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ひとまわり大きくなった太陽が
西の水平線に沈んでいく
この海はどこへでも繋がっている
海岸には奇妙な文字が氾濫している
塩化ナトリウム水溶液で繋がっている
巨大な電池だって作れる
....
「ああ,嫌だ」
彼女は台所の隅でぬか床を愛撫しながら言う
手を入れるたびに 「さくっ,さくっ」と音がする
重みに耐えかねた雪が どさっと落ちる
たまの大雪くらいで大騒ぎできるほど平和だ
....
古い酒蔵のステージ
ドラム叩きとベース弾きに
ときおり目くばせしながら
ヴォーカリストの暴走をくいとめてる
EとBの間
ヘッドでタバコをくゆらせて
だれを気取ってるの?
あんまり ....
真夜中にピッチの着信音
どんな目覚ましよりも効果がある
気がつくと白衣を引っ掛け
廊下を小走りに駆けている
おとなしい茶色い目の
奥さんを思い浮かべる
父親に似て意志の強そうな
....
はやい夕暮れ
うんざりする長い夜
セピア色の点光源
薄暗がりの背景に
うかびあがって
忘れられた
映画のポスター
ひたすらうらぶれてる
スーツの男
作業服の男
セーターの男 ....
うつ病のひょっとこ
暗い目
マジ過ぎて笑える
面白い顔で
沈鬱な表情
文句なく笑える
「笑っちゃいけない」
お行儀いい人は言うけど
笑えちゃうんだからしかたない
偽善 ....
七夕飾りを作った
網飾りと提灯をつけた
短冊を書いてヴェランダに飾った
あいにくのくもりぞら
空を見る気にもなれず
意味のないTVドラマを観た
ヴェランダで妙な物音がする
カ ....
しあわせがサラサラと
指の間から
零れ落ちていく
静寂
音も立てないで
苦しみもしないで
描いた文様は
風に吹き消される
伝わらない思いを
伝えようとあがいた
その言葉 ....
隣のおばさんは
自治会の会合に熱心すぎる
向かいのおじさんは
信心深くて線香を焚きすぎる
あたしは
隣の女子高生のアニメ友達だし
向かいの大学生とはテニスをする
純粋培養の仲良し ....
真っ白いノートに
青いインクでスラッと書きたい
なぐさめかもしれない
ラブレターかもしれない
高らかな決意かもしれない
それとも
別れのコトバ?
ノートの表紙は
いろんな色で彩って ....
丘をのぼる石だたみの坂道でうずくまっている
ベレーをのせたあたしの夢 ただの酔っぱらい
指にこびりついているのは絵の具じゃない
細かい灰色の砂ぼこり 指の間から零れおちた砂の残骸
こんなと ....