すべてのおすすめ
君はもう見たのかい?
翼をもった
銀色の馬が
空を翔けてゆくのを
冬はこうして
やってくるのを
君はもう聴いたのかい?
いななくたびに
冷たい風が
地上に吹くことを
冬はこうし ....
排気ガス、
吐いて過ぎ去る車の後を、
いい匂いとパクパクさせて
近代化の波が{ルビ集落=むら}にも来たよと、
みんなそろって追いかけた。
そんな子供らの姿を
川面に浮かぶ鮒の死に思い出す。 ....
どこか遠くの
名もない寒村の廃屋で
最後の詩人が
おしまいの言葉を
震える手で書き記そうとしている
彼の思考の荒野を
舐めるように滑っては消えてゆく
文字列
この世界の
あら ....
ガラスに溺れている
他愛のない光の粒
漫画のような宇宙と
十月に揺れる何かを
五線譜のお皿に
のせたまま
すべての嘘が
優しくほほえんで
窓辺に腰をおろして
待っている
海 ....
壊れた自転車が
冷たい雨に打たれて
泣いている
さっきから
何を君は耳打ちして
探しているのだろう
切れたブレーキワイヤーが
大地に触手を伸ばす
生き物みたい
五分後には ....
空の青さがはじけて
海の蒼さと重なる日
光のシャワー浴びながら
あなたに会いに行ったの
こんなに素敵な朝だから
何もかもうまく行くと思ってた
なのに誰?私を罠にはめたのは
きらきらと輝く ....
昼の街
人ごみの中を素裸で歩く人
どうしてあの人は(自分は)服を着ていないんだろう
どうして自分は(あの人は)服を着ているんだろう
....
あなた、セロリの透明なきりくちに
恋をしたことはあって?
栗いろの瞳
かきあげる仕草
車椅子の少女は
細すぎる膝を斜めにそろえて
やさしい朝のふりつもる ....
心が抜けてしぼんでしまった
わたしの身体に
あなたの息を吹き込んで
ちょっとあたたかな
ちょっと煙草臭いあなたの息を
自分までもが赦せなくなった
あの日から
わたしはわたしじゃ無くなって ....
その歌のはじまりとおわりを
わたしは知らない
空を見上げたとき
耳元で起きた風が
どこから来て どこへ行くのか
わからないまま
歩き出してしまったように
そ ....
心が枯れてしまったと
思ったとしても
君にはまだ
心の種が残っているじゃないか
君にだって
人と会話する気持ちがあるだろう
そう、それが心の種
そこからまた
新しい芽が生まれるのさ ....
外の風に吹かれて
眠る夜はいいものですね
遠く夜汽車の音を
聞きながら
私は線路に耳を当て
旅立っていく汽車の音が
消えるまで
いつまでも聞いている
そんな姿を
まどろみの中 ....
お月さん
震えていなさる
今宵の風はあんまりじゃ
空が空っぽになってござる
塵ひとつ とんと見当たらぬ
裸で ぽつんと
一人でいなさる
地上に降りて来れたら ....
モンゴルの草原へ
私は行ったことがない
そこにはきっと
私の母に似た
まるくあどけない顔の
少女がいるだろう
草は風に溺れ
風は蒼天を巡る
ゲルの暮らしの中で
羊料理を囲 ....
ピエロは
いつも装っていた
彼のまわりには
いつも明るい{ルビ日向=ひなた}があるように
ピエロは
どうでもよかった
彼のことを
まわりの人々がどう言おう ....
おまえの醜さが好きだ。
嫉妬に狂ってわめき散らす、
おまえの顔が好きだ。
ものを投げる時に、
わざと割れないものを投げる。
おまえの計算高さが好きだ。
....
中国人の女の子が
俺をじっと見ている
秋晴の真っ青な空の下
バスは
俺たちを乗せて
ゆっくり坂道を登ってゆく
母親が
女の子の目線をおって
俺と
目を合わせ 微笑む
....
―刺青
そこには船があって
ずっとずっと遠くで
何かを引きずりながら
航海を 続けている
そこには涙があって
ずっとずっと近くで ....
今夜はひとり、僕の手を取る君は
楽しそうに自販機のコーヒーを買う
立体駐車場の屋上に君は車をおいたという
スロープを二人、手を繋ぎながら
(君の子供は眠っている頃)
誰にも照らし出さ ....
星をみるんだ
この街の真ん中で
分厚い手紙を齧りながら
発泡酒で侘しく
それも公園、
結構サムイもんだ
どこかの朝焼けまで
ずっと続いてる電柱に
ひっかかった安穏
夜の天井は低い ....
地平線さえ見えないほどに
一面に広がる小麦畑の
只中に突き立った一本の潅木の下には人が揺れているのだそうだ
金色の穂が乱反射する
歪な真夏の陽光の中で
限りなく乾きながらしかし決して ....
丘の上には
{ルビ幼子=おさなご}を抱くマリア像
周囲で秋風に揺られ
{ルビ頭=こうべ}を{ルビ垂=た}れるススキ達
丘の上から
見渡せば 一面の海
きらきらと日の光が踊る ....
フワ フワ シャボン玉
真っ赤な風船
くるくる回るメリーゴーランド
夢は淡いトーンの中
空想の少女が
夢・夢・夢と歌っているの
冷蔵庫を開けて卵を取り出す。
卵は冷えていて、
すこし硬い。
手の上で卵を転がす。
卵はなめらかで、
とてもすべすべしている。
頬に当てると、
ひんや ....
訪れる人の無い部屋の片隅
透明なガラス鉢の中の
私は金魚
一日一度 あなたの声を待っている
「おはよう」
そうしてドアを出て行く音がすると
私の長い一日が始まる ....
わたしの中を
夜の明ける方へと飛ぶ
一羽の鳥がいる
同じころ
一羽の鳥の中を
どこまでも墜落する
わたしがいるのだ
その日最初の列車が
古い踏切を通過していく
建物の窓はひとつ
ま ....
清水の、冷やめきに足をつけ
苔生しの岩に座り、じっと目をすえ
水の空を見つめている。
私の意志は、音となり
風の通りを走り抜け、広がった。
音の波は、あの岩山で回析して、
森の谷間の小 ....
恋人が去ったあとのベッドからはいつも決まって炭酸水の匂いがする
苛立ちが砂に変わるほどの長い時間の果てに届いた一通の絵葉書には
硬質で乾燥した陽光の真下で笑う彼女の影だけが黒く縁取られていた
何 ....
買った記憶もないのに
本棚に入っている本というものがある
まるで私の目を盗んで狡猾に忍び込んできた
小動物か何かのようだ
そしてそれは
小動物となることで
本としての役割を ....
薄暗い中で
何かをじっと眺めているその目が
あたしで埋まってしまうなんて
そんなことはないとわかっている
夜が明けてしまったな、と
なんでもないふうに言ってしまうから
あたしはその ....
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