両手いっぱいに
林檎を抱えている人がいた
あんなに抱えて
きっと林檎が好きな人なのだろう
僕は右手にひとつの白球を持って
王国をつくりに帰るところだった
顔をしかめて歩いている君の笑顔が見たい
それはたぶん
いや、きっと
誰もが幸せになれるものだから
すべての女の子は
幸せになるために生まれてくる
だからすべての女の子が
涙を知ってい ....
食卓の新聞紙をめくると
塩サバが現れた
よく冷えていて堅い
奥歯で静かに食む
ガタガタと襖が開いて
まぶしそな顔
(パパおかえり
(うん、ただいま、寒くないかい?
向かい側にぺたん ....
{引用= 空をイチョウが渡っていった
最初は一枚
次には乱舞
真上を通った瞬間に
くるくるイチョウの形が見えた
落ちてきながら
落ちてはこずに
....
少しだけ
夢見るように
呼吸してみる
赦されているかどうか
確かめるために
わたしたちはすべて
結ばれていない
それはわかっている
結ばれることはない
それも
わかっている
....
38.6度の熱で
静かにベッドで横になってたら
アトムやら
太宰治やら
はちべえなんかが
おでこの辺りで
なにやら難しい話しをしてた
その顔は
どれも真剣で
声をかけよう ....
駅からの帰り
長くつづく塀のすみっこで
ダイヤルを見つけた
それは黒ずんでいて
たくさん目盛りが打ってあった
そっと触れると
ダイヤルは手にしっくりとなじんだ
銘板が空欄だったので
....
あやつられる
わたしの背中に糸が生えている
よく見ると
足からも
腕からも
糸が生えていて
どうにかすると口がパクパクする
声だけが違う場所にあって
伝えることができない
こ ....
ぞくぞくするものだから
風邪をひいたように思ったのだけれど
なんだ
背中に離婚届が貼り付いていたのか
ついでだから
その上から婚姻届も貼ってしまおう
少し温かくなるかもしれない
それ ....
みもふたもないはなしである
漱石の夢十夜の第一話
おんなはあっさりと死んで行く
おとこは大きな真珠貝を手にとって
庭に穴を掘り埋葬する
死亡診断書は何処にある
埋葬許可書はもらったか
....
自殺を考えたことがあります
いいえ、「考えた」のではなくって、「しようとした」と言ったほうがいいのかな
毎晩電話をかけてくる女の子がいまして、タイプじゃなかったんですけど、
いろいろお話するうち ....
海のそばの公園は芝生がまだ青くて、快晴、強い風
空の真ん中らへん、釣り針みたいな飛行機、光った
口をあけてみてた女の子、ぴょんと、跳びあがって
側転 側転 側転 側転 側転
芝生は ....
触れ合うためにあるものを
手、と呼ぶのなら
私はいらない
私には
ない
たそがれは穏やかに
その時を待つ
眠れない暗闇と静寂は
心を熟すのではなく
怯えさせるのでもなく
た ....
こころの機微をおひとつ、どうぞ
かわりに今後もよろしく、どうぞ
わたしの背後のあれこれの
言い尽くせないあれこれの
混じり気のない よろず味
恥ずかしながら
....
骨壷の中で、シャリ、シャリと微かに呟く声がする。
ねぇ、おまえ。
人間なんざぁ、死んじまえばこれっぱかりのカルシウムの塊よ。
どれほど、世界を股にかけた男だろうと、
恋の奈 ....
気がついたら明るくて
「しまった」と
後悔した土曜日の朝
昨夜はあんなに寂しがっていたのに
男は嘘のようにあっさりと眠っていて
寂しかったのはわたしだって同じだけど
一人で目覚めると
少 ....
タイセツなヒト
が死んでしまった
ケムリはまっすぐに
ソラにのぼっていった
タイセツなヒトを想うたび
頭のなかで
スイッチが入った
かち
音がして
タイセツなヒトで
キモチがい ....
視界の隅で
それは
ゆれている
ぶらさがって
ゆれている
ゆれながら
じっと
こっちを見ている
それは
見てはいけないもの
けっして
目をあわせてはいけないもの
見 ....
リードギター 弦を歯で切る 指で切る ベースも真似して 切れずに泣いた
おまいらの 心の琴線に 触れるだとぉ 冗談じゃねー ぶち切ってやる
たましーが あればなんでも ロックだ ....
{引用=
こんとん ふつ ふつ
と
そこより いづる
いき
}
小さな球体のうえに
ひとり立っている
ほんのすこし歩くだけで
一周してしまう
表面は平坦で
どこにもなにもない
踏んだ部分
がすこしだけ窪む
歩いた軌跡が窪んで見える
窪んでいな ....
それは眠りながら
君の体を行き交う虫を捕まえて
虹色に光る魚を探したかった
なにかを追ってどこかまできたけど
帰るための電車も小銭もなかったんだ
唐突で従順な世界の中で
僕は自分の ....
夕焼けのなかに
ぽつんとビルが
建っている
ながめていたら
たたずむひとに
見えてきた
ひとが
暮らしている
のだから
ひとに
似てくるのは
当然のこと
かもし ....
すこしのことで
こんらんする
ざらざらななみだ
たまりて
できた
なみだぶつ
なにかありがためいわくな
そんざい
ぼくのなみだぶつ
まいにちいのっているよ
くさのに ....
わけもなく
海に行かない
青ざめた
この肌の下の水脈に海の素質があるとしても
夏において
情熱的な、情熱的な
世界中の観察眼と観察眼が合い続けているとし ....
+TATOOの悲しみ
水商売をもれなく売女と呼ぶ
その在庫表の端には
くたびれたドラえもんが描かれている
規則正しく働ける
抜け目ない線とスイッチの裏の
せわし ....
「神様、地獄に行かせて下さい」
「何故? 君は立派な政治家だったはず」
「ありがとうございます。でも…」
「なんだね?」
「友達が一人もやって来ないんです」
Kur ....
クラシック聴きながら詩を書くと詩が3拍子になってしまう、
でも詩は4拍子のほうがいいから、詩を書くときは狂ったロックやテクノを聴くと言う人のことを思い出していた。
今日中にたどり着けない電車に乗り ....
くらげはもう水みたくなって
やがて海になるだろう
溢れる 空想を両手にとって
きみは穴を掘っている
隣で海を耕しながら
私はそれらを見つめてあげる
....
病を詩うなかれ
もし病が書かせるにせよ また
病ゆえに書かざるを得ずとも
病を詩うなかれ
死を経ずして死を詠むなかれ
死からほど遠くであくがれ
あるいは ....
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