すべてのおすすめ
ほんとうの事が知りたいけど
正しいかどうかはどうでもいい
つまり、とりあえずは磁北を信じて
夜どおし動かない星を探し出す
北極星、と呼ぶのは僕たちだけで
イトスギ達にはきっと別の呼び名がある ....
黒目勝ちな瞳で
何を 見る
天然の朱に彩られた唇で
何を 語る
平らな胸に秘めた
紡ぎ事を
誰が知るだろう
揺れる花に
想いを寄せた日
誰かの幸福を祈る
....
犬が走り回っている
犬と犬が
たったかたったかと
飼い主の目を盗んで
逢引きに出かけたのかもしれない
たったかたったかと
路面を爪でかく
犬特有の足音
保健所に ....
二人で大好きな
カニの話をした
その人はカニを食べるのが好きで
ぼくは見るのが好きだった
その間
大切なものに形はない
なんて嘘をつく必要はなかった
明日お嫁に行 ....
月が銀青色に染まる時
ユニコーンが目を覚ます
冷たく輝く月の光に
象牙色の角が光り
キーンコーン
青白い星は夜を彩る
のっそり起き上がったユニコーンは
青い瞳を輝かせ
暗い森の中を ....
燃える水滴たちは
河の中で流れながら
ここにいるよと
会いたい者へ 点滅
からだで示している
ティンパニーの連打に
はねうつ 飛びうつ ....
罫線のパントマイムを観測する
午後三時十一分
抽斗の中に漂う真珠色の憂愁に呼応して
ぶれてゆく窓枠
書棚のざわめきが
微笑んでいるソファの方へ吹き寄せられる
白いカップのアールグレイを ....
少女
少女は
綿工場の傍に立って
雀の巣を抱いていた
遠い日の写真のように
いまも僕には思えるのだ
綿工場が疾うに死んでいるのも
僕は気がつかなかった ....
長く 細い
透き通った階段を
降りていった
さっきまで
長く 長く 昇ってきたのに
....
あきらめは
落葉に{ルビ埋=うず}まる倒木だ
{ルビ水面=すいめん}に浮かぶ枯れ葉の息だ
全てに対し
後ろめたいことの無い
青い空をあおぐ
倒木も枯れ葉も
{ルビ生命 ....
メロウ おまえ ちい先生を見たか
庭の大きな老木に しあわせにしがみついて
羽化をする せむしの 背から
ギラギラとした 出てくるんだ
真っ昼間から 羽化だぜ
メロウ おい メロウ おまえ
....
寝過ごした朝。
きまって天気は快晴である。
乗り過ごした電車。
溜息だけが運ばれてゆく。
今日という日は、いつも訪れるのが遅すぎる。
空の上に 空が あるなら そこは きっと あなたの 空でしょう
ランドサットの 青い圏
ぴえろ・ぎゃろっぷ の空
きょう 望む 晴れた 空は 青が 深い と
かなしい です ひたすらに ....
2人暮らし
アパルトマンの7階
食事は窓際
窓外の路地裏では
猫が啼いている
出所の分からないものを
口にしている 私たちは
隔離された この部屋で
少しずつ 壊れて逝く
....
液化燃料が
静かに燃えて
街に灰が積もり
鋼鉄の箱を疾走させ
アスファルトは
平行に立ち上がる 蛇
どこまでも続き
ゴムのわだちが軋む
騒音の車道を折れると
路地が佇み
生 ....
不安定な水面のように
流れていくテールランプの赤を
ゆらゆらと滲ませる
十一月の濡れたアスファルト
落ちた花びらが流され
下水道に呑みこまれていく
この都市の中には
すでにどこに ....
モノクロ写真の空中ブランコは怖い
目を閉じると
笑いながら落ちていく女性の姿
彼の手を取らなかったのは、わざとでしょう
うれしそうに
でも少し泣きながら落ちていく
きっと
これも演出なの ....
太陽の皮をむこうとして
両手がどろどろになった
汁が飛び散って 星と命 すべて熔け落ちた
甘酸っぱい香り 広がっていく
種は どこに蒔けばいいのだろう
見渡してみたけど
....
君と私が会うと
言葉を 眼差しを交わすと
りんどう色の深淵が しずかに生まれてゆく
言葉を 眼差しを交わすほどに
それはしずかに 深まってゆく
二人して覗き込む
そのなかば透きとおった ....
桜吹雪の中
傘をさす贅沢な午後
蝶の心で 空を舞う夢を見たの
あの真昼の月を掴むのなんて
容易い事だと告げている
誰にも見ないけど きっと
疼く左手の薬指を隠して
貴方に ....
空の
一日が崩れてゆくあたり
もういいやとばかり
投げ出されてしまった光の欠片
渚のように引いてゆく
煙のように戸惑っている
燃えつきる
その一瞬をつかもうとして競った
ぼくらは
....
ベンチで たばこを喫いながら
並木が風をうけて 帆のように
喜ぶさまを見ていた いまならば
わたしも けむりになって
消えてしまってもいいと 感じていた
ターテンは
両足が不自由で
下半身と両腕に
ギプスのような器械を
つけていた
本名の達野公彦と呼ぶ者は
誰もいなかった
みんな彼をターテンと呼んだ
....
わたしは、あなたが思うよりも深く、沈んで、いる。
それは深海のようであり、深遠のようでもある。
あなたはあなたが嫌いで、いつも誰かを、装って、いる。
あな ....
産まれたのは透明な冬
冥王星のなまえをもらった
彼女は海に飛び込む
後姿は蝶の背骨
白い指で息を止めても
朝はきっと来ない
細い髪がやわらかくゆれる
スローモー ....
仮想世界の猫は
煙草をくわえて
色づきの悪い空
ばかり見ている
裸の水色人形は
壁に視線を向け
半永久的幸福を
指に感じている
依存的治癒音楽
による不治の病
鳥の音が橙色 ....
カップの中の恐怖が
蒸発しきってしまうまで
西日の当たる窓辺に置いて
忘れた頃に覗いて見ることにする
ガラス越しのプリズムが
灰色の壁にいびつな虹を映す
シーツとタオルケットの隙間から
....
パンプキンパイにかぼちゃの提灯
{ルビ魔女=ウィッチ}が月を横切って
仮装行列の子供たちは
「Trick or Treat !」
ポッケをお菓子でいっぱいに
今夜は楽しいHalloween
....
夜明けとともに
失ってしまう事におびえて
冬の星座がのぼる前にと
眠りにつくふたりには
体温だけが必要で
かたむいていく、その先に
今日の終わりは信じないのです
夜がきます
恐ろし ....
鮮やかに 雲が
青空から 吊り下げられて
細いナイロン糸が
結び目を のばして
雲は動く
己の腕の寂しさが続くかぎり
雲は行く
己の知らないくにざかい
雲の影が落ちる
....
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