女がクレヨンを奪って逃げた
必要のない色を奪って逃げた
生活はなにも不便にならない
箱をゆすると音がするだけだ
「生活はなにも不便にならない」
念のためフタの裏にそう書いた
....
土の匂いに目を覚まし
光の朝に種をまく
爪の先に腐った葉が入り込み
くちゅりと匂う
一緒に植わっていようかな
れんが塀に背を預け
足を埋めて空を仰いだ
となりにはトマト
誰かの植え ....
恋をしたら
ひとはみんな
詩人になるっていうけれど
詩人のつもりのぼくなんて
いつまでたっても
恋ができないのでした
六月の
ベルベットの小道を
今夜もぼくは歩きます
....
こよつきよ
ここにもちから およぼせよ。
夏草ノ原 草ノ海原。
ノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノ
ノノノノノ ....
隻眼の花にこぼれる
はじまりの波のはじめから
めぐる魚からほどける光
片方の目はまばたいて
沈みくるものを受け入れる
敗れつづけてなお勝つものがあり
不幸せの上に成り立 ....
ええ レモンの花は咲きません
ええ こがねの柑子も実りはしないのです
くらい森に目立つのは
変にほうけたタケニグサ
それからキノコ
ススキの穂
でもあのはるかかなた森の奥
湖があ ....
{引用=連作詩『右手と左手のための協奏曲』 より}
ゆるやかにま おなじことのくりかえしのようですこしず
わりながらす つへんかしていくいったりきたりしながら
すむゆるやか いつ ....
思ったよりも駅から近くて
古いけど
コンクリで出来てる
アパート
問う
問う
自分へのいろんな
振り切れれば簡単なこと
電車の音が聞こえて
窓を開けた
見えないけど
....
三つ目人の国では二つ目人が怖れられる
優しの国では独りよがりの者をみながいたわる
みなが少しずつ病んでいる国では
危険な病いも紛れてしまう
....
太鼓橋が渡れない
と
友達が言うので
回り道を教えてあげたら
来なかった
さつきに許されないうちは
五月をさつきと呼ばない
ことに決めた
さっき
しどけ
ぼんな
あいこ
こごみ
その不思議な名前の来歴は
山に入る者だけが知っている
雪解け
呪文 ....
言葉で武装してはならない
言葉を武器にしてはならない
争いは銃からではなく
言葉から始まることを知らなくてはならない
言葉で武装してはならない
言葉を武器にしてはならない
言葉の扱いが ....
いろんな気持ちを煮込んでいたら
すっかり煮詰まってしまった
僕はふつふつと夜にとけてしまいそうになる
お腹もすかない
最後に口に入れたものは何だったか
そんなことを思い出す気力もない
....
− 素子へ、特別版 −
子供の頃は戦後のモータリゼーションが
発展し始めた時期で
うちの車は初代パブリカのデラックス
その頃は車のグレードと言った ....
その時 私は恋をしていた
好きな彼が眼の前にいて
その無邪気な笑顔は 私の胸を締めつける
彼の打ち明け話とは 苦痛極まりないもので
そうね、彼女は女同士でも信頼できる
などと私に言わせた ....
さかさまつげ と診断され
父に手をつないでもらって
眼科に通って いた頃
診察してくださった先生は
遠くをみつめなさい と言った
遠くの山の緑 遠くの景色を
とても 眼にいいか ....
母をおくる と
おそらく
わたしの半分が終わる
半分が終わる と
わたしには
守るものがたくさんあって
後戻り
できないことも
また
たくさんあるのを知って
さみしさの ....
ぼくらは、とかく秒刻みでしか生きられない
ようにできていて
あわただしく
世界は今日も明日へと足をすすめる
そこに待っているたったひとつも
ぼくらは知らない
世界はどうしてか
いつも ....
鍵を拾った
それは確かきのうの鍵
みつけたおかげでおもいだした
なくしたおかげで見つけだした
見たくないから飲み込んだのに
みつけちゃいけない 捨てたはずの鍵
あふ ....
キャラメルを、1粒
ちょうだい
ことばなんかよりもずっと
ひかるから
そしたら
手さぐりでも、歩ける
包み紙は、きっと
捨てない
愛してる、って
100万回叫ばれるよ ....
「おやすみ」という言葉は
「さよなら」よりも痛い
貴方がたった独り わたしの手の届かない夢に堕ち
幻影達と 誰も知り得ない言葉を仕草を表情を交わすのを
わたしはとめられない
「おはよう」 ....
先生、
ぼくのお兄ちゃんが
このあいだ死にました
ぼくのうちは
3人兄弟です
全員男です
まん中のお兄ちゃんが
死にました
名前はゆうごです
ぼくは「ゆうごちゃん」と
....
じかんのかんかくが
すなにまじって
とうめいのいれものから
こぼれる
きそくただしいせいかつのなかから
あるじゅうだいなことのしだいを
つつみかくさずあ ....
いつものファイブコールで
留守録に替わったとたん
がさがさとなにやら
騒がしい摩擦音
あ、おはよ、って言っても
何も答えない
切ったつもりの携帯が
つながったままなんだ
あなた ....
江戸っ子の
おきゃんといなせがくっ付いて
魚屋を創めたよ
時々遊びにいくと
人工甘味料のだけの
昔はそれしか無かったんだ
オレンジジュース
好きなだけ飲ましてくれた
....
五月の岡を歩いている
松林の間から
ひめ春蝉が鳴いている
ここは
天国ですか
みんなは笑っている
天国かもしれないが
あなたの天国であり
私達の天国ではありませ ....
ほしにうつらぬひとがたを
そっとかかえてかがみにひたそ
にじんでこぼれるほしがたを
なみだとまぜてゆめからぬぐを
ほしのかたちはいびつにまるく
ひとのかたちはうすれてくらい
....
きもちとか
こころとか
せかいとか
いのちとか
それからあいとか
まちがっても
ことばでは
いえないようなこと
ひとつの花のうつくしさを
つたえることばは
つねにたりな ....
計算機を裏返し
ドライバーでひとつひとつ
ネジをはずす
基盤が剥き出しになる
入りくんだところで
ラーメン屋は既に営業している
のれんをくぐる
いらっしゃい、とだけ言って
寡黙 ....
短歌はとにかく
詩というものは、
俗っぽくてはいけません。
繊細で青味がかかった伝統の自然色の赤
明るい日光を浴びた色は全て
赤
と表現された
白と赤
青は後ろに隠 ....
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