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雲のさけめへ
わたしの鳥が飛ぶ

バス停のベンチで
その人は彫像のようだ

まちつづける不安が
長い水路をながれてゆく

ふいに顔をあげて
蘇生する花


生きるために生まれ ....
 雨の日にはかなしみに服を着せ、傘を持たせて出歩かせる。普段は裸のかなしみは、はじめ服を着るのを嫌がるけれど、すぐに慣れてはしゃぎだすのが、いつものこと、ぴったりした服 .... わたしのなかの夏、が
嘘をついている

生まれたばかりのやさしさと
おぼえて間もない過ちに
うっすら、として
汗をかき


絶え間ほどよく
やわらかく
涙の意味が熟するよ ....
下を向いて歩いていたら
五月がおちていた

かたちというほどのかたちもなく
いろというほどのいろもない
けれどなんとなくそれが
五月だということは感じられた

そのままにしておくのもあ ....
 
夏至、直射する日光の中
未熟な暴力によって踏み潰された草花と
心音だけのその小さな弔い
駐屯していた一個連隊は
原種農場を右に見て南へ進み始める
わたしは網膜に委任状を殴り書きする
 ....
好きとか嫌いとか
そのような感情と同じ速度で
五月の空はわたしのこころを蝕んでゆく

そして陽射しに揺れる葉桜が
散り行く先など知る縁も無いように
他者への憎しみを
こころの襞奥に抱え込 ....
背の高い花がとおく
グレーの空
ぱしゃん ぱしゃん

あめ

やらかいカーテンに小学生のころを思い出した

プールから出たあとみたいな       かぜ かぜ かぜ
体が乾いて落ち着 ....
清しく、邪な風に
華奢な下肢をさっと隠した
裾広がりの白地に
ピンクの薔薇の咲くスカート

立襟のブラウスに
光る栗色の髪を
ながく垂らし
ただ、甘く春に散る
花の匂いを漂わせて
 ....
森の夢―古いボート          前田ふむふむ

     1

青い幻視の揺らめきが、森を覆い、
緩んだ熱を、舐めるように歩み、きつい冷気を増してゆく。
うすく流れるみずをわたる動物 ....
今にもねようとふとんにもぐり
君の肩に鼻を押し付けていると

とおくのとおくで猫が
ぎにゃあ、ぎにゃあ、と生きているのがきこえ

君もわたしもまだ死んでいないみたいに
はじまるの ....
山岸さんは、
もう いない。
おさるさんに似た顔で
さようなら
もいえず
むねにちいさく根づいたきずが
うずくのである
おさるさんに似た顔で
いま
さようならをいおう
山岸 ....
電車の窓を震えるように水の玉が流れていく
ピアノは旋律を増して世界を高ぶらせ
その中で私は窓を這う水玉を見つめている

世界は私に嘘をついている
本当は私は深い溝で取り囲まれ
溝の中に ....
カメラのレンズの向こう側 

(フラッシュの光る瞬間) 

やがてすべての人々は 
家族も友も恋人も-------- 
昔のままに時間を止めた 
一枚の写真に納まり 
見知らぬ未来の誰 ....
 教会の壁は白いものだ
 僕はそう思う
 緑色の夏の池の前に立って
 池の向こうの森に
 屋根と十字だけが見える
 教会に行こうとしないままに

  *

よく晴れた休日には
出歩 ....
ものの名を知ることは
世界ととけあうことだ
曇天の下
すべては自らを中心に
分断されている
その心がかなしく
またこわいのだ
誰も知らない場所で
花が落ちるように
周囲から急速に暮れ ....
ほの甘い色の胞子が降りしきる午後
小さな昏い紫の遊星の影が
君の瞼をよぎってゆくのを見る

チェス盤のうえ
気まぐれに並べられた駒たちのあいだを
七角形の記憶がすり抜けるように踊っている
 ....
 
敷石に降り注ぐ、柔らか
少し離れてある、生に弄ばれた
幼いミズカマキリの死
旧道を走る
路線バス、あれには乗れない
ただの声だから
管理人の男はフェンスをくぐる
その先で交差点は息 ....
  (カワセミ!カワセミ!)

木々の重なりの一番深く
真っ暗な沢の灌木で小さな光を見つける
ポストの底に忘れ去られた手紙のように
思い出せないのに忘れられない
ちいさな鳥の形を
手 ....
雨に濡れた
青桐の
新芽のみどり
雨粒一つ一つの
音の輪郭
季節外れの
冷たい風と雨粒を掌に
雨音は
変奏し続けるだろう
古い端切れの
ほつれた
一本一本の糸の
誰かの記憶のよ ....
今朝はコーヒーをいれて絵を描いていた。
開けたままの窓からはしっとりと雨の匂いがして、「梅雨か」と独り言が漏れてしまう。
東京にはもう季節がやってきたようである。
大きな荷物を両手に持って、疲れ ....
 
