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おぼろ月の夜
一日のためいきが霧となって森を覆っている
初夏の日差しにうたれた葉は
産毛をひらき 月のひかりを浴びている
森の奥
鼻を濡らした一頭の獣が立つ
におい立つ皮膚に ....
もう十年もタバコを吸っていない。
健康のためだったか、タバコを吸う自分との決別であったか、確かそんな理由だった。
今ではタバコも高価な代物となり、止めて良かったんだ、そう思うようにしている ....
まったく仕事のない家業の室内で、山に行かない日はひたすらネットフリックスを鑑賞し、厭になると動画サイトを見る、現代詩フォーラムを徘徊し気になる作品にポイントを付与。そのほか、時折自分のための料理を作 ....
恥ずかしくらい若かった
初秋の街角から立ち込める金木犀の香り
今でもその匂いを求めてさまようことがある
その、樹木のある家を見たこともなく
たぶん老人が住んでいたのであろうか
おそらく猫もい ....
目が覚めると異様なほど口中の渇きを感じることがある。一滴ずつ唾液腺から舌で唾液を促し、口中の渇きに唾液を塗りたくる。いったい俺の体はどうなってしまったのだろうか?そんなことを最近感じる。
鏡の中 ....
めずらしく熟睡したようで、うっかり二時四十五分の目覚まし時計を停めてしまい、気がついたらすでに三時を過ぎていた。あたふたと準備をし、食後に飲む薬をポケットに忍ばせ、慌てて大便をする。洗顔、寝起きのス ....
あの日、体のどこかで真夏が沸騰し、けたたましく蝉の声が狂っていたのだろう。
大きくせり出した緑の中で、無心に巣作りをする脳のない虫どもの動きが、この俺をその世界から削除しようと仕掛け ....
私は梅雨空の
とある山の稜線に花となって咲いてみる
霧が、風にのって、私の鼻先について
それがおびただしく集まって、やがて
ポトリ、と土の上に落ちるのを見ていた
私はみずからの、芳香に目を綴 ....