三つ目人の国では二つ目人が怖れられる
優しの国では独りよがりの者をみながいたわる
みなが少しずつ病んでいる国では
危険な病いも紛れてしまう
....
太鼓橋が渡れない
と
友達が言うので
回り道を教えてあげたら
来なかった
さつきに許されないうちは
五月をさつきと呼ばない
ことに決めた
さっき
しどけ
ぼんな
あいこ
こごみ
その不思議な名前の来歴は
山に入る者だけが知っている
雪解け
呪文 ....
言葉で武装してはならない
言葉を武器にしてはならない
争いは銃からではなく
言葉から始まることを知らなくてはならない
言葉で武装してはならない
言葉を武器にしてはならない
言葉の扱いが ....
いろんな気持ちを煮込んでいたら
すっかり煮詰まってしまった
僕はふつふつと夜にとけてしまいそうになる
お腹もすかない
最後に口に入れたものは何だったか
そんなことを思い出す気力もない
....
− 素子へ、特別版 −
子供の頃は戦後のモータリゼーションが
発展し始めた時期で
うちの車は初代パブリカのデラックス
その頃は車のグレードと言った ....
その時 私は恋をしていた
好きな彼が眼の前にいて
その無邪気な笑顔は 私の胸を締めつける
彼の打ち明け話とは 苦痛極まりないもので
そうね、彼女は女同士でも信頼できる
などと私に言わせた ....
さかさまつげ と診断され
父に手をつないでもらって
眼科に通って いた頃
診察してくださった先生は
遠くをみつめなさい と言った
遠くの山の緑 遠くの景色を
とても 眼にいいか ....
母をおくる と
おそらく
わたしの半分が終わる
半分が終わる と
わたしには
守るものがたくさんあって
後戻り
できないことも
また
たくさんあるのを知って
さみしさの ....
ぼくらは、とかく秒刻みでしか生きられない
ようにできていて
あわただしく
世界は今日も明日へと足をすすめる
そこに待っているたったひとつも
ぼくらは知らない
世界はどうしてか
いつも ....
鍵を拾った
それは確かきのうの鍵
みつけたおかげでおもいだした
なくしたおかげで見つけだした
見たくないから飲み込んだのに
みつけちゃいけない 捨てたはずの鍵
あふ ....
キャラメルを、1粒
ちょうだい
ことばなんかよりもずっと
ひかるから
そしたら
手さぐりでも、歩ける
包み紙は、きっと
捨てない
愛してる、って
100万回叫ばれるよ ....
「おやすみ」という言葉は
「さよなら」よりも痛い
貴方がたった独り わたしの手の届かない夢に堕ち
幻影達と 誰も知り得ない言葉を仕草を表情を交わすのを
わたしはとめられない
「おはよう」 ....
先生、
ぼくのお兄ちゃんが
このあいだ死にました
ぼくのうちは
3人兄弟です
全員男です
まん中のお兄ちゃんが
死にました
名前はゆうごです
ぼくは「ゆうごちゃん」と
....
じかんのかんかくが
すなにまじって
とうめいのいれものから
こぼれる
きそくただしいせいかつのなかから
あるじゅうだいなことのしだいを
つつみかくさずあ ....
いつものファイブコールで
留守録に替わったとたん
がさがさとなにやら
騒がしい摩擦音
あ、おはよ、って言っても
何も答えない
切ったつもりの携帯が
つながったままなんだ
あなた ....
江戸っ子の
おきゃんといなせがくっ付いて
魚屋を創めたよ
時々遊びにいくと
人工甘味料のだけの
昔はそれしか無かったんだ
オレンジジュース
好きなだけ飲ましてくれた
....
五月の岡を歩いている
松林の間から
ひめ春蝉が鳴いている
ここは
天国ですか
みんなは笑っている
天国かもしれないが
あなたの天国であり
私達の天国ではありませ ....
ほしにうつらぬひとがたを
そっとかかえてかがみにひたそ
にじんでこぼれるほしがたを
なみだとまぜてゆめからぬぐを
ほしのかたちはいびつにまるく
ひとのかたちはうすれてくらい
....
きもちとか
こころとか
せかいとか
いのちとか
それからあいとか
まちがっても
ことばでは
いえないようなこと
ひとつの花のうつくしさを
つたえることばは
つねにたりな ....
計算機を裏返し
ドライバーでひとつひとつ
ネジをはずす
基盤が剥き出しになる
入りくんだところで
ラーメン屋は既に営業している
のれんをくぐる
いらっしゃい、とだけ言って
寡黙 ....
短歌はとにかく
詩というものは、
俗っぽくてはいけません。
繊細で青味がかかった伝統の自然色の赤
明るい日光を浴びた色は全て
赤
と表現された
白と赤
青は後ろに隠 ....
僕は彼女を困らせているんじゃないだろうかと、
しかられたあとの子供のようにどぎまぎし、
ココロを収縮させ、ひとつひとつの言葉に、
身を切るような寒気が走るのだ。
森についてもっと詳しく話す ....
ぴんと張った背中を
つむじ風が
らせん状に、なでて
どうしてか
しのび足でわたってゆく
ので
今いる場所がほんとうは
うすい
一枚の氷の上なのだと
冬が深まるごとに、気づく
....
心臓は崖へとつながっている
推定二百メートル
くらいでしょうか
そこから下を覗きこむのも可ですが
寧ろ僕は
ヤッホー
の魅力にとりつかれいつまでも
ヤッホー
ヤッホー
と繰り ....
すべての葉を散らした体内で
葉たちはもう
おしゃべりをしているころだ
兵蔵さんのお顔を 息子さんは知らない
息子さんは知らないのだから お孫さんは全くわからない
お名前は 存じております
この街の 開墾のために入られて
のちに
戦地へと向かわれた御方です
....
おばぁさま おばぁさま お花が咲いておりますの
のんのんさまの おひざもと
のんの のの花 咲いて おりますの
おそばに おられましょうか?
アカシアは雨の森 東京は夢の戦場
やさしさを偽れば女になれる
キスの上手さでかわす夜 アルコールなしじゃ歩けません
現代とかっこよくいっても 懐かしさだけが恋しい大人の勝手
....
海と空の境界線は
いつだって本当と嘘に似ている
マリファナ中毒者のような顔つきで
微笑みかける老人に
アホのような笑顔で答える私がいる
この島の時間が止まって ....
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