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ジョージ、君がいなくなって、今年でもう三度目の夏が訪れようとしています。
ピンタゾウザメがいなくなったことで起きる弊害は今のところ
私の生活に訪れてはいません
アインシュタインや夏 ....
わたしのしらないところで
花は咲き
花は枯れ
窓の外を見る
自転車が通り過ぎ
その瞬間
焼き付けられた横顔を背景に
絵はがきが届く
宛名はわたしのしらない名前
....
長い休暇から
雨降りが逃げ出した
もうずっと帰ってこない
雨降りの日
彼女は滞りなく職務をこなした。書類は1ミリのずれもなく積み上げられ、文字たちはとても居心地良さそうに見えた。雨が降る日 ....
湖の畔
2mはある黒い犬が
腹を空かしている
目は赤く血走り
猛禽類のようにつり上がり
はぁはぁと息を吐き
30cmはある舌を垂らし
白く磨かれた牙を覗かせている
犬はその場でただ ....
{ルビ処女=おとめ}はその森に入ってはならない
森に入ればきっと出会ってしまうだろう
そして血よりも紅いその薔薇を手折ってはいけない
薔薇を手折ればきっと恋に落ちてしまうだろう
それは ....
空が澄み渡っている
田園の上を海猫が行く
水に反射する陽射しの破片
風のそよぎ
紫色の旗が棚引いている
少年が根元の竿を掴んで運ぶ
「重いでしょう?」
「平気さ」
旗には
“我々 ....
汗に濡れたシャツをはだぬぎ
わたしは暗闇のなかを
帰るふりをして 逃げたのだ
七月の 台風の 雨のなかを
精一杯生きようとして 逃げたのだ
咎められることは何もない
そのほかのことは知らな ....
いま目の前を上り列車がひとつ通過いたしまして、さてさてお集まりの皆々様よ、おんなののろいをみたいとお集まりで、おんなのなみだをみたいとお集まりで、ついでに死ぬおんなや殺すおんな、蛇やら龍やら見せましょ ....
最後の列車が出て行くと
ホームの照明は全て落ちる
やがて通りの建造物は
砂のように崩れ落ち
後には
魚の骨が突き立っている
古びた予言で言われたとおり
忘れ去られる花言葉
無表情な三日 ....
にれは祠に奉られていた
遠い昔の話だけれど
少なくとも言い伝えられるだけの
価値があったのだとはるは言った
ことばの少ない子どもだった
幼い頃から空を見上げてばかりで
地上 ....
春になると
淋しい木々の先に
白木蓮の{ルビ灯=あかり}が点る
ほんのりと明るい白い花は
どんよりした心を照らしてくれるようで
ほっと心が温かくなる
こんなふうに心が晴れない日は特 ....
ことばのすみかに
ぼく といった
こうして 坂の上で出くわした
風景のように ぼくはいった
古ぼけた7階建てのマンション
のエレベータ
屋上にはあがれないから
階段で ....
五月の風の透明さ
雨上がりの石畳のにおい
雪の朝の静寂
足元をさらう波の清廉さ
出発前夜の胸のざわめき
日曜午後のあきらめにも似た安らかさ
わからなすぎる夜の身もだえ
泳いだ後の満たされ ....
青い空がおいでって私を呼んでる
ずっと夢見ていた旅立ちの日
春の風が何度も私をせかして
早く早くって言うけれど
飛び立つにはけっこう勇気がいるのよ
心臓がドキドキして今にもはじけそう ....
みずのね
さらさらとね
ながされる
ひとのシやセイが
たいがになって
いつかのよるの
うみみたいなばしょへ
みずのね
ちゃぷんとね
りゅっくのなかの
つつのなか
ゆれるた ....
雨が降り出した
街が洗われる
忘れた方がいいことが
無数にあった
手を挙げてタクシーを停める
肉球は見えないように
行先を訊かれて
nearと答える
「外国の人?」
車内では
天気 ....
世界が
果てしないほど分厚い 一冊の書物に感じ
決して読み尽くすことのできないと
絶望する
重苦しさと 心地よさを
同時に感じて
「美しいものが正義だ」と言って
読むべき箇所と ....
一つの夜の中に生まれる物語を
取り留めもなく繋げて
理由を探して
残された光の残滓に縋りつく
寄りかかる椅子の心地よさ
ルーツを辿る 視線の先の
ガラスに埋もれた憧憬
「あの ....
手に望むものは
何もない
白と黒に塗り分けられた
高圧電線のバー
遥かに
僕は立ち
浮き沈みしながら
フィールドを
走り出した
空間がバーを軸にして
徐々に狭まり
....
挫いたかもしれない足を雪につけて
痛みをとりだそうとする
できるような気がする
染み出した汗が白い雪を痛みの色に染めて
(それはきっと緑だ
濃い緑
深く昏い海の底
....
私が誰かなんて
問いたださないで欲しい
私は私
あなたはあなた
たくさんの未知数の中の一人
名前なんか
大して重要じゃないのよ
ミステリアスな方が
時には素敵に映るもんだわ ....
鳶色の花が部屋に
投げ込まれた朝
夜から立ちこめていた
幾層もの霧が晴れ
テーブルに置かれた
皿やコップの上に
日の光が溢れて流れた
音楽はコップに溢れる水の音か
それとも ....
ふるい駄菓子屋さんで買ってきた縄跳びは、のばした水飴みたいに、すぐにくずれていたからね、
私、縄が切れるのを待っていたんです
こつこつ続けるしかなかった、なんて、ずるいこと、いっぱ ....
かれは
祝福とおめでとうの違いが三文字分でも分からなくて
葉の色が変わる季節
落ち葉を靴の下に踏む
森林のなかの一樹になりたかったですか?
山のなかに立っていたかったですか?
名 ....
淡い光の中のライト・ブルー
誰もいない湖はピーコック・ブルー
風にそよぐ花サルビア・ブルー
静かに揺れたミント・ブルー
あの広い空はスカイ・ブルー
雲の流れるままにセルリアン・ブルー
....
そこにある色に違いないものを
僕は 水の色を じっと見る そして
僕の自分の目に映した その色を
不可解な色ではないと知っている
魚釣りをしていた
僕は いつかの親子の堤防を思い出す
....
タクシーがなければ 馬に乗って帰るといい 真夜中のどこかに 青白い馬が潜んでいる 二人乗りだから 相棒を見つけて 飛び乗るんだよ 鬣をつかんで しっかりと 離さないで
高速道路など 使うまでも ....
遠鳴き
ヒーーイィヨーーォ
森で喉を見せている鹿
口笛は慎もう
喜びは透明のまま
ぼくは大切に飼っていたのである
泥川からザリガニを取ってきて 喰わせた
嘴の一突きで赤い頭を割り ピーコは喰った
切り株のうえに
おとうさんは羽を押 ....
大切な約束をしたことを
いいかげんなわたしは
いつのまにか
忘れてしまった
むきだしのアセチレンランプの猥雑さざめく夜市
腹を見せて死んだ金魚は
臭う間も与えられずに すばやく棄てられる
....
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