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雪が降る
その国に
女が積もる
女
という字の形をして
組み合わさって
結晶を構築して
やがて
細い
細い
洞穴となる
思春期のこと
その奥の奥
たどり着いた先に
赤ん坊が ....
遠い昔だった様な気がしているし、たった今過ぎ去ってしまった過去でもある様に、静かに流れて、少しの間立ち尽くす。
冷たい陽光を睫毛が遮って、風景の彩度を狂わせた。聞いた事のある声はしない、足元から背後 ....
あなたの
佇む公園で私が踏みにじったのは
黄色い無垢の花
音をたてて
壊れてしまう夕日に
眩むよう
なにもなかったみたく笑って
もたれかかる
....
線路を{ルビ跨=また}ぐ歩道橋を渡って
小さな小学校脇の道を歩く
冷たい風に{ルビ靡=なび}く木々の葉は
ほんの数日前とはまた更に
色も重さも変えたようだ
見上げれば焦げ茶色の葉の
....
はねた、石は、
水のなかを、水を
大きく、全身でえぐり、ゆれて、水は
痛みで満ちた、が、血は、
流れずに、水のなかを、水の
深いところ、へ、
着席する、石は、
水、ではなか ....
深夜の路上に
空き缶がひとつ
ぽつりと立てて置いてあった
こおん
とけっとばしてみると
そこいらじゅうから
わああああ
と逃げてゆく子供らの声がして
にわかに恐ろしくなったものの
わ ....
ある夜だった
マリーゴールドが揺れている
電車の中で窓ガラスに映るライトが煌々と
収縮をはじめてしまっている
不気味なほどに煌々と
シガレットの香りといっしょに
紳士の姿は泣いている
....
刺さった葉をやわらかく落下させて
空気を入れ換える季節よ
あれは子供たちが最初に見つけた
地球の旋律なのだ
よーいどん
で駈けだした足が ....
寒風に手指をかばう
待つとも待たないともいえぬ朝まだき
冷え切った空気が
空高くから透明に降りて
ちいさな公園の
遊具に残る最後のぬくもりを絶やす
ほぅ、と湿った息を吐く
....
三時過ぎに受付で待っている
あのソファーの柔らかさ
嫌になるぐらい沈ませる
甘い事象は溶けていく
日々は虚ろに
鳴っては止んでいく
表と裏の違いにさえ気付かずに
僕の踵 ....
どんな人間でも、
最後に行き着く場所は海なのだ
先生はそう仰った
私は 先生の指の先の
青だけ、見て
海を滲ませた
....
海がそっとまぶたをとじる
青い響きの中
かもめは
追撃機のようにまっすぐ堕ちた
手のひらにすくう砂
ランプの芯のようにあたたかい
ぼくは見上げ
あたたかいのは君の手だと知る
浮 ....
暗闇に指と指を絡ませて
ほろ酔い肌のぬくもりに酔いしれる
熱いときめきが過ぎて行く
あなたは真夜中に背を向けて
私を抱いている時も夢の中でも
他の{ルビ女性=ひと}を抱いている
ひとた ....
はじまろうとする
あらゆる終りに贈る
季節たちの語りは終わった
わたしたちは手をはなし
時間のものがたりではなく
空間のものがたりをつくる
これからわたしはここ以外をめざし
ここ以外の土 ....
光る校舎で
囁いたわたしたちは
数年経てば紺色だった影の記憶すら
なくなってしまうのを知っているから
こんなにも微笑んでしまう ....
季節だけにではなく別れを告げるということ
窓のない部屋では聞こえないということ
言葉で削った窓のむこうは万華鏡じゃないということ
中途半端な闇の中
(匂いのしない風がテレ ....
君が爪弾いたギターから
粗野な音がばらまかれて
僕の部屋の天井に沁みを作る
それらは光をうけて
くすくすと輝きながら
一つずつゆっくりと
確かに覚醒してゆく
指先で繋げて ....
ばっさばっさ。
ひかりがまだとおい、
ななめまえの目標は まだななめまえのまま
光源らしからぬ ぼんやり加減で眼前、から はなれない
羽、では力がはいらない。
翼と言い切る強 ....
新しい朝
新しい風だ
朝、
部屋を出て
飛び込んでくる
空の青
凛としていて
高く、高く
季節は秋だ
靴を履いて
エレベータの前で
きみを待つ
きみを自 ....
飯田橋の歩道橋を歩いていた。
風が乾いている。透き通るように冷たかった。
車の音や、人の声が雑多な音となって歩道橋を揺らした。
青い空が遠くまで続いていた。
冬は晴れているのか、と思う ....
アトリエが笑っている
色彩は幾重にも脱皮してゆく
輪郭は幾たびも辷り去ってゆく
窓を開ける
と
浮遊している
さまざまな色や形の椅子たちが
月に照らされ
遠く近く
....
青でつながってる
どこにいるかも解らぬあなたへ
ひさしぶり だね
わたしもしばらくここへ来ていなかったし
あなたももしかしてきっと ここへはもう来ていないのかな
だからいえる
「ひさし ....
空の青い昼間
緑が泳ぐ風のなか
メキシコの風の神様が見ていた
あなたの喉は
無防備に剥き出しだった
咬みついてもいいかと問うて
答える間も置かず
甘噛みした
あなたは声を上げなかった
....
誰かと約束をしていた気がする
明け方に目が覚めた
理由はわからない
悪夢を見たわけでも
喉が渇いたわけでも
催したわけでもない
ただ唐突に
目が覚めただけなのだ
手をめいっぱい ....
ドロにまみれたい夜がある
トカゲの尻尾のように断続的でない
何か
ああ もう
一日中だって眺めていてえよ
かわいて固まっちまった顔料みたいなあいつら
初めは 水のようだったのになあ
ごまかし にせがおづくりに躍起になって
おれはかな ....
夕暮れが泣いているのだろう
高台から見渡す街の灯が
救いが無いほど光って見える
大勢のひとりが積み重なって作られた明かりだ
しばらく茫然とそれを眺めた後で
僕はただ静かに下りていく
....
ブルーを飼いならすこと。
ブルーに打ちのめされること。
打ちのめされたブルーを飼いならすこと。
その繰り返しの中で、
鳴るはずのない電話が鳴り、
鳴って欲しくない電話が鳴る。
執拗 ....
午前四時の透明な気圏に
黒雲が闇を重ねようとしている
抗うように惑星が輝いたのは
いつも忘れてしまった季節
霧雨が街を満たそうとする
{引用=
爪を立てる前のつややかな果実だ
....
もしもここに
うつくしい空き箱があったなら
お風呂のように入って
外を眺めよう
風の吹く
外はやさしいように見える
口笛も吹こう
あの懐かしい歌
箱の片隅には
ヒイラギが落ちてい ....
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