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君の不慣れな指が
ここは
触れてもいい場所だろうかと
ぎこちなく髪を撫でるたび
私の躰をなぞるたび
電流のように
私に幸せを運び込んでくれる
哀れ
彼女の吐いた息の白さに何人の男が感嘆の息をついただろうか
少女から女に変わるその間に
いくつもの帯をまとって帯の隙間からこちらを眺めていた
彼女
波を超え、山を掘り、花を ....
生きるものにとって
その生の躍動が大きく羽ばたく頃
森の中にそっと足を踏み入れる
静かな朝
光が遮られた場所には
シダの葉が青々と続き
時よりの木漏れ日は
地面の土を黒々と照らす
....
真夜中にそうめんを茹でます
今日の君は優しかった
明日の君はわからない
焼酎を飲みながら 君のことを考えていたら
お腹がすいてきたので
真夜中だけどそうめんを茹でます
こんな夏の夜に
他 ....
長い陽も沈むよう
医院の外灯が付いて
傘の影が三つにひらく
バス停にひとり
何も捉えぬ目で
車道の先に見た夢も
呆気なく流れて
ちっぽけで哀れな足を
ざぶざぶと濡らす
雨粒は ....
まどろんだまま
深く吸った息で
体中に雨が透る
窓辺においた手紙が
濡れているのは雨のせい
滲んだ青いインクの
消えかけた名前を呼んで
雨の一粒一粒が
体の中で弾ける
ソ ....
荒れ地に自由が生まれた
わずかな緑が生まれ
小さいながらも花も咲く
荒れ地はどんどん広がった
同時に大きな草花や大木も
かわいらしく鳴く小鳥たちも
やってきた
いつしか荒れ地 ....
笑う満月の下で
ぼくらの明日は
三日月のように
尖足している
医者は
なにごとも
なかったかのように
また、今日も
尖った足を
創出する
まばたきするように暮れていった群青に
あなたはなにを覚えたのだろうか
と
スーパーの広告の裏にかいた
一編の詩は
おもったより、しあわせそうで
静かに瞼をとじました
詩人 ....
あなたの夢は遠くとも
歩み歩めば辿りつく
前へ前へと進みゆき
自ずと見える日々の道
あなたの夢は高くとも
続き続けば届きつく
上へ上へと積み重ね
自ずと気づく日々の徳
あなたの ....
一人の夜に赤々と土気色を二時の方向に指す赤月
温水プールが街に広がる午後八時の暗闇の渦に吐き気がする
空気 まどろむ 夜だ
安心した素麺のつるっとした喉越しと
果てしな ....
浅い午睡に
思いがけず野蛮な夢をみる
それを誰かのせいにしてみたところで仕方ない
けれど
ああ
夏が甘く爛れる匂いがする
それは私の倦怠と
なまぬるく混ざりあってゆく
何もかも ....
暑い日だ
こんな日は
私にパラソルの女が
寄つて来る
女が来ると
私もパラソルの陰につつまれる
―日盛りに
ぼんやり立つてゐると
日射病になるわよ―
....
お盆になると
実家には
離れて暮らしている兄弟たちが
一斉に集まり
昔を懐かしむ蚊取り線香の匂いが
きしむ床や汚れた壁から
おもむろに流れている
帰郷する度に
夕飯に並べられる
....
{ルビ御月様=おんつきさま}が
どれほど 偉大か、
気が付いたのは
絶望の重みに
耐えられなく
なった 夜道
十字路にある
自動販売機の
灯 だけが
ユメを見せてくれた
夜
そ ....
ひっそりと息を潜める雨の夜の街はどこか昔々の村の葬儀の参列に似ている
雨が耳には聞こえない音を打つ
電線からしたり落つ 涙のような雨は
一定の旋律を保ちながら静かに地上に降る
雨に濡れ ....
記憶は左から右へ過ぎ去り
流れる雨に歪んだ街並みは
僕の黒い顔を窓に映している
暗い路地にぼやけた蛍光灯は
6等星にすらなれなかった
歩道を照らす銀色の光達
僕達は何処へ行くんだろ ....
人間は汚れている。身も心も。
人の世のニュースを写すテレビ画面の中で。
私の姿を映す鏡の中で。
全ての日常は、色褪せていた。
*
一人旅の道を歩いていた。
信濃追分の風 ....
引っ越したアパートは
薬屋の二階だった
辺りには小さな商店しかなかったが
近くに大きな川が流れていて
君の心を支えながら
よく土手を歩いた
神社には大きな桜の樹があって
薄紅の季節を ....
引き金は鼓動と鼓動のはざまで引かれる
愛される直前に
ためらわず
冷静に
光と影を縫う弾道が
私の頭部を撃ちぬく
しとやかに
海が仄かな火を抱いて流れる。
流れは、わたしの新しく柔らかな意匠を溶かして、
かわいた青い夏をひろげる。
みずを失くした海が流す、青い夏は、
白昼の街に横たわり、死者を語り、
練られた風 ....
水鏡の裏側からわたしは見ている
黄色い土壁と
くすんだ緑の屋根を
潅木の足元に散り落つ白薔薇を
誰かの足音は
水面に波紋を広げるのだが
雨のひと粒ほどに
まるく響きはしな ....
ネコが網戸に張り付いている
白いネコだから
ネコが網戸と化している
曇り空だから
ネコは宇宙からやって来た
よろめくような遠方の
夜空しかない白昼の星を発ち
土管経由で
「 ....
もしも詩が書けなくなったら
家族にも友人にも行き先を告げずに
ひとりで旅にでも出よう
もしも詩が書けなくなったら
滴り落ちるような真っ青な空を眺めて
言葉に置き換えずにそれを受け容れてみ ....
私はあなたから生まれたというのに
もうそんなことを忘れてしまって
自分だけの死を抱きしめていた
まるで沈むために港を離れた
あのポンコツな捕鯨船
たった一つの獲物を射るための{ルビ銛=もり} ....
「おばあちゃん元気にしていた?」
わたしの大好きなおばあちゃん
共稼ぎの両親はいつも家にいなくて
学校から走って家に帰ると
おばあちゃんが出迎えてくれて
手作りのおやつがとても美味しかった
....
螺旋階段ヲ登リ続ケテヰタイ
イツマデモ
イツマデモ
空ニ届ク事ガ無イト
気ガ付カズニ
湧き水の底から
三日月が現れて
私に問うた
空の寿命はいかほど?
さあ
太陽にも相談しませんと
何とも言えません
太陽は山の端に隠れる最中で
やさしく
月と太陽がかき ....
競うように加速してゆく
コットンキャンディーの群れ
夜の芝のうえを 不穏に
湖につづく川面をすべって
あなたの髪のさきに ぼんやりと灯る光を貫いて走る
モンスターのうしろ姿
扁平の ....
6歳の頃
初めてりんご飴を買ってもらった
食べるまで
りんご飴は
ケン玉の赤玉でできている と思ってたので
甘くて柔らかいから吃驚した
7歳の頃
初めて金魚すくいに成功した
ふ ....
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