すべてのおすすめ
汗をかかない速度であるいている
交通標識には
知らない地名が並ぶ
一方通行なのは車両だけだということだけ
当然知っているとばかりに
迷うためにあるいている
個人商店が
灯りを落としは ....
旅先で出逢ったひとと
うまい酒を飲んだ日は
深夜にひとり戻ったホテル部屋で
まっ赤な顔のまま
はだかになりたい
ベッドの上で
パンツいっちょう
はだけた浴衣
へべれ ....
わたしたち
流れて
真夜中の水になる
あなたの喉をやさしく潤して
そっと
夢の中にしのび込む
水は落ちてゆく
あなたの肩から腕をなぞり
そして
温かな水の中へと
導かれて
....
平凡なお別れをした僕らは
やがていずれきっともうすぐ
偶然も必然も届かぬ場所で
二度とその声を聴くことも無くなるのだろう
覆い被さる波のような日々の中で
わずかにこの手に掬い上げられ ....
黄昏をそっと飲み込む部屋で
夕闇の迫ってくるのを
静かに 待つ
大いなる大地の
昼と夜を
この地球が音もなく航行するのを
額のにじむ汗に微風を感じながら
夕闇の光で織る
繭玉を ....
会えるかな
会えないだろうな
琥珀色のトンネルの向こう
果物ナイフで切り裂いた光の
向こうの・・・向こうの、そのまた向こう
動かない青空の果てに
....
道端に乗り捨てられたセダンの
埃の積もったボンネットに
おまえを押し倒して
やりたい
ここで
すぐそばを特急列車が走っていく
サンダーバード
轟音を上げて
飛ぶように
い ....
梅雨が明けたそうで
なにより
と
街を歩く
と
至る所で
白い携帯電話を手にした人を見た
どれもこれも白一色で
夏空の雲みたいだ
白でなければ
つながらない話があるようで
....
寒風が追いやって
落下する陽は
屋上から見える
十字架の影に
もえている もえているのだ
あの方角に
確かにいた
小さくて熱っぽい
手が
いま またしても
握 ....
白くしずかな八月の
午さがりのあかるい部屋である
私はただソファに横たわっている
そして部屋の中空を
一個の檸檬が歩きまわっている
まるで散歩でもしているようだ
いつのまに出現したものやら ....
真新しいブラウスの
短い袖がまぶしいね
軽やかにステップ踏んで
夏の扉に飛び込もう
光の娘たちが踊る夏の道で
いつも空を見上げていたね
湧き立つ雲の{ルビ眩=まばゆ}さに心魅かれて
....
蝶のかたちの光の前に
家より大きな花があり
ひとりの影を映していた
小鳥は話しかけた
誰にも届かなかった
道につもりつづけた
同じ姿と響きを持ち
確かに共に居たも ....
/水膜現象
ざざあ、と音を立てて降る雨の中を走っていた。暗い。フロントガラスにぶつかり続ける雨は視界を著しく遮り、ライトの届くその先を見通すことはできない。ワイパーがぞんざいに動き、僅かな間だ ....
弟が、
はじめて天体望遠鏡を買った夜のことは、
今も忘れない。
失われた母星を見ようと、
みんなでベランダに集まって、
家族で覗き合った。
結局、
あたし ....
そこは陥没した土地の底だった
ふしぎにあおぞらに囲まれ
馴れ馴れとSiraketa鳥のとぶ低地
新しいだけがとりえのその土地に
湧き出る雲は白くて尽きないのでおそろしい
すうすうすうすうゆく ....
猛禽がゆく
絞めつけるように羽ばたいて
海を捨て
空を切り分けた
陸に住めなかった
みずからのつばさこそが病
うしなった爪で
満ちるうつろを掴み
嗚、と
ひとこえを残して
猛禽 ....
死んだ人々の霊が
自然の事物に宿るように
僕に忘れられたものたちは
自然の事物となるのかもしれない
僕が忘れてしまった
初めてプールに入ったときの記憶は
山道の苔となって
ひっそりと生き ....
ずっと向こうの
そのまた ずっと向こうの
背中の海で
泳ぐひとがいる
しずかな潮がつぶやいている
わたしたち
泡ぶくだったのね
小さな水とたわむれて
いつか
生まれた ....
でんしゃだった
ぼう、ぼう、と
隊列つくって
歩く目があわれと
気づいてしまった、
僕は
時よ止まれ、と
つぶやいて映すガラスのうすぐらい
鏡像が
伸ばした手/
/こちら ....
数多のあなたから
発信されることばに
わたしは固くまぶたを閉じる
それらを愛さないために
西側の、部屋
窓に切り取られた風景のなかで
遠く稜線がたそがれてゆく
そう
書いたときには ....
この草のにおいを意識し始めたのは、
いつからだろうか。
翳る当為が、こおりのように漂い、
透きとおる幻視画のような混濁のなかで、
きみどりいろに塗された、切りたつ海岸線が浮ぶ。
冬の呼吸 ....
私の心の悲しみは
あなたがいないと鳴く小鳥
私の心の悲しみは
いつまでたっても止まぬ雨
私の心の悲しみは
ひとり寂しく見る夕日
私の心の悲しみは
寄せては返す波の音
私の心の悲 ....
雨 止んで 病んで
明かりのないへや うずくまって
ちっちゃな ちっちゃな
おもちゃのぴあの きみはかかえて
雨 止んで 病んで
煤にくるまった息 成増四丁目の音色
きばんだ白 ....
源流に程遠くなく
清らかな姿を
留めながら
静かに流れゆく
孤独な細い川
貞節な乙女を
思い起こさせる
喧騒に揉まれる前の
ひとつの
純真
フルートの音色が
時折舞い ....
君を連れていこう
この 干上げられてゆく都会の
最後の楽園へ
マンションに包囲されながら
奇跡のように生き残った
ちいさな田園のそばへ
君を連れていこう
この 干上げられてゆく都会の ....
小さな渦にあめんぼが脚を取られていた
男は意味も無く泣いていた
空は薄く曇り
まるで世界中が白い
銀色に染まった朝の事である
コトコトと煮えるシチューの湯気に記憶が奪われていった
....
昼過ぎに起きると、
もう太陽は強く、
高く昇っているのだ。
だから、
洗濯をする。
あいつのものは分けてある。
黒いものは黒いもの。
白いもの白いもの。
....
ココハドコダ
雨が降っている
気持ちいいぞ
もっと降ればいいと
空を見上げて
太陽はあまりにまぶしくて
手をかざすと色が失せ
黒い輪郭に透けた悲しみが揺れる
だから ....
+落葉の日には
赤い色、青い色
残りの空を数えている
穏やかな日々、頬は
青く紅葉として
時間は等しく流れていく
境目に乗って遊ぶ
あなたの身体に耳を置く
....
日常の破片が 通り過ぎる車を眺めている
日常の破片が 四角い空を見上げている
日常の破片が アスファルトの憂鬱を凝視している
日常の破片が 街路樹の根元で焦点を見失っている
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122