鼓動のように雨戸は共鳴し
残余するものはもう何も無い
火傷の痕は指に育まれ
心の貧しいものだけが
人になることができる
その線をこえてはいけない
黄土色の骨に包まれた肉体
もはやそ ....
灰は盲いて仄になり
灰より熱い火のなかにいる
背から腕へ溶ける羽
夜の漕ぎ手の手首に宿る


星の奥から風が来る
目のかたちの痛みに降る
十月十日後のめまいのために
 ....
  沈黙について書きたいと小説家は思う
  即物的な生々しさでショットグラスが輝く夜
  彼はそっとキーボードを叩く



  一年前恋人に見放され
  その二ヵ月後に右足を ....
風に乗せて飛ばす花びら
薄紫色の想いを込めて
勿忘草の空へ問いかけるの
憶えているかしら 花の色
風も季節もあの頃のまま
ただあなたの心だけ変わったの
ねえ時を止めて
おとぎ話をこわさな ....
すすまない
空の向こうに
つながない
星の瞬きがおりました
わたしは、
柔らかい草に寝ころんで
それを眺めつつ

星色の鈴の首輪を着けないで
どこかへ去った猫については
悔やむこと ....
 
夜中に目が覚めて階下に行った
妻が台所でひとり
豆乳を飲んでいるのが見えた

湿った蛍光灯の下、色白の肌が
必要以上に青白く
そして細く感じられた

声をかけずに再び寝室に戻った ....
海岸線のガードレールでもなく
尾根を越えていく高圧線でもない
届こうとするものは
いつも不完全で ただ
どこか、まで続いていく

アルシオネの円周でも
火星が結ぶ軌道でもない
繰り返す ....
見えない風に震えていた
あの時
柔らかな時間に浸蝕された白い花弁のささくれ
鬱金香
が 首をかしげ始める
思い出すたびに
遠くなる指先の感触
言葉の誘惑に負けて
どんなに美しい言葉をか ....
黒く流れる髪
しだれて
横からでは
目と鼻しか
見えない
睫毛と瞳
鋭い鼻の線
瞳は陽光を浴び
飴色に透ける

あかるさが
保証された昼
光を溜め込む
白い肌が眩しい
風は ....
こわかった
けれど
こわいということが
どういうことなのかは
わからなかった
それは真昼
明るい
空がこわかった
真夏の
暑さがこわかった
こいびとは
わたしの手をとって
海へ ....
石瀬琳々さんの自由詩おすすめリスト(3661)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
そして- Etuj ...自由詩108-5-20
「_雨の日にはかなしみに服を着せ、_」- PULL.自由詩4*08-5-20
五月の薫り- 千波 一 ...自由詩9*08-5-20
「ひろった五月」- ベンジャ ...自由詩11*08-5-20
鼓動する信号- たもつ自由詩6*08-5-19
五月のひと- 恋月 ぴ ...自由詩34*08-5-19
あのころ- ki自由詩208-5-18
マリー- atsuchan69自由詩15*08-5-18
森の夢ー古いボート___- 前田ふむ ...自由詩24*08-5-18
明け方のアイスクリーム- ________自由詩3*08-5-14
山岸さん- こしごえ自由詩6*08-5-14
溝を見ている- 小禽自由詩308-5-14
献花_- 服部 剛自由詩408-5-12
夏の池- 水町綜助自由詩808-5-12
落花- 岡部淳太 ...自由詩1108-5-11
春の桟橋- 塔野夏子自由詩7*08-5-11
管理人- たもつ自由詩808-5-11
夜想曲(_reverse_)- たりぽん ...自由詩10*08-5-11
雨音- フクスケ自由詩208-5-10
梅雨の男- 小禽自由詩208-5-10
雨戸- たもつ自由詩508-5-9
すぎるうた- 木立 悟自由詩208-5-9
「・・・」を書く- 草野春心自由詩2*08-5-8
リラの夢- 未有花自由詩9*08-5-8
星座をつなぐもの- しろう自由詩4*08-5-6
豆乳- たもつ自由詩308-5-6
ツォルキン・ステップ- たりぽん ...自由詩20+*08-5-6
鬱金香(ウッコンコウ)- フクスケ自由詩108-5-5
裂いた咲いた- 木屋 亞 ...自由詩2*08-5-5
海へいこうよ- 君の、自由詩408-5-5

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