すべてのおすすめ
帰省の列車の中で
こんな夢を見た
『蜻蛉の夢』
満月の夜
月下美人のつぼみの下で
細身の女性が横たわっている
彼女の肌は
食べ物が喉を通ったら
透けてしまうくら ....
雨の日に嫁入りした
嫁ぐことの条件は
髪を切ることだった
『暁の魔王の花嫁』
髪は
『神』に繋がるから
あの人は其れを嫌った
逆に
嫁いでからは
....
我が家には
幼馴染の家蜘蛛がいる
子供の頃から一緒なので
年齢は私よりも年上なのだろうが
1.5cmの小さな蜘蛛だ
気が向けば晩酌くらいはする
私と蜘蛛はそんな仲だ
『夜雪酒』
....
{ルビ梔子=くちなし}の満開の下へは
決して近寄ってはいけない
『クチナシの木の満開の下』
子が出来ぬ
という理由で離縁された女は
梔子の花しか食べられなくなった ....
貴方ともう一度だけ
最後に
ワルツを
『最後にワルツを』
教師生活で
一番長く努めた
其の学校の廃校が決まったのは
年の瀬を過ぎてすぐだった
....
其の純白が
花嫁衣装の様だった
『純白般若』
祖母は
小さい頃に
骨を食べたという
焼け野原になった当時
ろくな薬も無いなか
人間の骨は万病の薬だ
という噂が ....
むかしむかし
{引用=(少し長く眠りたいんだ)}
めでたしめでたしにはなりません
『姫君と王子』
その日の姫君は
黒いシックな
ショートドレスに
本 ....
今夜は酷い夜霧だ
むやみやたらに出歩くと
街の真中で遭難してしまいますよ
旦那
今日の所は
この常夜灯の下で
霧宿りいたしましょうよ
『常夜灯の下で』 ―銀の夜を溶かして ....
我が家にはじいやがいる
じいやの名前は長谷川という
『長谷川のこと』
長谷川は今年で82になる
大正の殆ど終わりに産まれて
人生の殆どは昭和に飲み込まれ
青春の殆どを戦争に ....
献血に行ったら
貴方の血は夕焼けなので
輸血用には使えません
と
断られたことがある
16歳の頃の話だ
『血液奇談』
今は何の因果か
私は血液職員として献血車に乗り ....
{引用=リトル・ミスに出会った}
*********************************************************************
{引用=彼 ....
それでも
女の人が
涙ごとに流す{ルビ睫毛=まつげ}は
蝶々になるのですよ
『睫毛蝶々』
祖母の形見の化粧箱は
真っ赤な朱友禅に金糸の菊
中には小さい鏡もはめ ....
目の中に星屑がはいりました
ゴロゴロしてとても痛いのですが
暗闇の中でも
世界は輝いて見える様になりました
口の中に空が落ちてきました
舌の上で確かめた其の味覚が
あまりにも蒼いも ....
『未亡人』
という呼ばれ方を嫌った叔母は
高飛車な懐古主義のロマンチストで
まだ幼かった私に
{ルビ刀自=とじ}
と呼ぶように教え込んだ
『{ルビ刀自=とじ}の刃』
....
6歳の頃
初めてりんご飴を買ってもらった
食べるまで
りんご飴は
ケン玉の赤玉でできている と思ってたので
甘くて柔らかいから吃驚した
7歳の頃
初めて金魚すくいに成功した
ふ ....
夏休みにしか帰らない
実家の銭湯には
青い富士山の変わりに
緑のペンキが色あせ
ボロボロに古びた
一匹の龍の壁画が
どん と
風呂場一面を支配している
田舎のせいか
夏場 ....
眠りの国の君は
きっととても美しいのでしょう
けれど
其れが見れなくて
私はとても哀しいのです
君の伏せられた瞼の裏
封じられた瞳の色は
平生の黒ではなくて
もっと
緑と ....