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私はあなたの足から離れてしまいました
橋から見下ろす川の水が
私を誘っているようでした
一瞬だけ
ほんの一瞬だけ
あなたのことを忘れてしまって
そのまま川に吸い込まれてしまいました
水の ....
あなたから逃れるように
発車間際の列車に飛び乗れば
涙が後から飛び散って行く
誰かここから連れ出して
あなたのいないところへ
愛を確かめるたび悲しくなるの
あなたのやさしさ愛さえも
....
1
うすい意識のなかで、
記憶の繊毛を流れる、
赤く染まる湾曲した河が、
身篭った豊満な魚の群を頬張り、
大らかな流れは、血栓をおこす。
かたわらの言葉を持たない喪服の街は、 ....
あの人も去ってこの人も去って
行く道の知れぬこの先を
一人歩いてゆかねばならぬというのなら
悲しみにも嫉妬にも涙することはないのだろうか
ただ孤独ゆえの涙は透明で美しいといっても
そ ....
男はその歌を四十年間聴き続けた
なのにまともに歌えない
外国語の入っている歌だったからだ
けどサビならまともに歌える
今となってはそのサビの部分は彼の人生の教訓そのものになってしま ....
きみをひらくと
なかから ちいさなきみが
ぽろぽろと はだかのままで
たくさんの 砂金のようにこぼれて
たくさんのきみは 少しはずかしそうに
ひざをかかえてる
....
{ルビ微睡=まどろ}んで、乗り過ごすうちに
春まで来てしまった
0番線から広がる風景は
いつかの記憶と曖昧につながっていて
舞いあがる風のぬくもりが
薄紅の小路や
石造りの橋や
覗き ....
君が
ぽつん。
と残した香りが
僕の表面を覆う理性を
突き抜けて
真ん中から少し左を
ソーダ水のやうに
刺激してくる。
今になって
ああ、あ ....
翼を有する生きものに
あこがれていた
のぞみの場所までは
もちろんのこと
そこから
遥かな地平のすみまで
こころはきっと
羽ばたける
翼を有する生きかたに
あこがれて ....
今、踏んだ、枯れ枝
その中に眠っていた想い
遠ざかってゆく
永遠に
今、放った、貝殻
僕の手のひらの温度を引いて
遠ざかってゆく
永遠に
雲は遠くの水平線に砕け
....
乾いた枝を踏んで
分け入ってゆく
ひとり
黒い森へ
木漏れ日と見まごうほど
雨のよに降り注ぐ見知らぬ星座
足元の影
黒々と
獣の踏みならしたあとを
なぞってゆく
....
ねえ手を繋ぎませんこと
恥ずかしいのは私も同じ
否、と御即答されるのは
判っているけれど
はあっと息を吹き掛け
一瞬の合間に空気が
冷やされ地面に落ちて行く
まるで貴方 ....
空飛ぶ風船
しぼんで落ちた
胸がチクリと痛んだ
上がって
上がって
最後は
なにもなかったように
空飛ぶ風船
しぼんで落ちた
今日は
どの ....
風が落ちた音がしたので
私の目は窓をみました
窓には装飾が施されていて
モザイク調の風が白く見えました
白く見えた風は
ただの空のかたまりでした
かたまりはしばらく白色になると ....
エアー、夏のように
薄い服を着たあなたが
少し口を開けて
世界とつながっている
あなたの唇も手も皺に慣れましたね
前より縮んで
それでもまだ懐かしい
エアー、吸えるものは
たくさん ....
「おらあ悪党だすけ、地獄の閻魔様にも嫌われてなかなかお迎えが来ねぇ」
と元気に遊びに来ては、父によくこぼしていた祖父だったが
晩年はながいこと寝たきりだった
曲がったまま固まっていた脚のせいで棺 ....
―RIOJAにて
見渡す限りの葡萄畑を歩いてゆく
そこ此処に きれいな花をつけた木が点在している
アルメンドラ!とおまえが叫んで 駆け寄って
木 ....
あなたの声が聴きたい
かつて私を魅了した神秘的なあの{ルビ詩=うた}を
あなたの声を聴かせて
そしてまた私を夢の世界へ{ルビ誘=いざな}って
あなたの声は
私の梢を揺らす一陣の風
あな ....
君という雨に打たれて
私のあらゆる界面で
透明な細胞たちが
つぎつぎと覚醒してゆく
夏の朝
影に縁取られた街路
やわらかな緑の丘
乾いたプラットフォーム
きらめきに溢れた ....
規格品だ
たいせつなのは
精度を上げること
僕らは
マネキンの体温
段ボールの棺桶
まばたきを奪われ
生まれても
生まれていなくても
そのまま
立ち尽くすこと
美しいひとよ
....
あおいカーテンの
こちらがわで
くらげとくらしています
くらげはいつも
ふらふらゆらいでいるだけです
わたしがねてても
おきてても
ゆめをみてても
みていなくても
この街はす ....
一夜限りの戯れでも
君の手が{ルビ私=わたくし}の乳房に触れた時
蜻蛉、来たりて
今、この恋は{ルビ私=わたくし}の精神から羽ばたいて
現実のものとなりませう
くれないの紅を塗り終えて
....
木漏れ日 胞子
美しい 人
孔雀 ローレル
とまどう 水鳥
暖 かいね
おひさま 涙
この木 何の木
気になる ならない
いいから ほらね
触って ....
それは、冬の公園で
午後の風はきみのもの
ちぎれてひとつ、またひとつ
木々を背にしたベンチから
息を吹きかける
胸がふくらみはじめた
一輪車で少女がすぎる
空をうつした水たまり
....
噛んだ乳房の
そのむこうにあったのは
金色の花でありました
時も音もない闇を愛して
腸を潰す手は僕のもの
そこに見えた
金色の花でありました
瞼を開こうと閉じようと
僕 ....
羽根のはえた指で
不透明のやわらかい
やわらかい虚無を撫でながら
ゴウゴウと吹きあげる
おおきな風を
待ってる
やあ、とか
ほう、とかって
羽根のはえた指で
お前 ....
人がいなくなって
街はしばらくざわめいてあきらめて
そうして日が暮れた
ある冬の日
おれはおまえを探している
茶色い瞳は星と月だけを頼りに
上を向いた鼻はおまえの匂いをた ....
鳥は
自由に羽ばたく姿こそ美しい
私如きが
その軽やかな{ルビ踝=くるぶし}に絡みついて
ともに堕ちてはならない
いつか
大きな空になりたい
そんな、さよなら
相反する不確かな ....
言葉にすることさえ許されないゆるさない
親鳥が産み落とした卵が割れた日に
悲しみはこの世に生まれ出た
にこやかな若者は足近づけて
なぜそんなに悲しむんだよ
なにがそんなに悲しいんだいって問い ....
少しせつない音楽にのせて
ラジオから聞こえる "放送を終了します"
深夜1時に眠りにつく
わたしは起きてる この週末を終わらせたくはないから
ほどなくし ....
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