グミ
どうぞ、と差し出された袋のなかには
色とりどりのグミ
お祭りみたいにひしめき合ってる
青いのをひとつ
取り出して
口に入れる前に電球にかざす
ママが言った
海の色を ....
草原で風に吹かれて
座っている
誰かが来るのを待っている
偶然通りかかるには
あまりにも広い
知らなかった
こんなにも膝を抱えるなんて
自分自身で歩いて来た
わかっているけど
一 ....
月がきれいな夜
ゴンドラに乗って
ドラッグストアに
買い物に出かける
カビ取り剤が
20パーセント引きのクーポンで買える
「カビ取り剤を買いに来ました」
「カビ取り剤をください」
....
六月はもう
むし暑く
医療用コルセットを巻くと
腹部が汗でむれる
窓の外を見ても
空はどんよりと深い水の色
濃すぎる緑に
むせ返りながら
ものうく
大気は ....
5月28日
黒いペンで書かれた
カレンダーのさりげない予定
几帳面な字
その翌日
あなたは
日めくりの裏のような
真っ白な予定の永遠に続く
向こう岸へと
踏み出してしまった
....
雨の形のまま
わたしたち、地下鉄で
産道を進む
透明に敷き詰められた窓
向こう側に続く暗くて
滑らかな景色
輪郭は線となり
わたしは葉っぱを並べる
あなたは選挙の人にもらった紙が
....
校庭でゼリーが息絶えていた
音も無く
オレンジ色の匂いがした
樹木の間から
整体、の看板が見えていた
看板が見えるのは校庭の高さが良いからだ
と、かつてあなた言った
それはここと ....
「仕事中に小学3年の息子から電話が来て
お母さんが首吊ったって言うもんだから
もう、ビックリしましたよ。
でも、よく聞いてみたら
妻の首が攣ったことらしかったので
そのまま寝させてなさいって ....
雨音に落ち着いて
私はムツカシイコトを考える
宇宙の開闢 時の始まり 5日前の晩御飯
クレパスでロケットの絵でも描きながら
濡れた世界を窓から眺めたりする
思うに梅雨はツ ....
うちの子は
みんなそれぞれが
最高だ。
悪い部分もあるけれど、
うちの子たちだ
物に罪は無い
罪があるとしたら
それは人の行いにある
そして、罪をゆるすのは
人のこころ
真実は逃げ足が早いんです
真実は恥かしがりやなんです
真実は冬眠するんです
真実は直ぐそこにあるんです
真実の扉をひらくのは自分自身なんです
真実からは逃 ....
コロナが5類になってからマスクを外す人も多くなり、あれ?
隣に座っている同僚の顔ってこんなだったっけあるあるが、
あちらこちらでおきている毎日ですが、今はポエムの日々だなあ
とすごしています。
....
ピカの思い 忘れない
夕方、アイロンをかけていると
背中のすぐ後ろまで
海は来ていた
昔と同じ懐かしい波音が聞こえる
泳ぐことは得意ではないけれど
波打ち際で貝を拾ったり
足の指の間にある砂が
引いて ....
耕し石拾う 堆肥を入れ耕す
くり返し くり返し
ご先祖さま
豊かな土、良い土は黒い土
腐った生きもの
小さな生きもの
混じっている
生きた土、良い土は黒い土
命をつなぐ ....
読みさしの本に
めがねを置いて
電気をけして寝る
かぜのたたく
春のよる
飼っていた 小さい いぬ
ゆめのなかで やわらかく
きみの手にだかれ ....
窓を開けると五月の風と一緒に
校長先生が入ってきた
自分で握ったんだよ、と
おにぎりを食べてみせ
そのまま駅のプラットホームに並んだ
太陽の高さや空気の感じなどで
今日が午後であることはわ ....
新じゃがいもをたくさんもらったので
ご近所さんにお裾分けした
お返しに、と
果物をいただく
蜜柑のようでちょっと違う
きめ細かいすべっとした黄色い皮は薄く
手でむけそうだ
現れた果実 ....
京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
「うわ、六百十五円やて!」
何事かと 彼女の視線みると
老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
ビスカッチャになった私は
眩しそうに目を細めている
ただ ひと目でお疲れなのだろうと分かる
それがなんとも言えない いい味わいなのだ
植えたばかりでも
水田では風を見ることができる
....
さっきから何を探してる
SNS片っ端から使って
ただ静電気のような胸の痛みが
どこかを意識してるから
やめることができない
思いがけないエメラルド
それが小さな画面のどこかにあ ....
幼い頃から崖があると
覗き込む癖がある
特に興味があるわけではなく
崖の下に何があっても
それはそれでよかった
街中
路線バスの中
会議の最中など
崖はいたるところにあって
時々 ....
右目がごろごろするので
鏡で確認すると
目の中に台風が発生していた
降った雨が可哀想な人のように
涙となって溢れ出した
眼科に行ったけれど
不用意に右目を覗いたお医者さんは
風で目の ....
私が私について語っている時に
兄が遠い県からやってきて
市民会館の職員と結婚した
つう、と言えば、かあ、なのに
我が子の名前を考えるのに夢中で、最後は
おまえに任せる、兄、つう
ラクダがい ....
もう もどっては こないよって
あいつは いった
ぼくのことなんか ほっといてよって
あいつは いった
ツチノコ ツチンコ シタリガオ
また どこかで会えるって? ハ ....
洗濯したシャツを畳んでいると
シャツに畳まれている私があった
痛くないように
関節が動く方向に畳んでくれた
畳み終えると皺に注意しながら
シャツはそっと私をタンスに仕舞った
衣替え ....
お堂の屋根が破れているから
雨が僧と経本を濡らすんだ
蝋燭はまだ消えず
線香は煙を真上に一筋を
昇って薄く消えて
読経と雨音
衣と袈裟は濡れて
赤と青は黒に近づく
瞼に水滴 ....
座右之銘は 明鏡止水で
欲しいのは 動じない心
ではなくて
小さな波を 感じる準備
笑ってやる 泣いてやる
普通のこと 感動のうず
腹へっても 眠たくても
いくらでも 何でも ....
それは直径十二センチのバースデーケーキだった
スポンジ全体に
塗られる甘みをおさえたクリームと
細かいおろし金で削られたホワイトチョコレート
が、一面に振りかけられて
まるで遠い ....
ディオゲネス・ラエルティオスの『ギリシア哲学者列伝』を読んでたら
アリストンという名前の哲学者が、ハゲ頭を太陽に焼かれて死んだって書かれていた。
べつに、ハゲでなくっても、日射病ぐらいにはかか ....
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