切られ
いまは
病院のベッドで
蛹となって
眠っている
息することさえできなくて
ときおり
顔を歪め、真っ赤 ....
美しい夕方だ
そう彼は言った
わたしは気付かない振りをする
コーヒーが熱を奪われていく
あなたは答えない
清潔なベットの上で
わたしは服を脱がされる ....
一匹の{ルビ蜻蛉=とんぼ}が
脚の間をすり抜けて
小さくさざ波立つ水田
暮れ翳り始めた空に
フラミンゴの色の雲
エミール=ガレの作品集を
撫でる指で繰っていた
男のこと
苗のき ....
バスが燃え
市場が燃え
レストランが
兵士を焼く
まだ若いパトロールを
私たちは奪われた者
正義と
正義が反目する
その西の国はチェスの国
ここでない
遠いオフィス ....
私のこころは、
かなしいステンドグラスです。
光を見つめると、
存在が焼き尽くされてしまう。
それで暗く、
てらてらした青や赤をとおして、
光のかたちを舐めるのです。
それなのに ....
秋のりんご園では
赤に染まったりんごが
元気にりんりん実っていて
枝は垂れ下がり
重たい実
それに丁度よい枝
葉は光をつかもうと手を伸ばした
あのままの形
その向こうに広がる
....
遠くにそびえる
黒い山々
深い緑の杉林に入る
つんとする匂い
冷気が身体を包む
見上げても空は少なく
灰色で
まるで薄荷の中にいるように
涼しい
林の中では遠くまでは見えないのに ....
誰も
踏んづけなかった猫が
月明かりを探している
綺麗な光の下じゃないと踊る気がしないんだってさ
踏んづけられた猫は
歌にされて
とても怒っている
だから街灯の明かりが漏れ入ってくる ....
一匹の{ルビ蝿=ハエ}は
羽を{ルビ毟=むし}られたまま
今日も曇天の街を漂う
迷い込んだ森の{ルビ裡=うち}で
湿った草の茂みに囲まれ
一輪の薔薇が咲い ....
息が白めば
祖母の指が夕日色の果実を突く
真ん丸い夕日はたちまち裸にされて
柑橘の香りを撒き散らす
白い皿もあるだろうに
漆の椀もあるだろうに
祖母は果実を皮にのせ ....
?
祭りが始まった
それは緑の旗をかかげ
歌うのは風ばかり
踊るのは風ばかり
萌え出た命の露を
しとどに湿らせ祭りは始まる
?
若葉揺れて 君の髪のように
や ....
思い出し笑いしてる花びらの話
目があって目が散って
隠そうとしたら吹き出した
晴れた空の草むらで
花びらはまだ続いてる
散らばった四本の足に巻き付いた
始まりと終わりはいつも仲良し ....
プレハブの
休憩室の入り口に
日中の仕事で汚れた作業着が
洗ってハンガーにかけてある
ドアの上から照らす電球の
茶色いひかりにそめられて
干されたまま
夜風にゆられる作 ....
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