あなたが感じた
その美しさを
僕の手のひらで触れることが出来るのなら
あなたが感じた
その痛みを
僕の右足で蹴ることが出来るのなら
あなたが感じた
その優しさを
僕の頬がさ ....
昨日
柿を取ろうと
腕を伸ばした塀の上から
落っこちた親父が
とっさに捕まった物干し竿が
身代わりのように
ぐにゃりと折れた
午後
急に画面が消えたパソコンを
電気技 ....
両の指を痛い位絡めて
錆びたフェンス越しに友を見ていた
立ち入り禁止区域
思い切り高く遠くへ放った
僕達の鞄
一瞥して走り行く
君の ズザザと力強い
足元の埃
駆け上が ....
夕暮れと同じ色をした
雀の群れを乱しては進む
道標を飾る白い花
いつの世も悲しい子らはいる
わずか数秒のねむりのつらなり
分かるはずもないくりかえしのわけ
ねむりのまま ....
全てを飲み込んで許し
傷つけ吐き出す
砂
片足がほろんでいる男の
肘にぶら下がる女
際限なくせばまり風にうずまく砂は
常に何かを形作ろうとし瞬間
走るように崩れ去り
うめきすら ....
本当の入り口はどこだったのか
わかったのは
いつだったろう
どこまで上昇しても
融点はなく
波はひきかえしてゆく
そうやって
のまれても、のまれても
打ち上げられるしか
なか ....
空にたつ少年
キャンバスを粗く擦ったような
雲をみあげる
銀色の髪
長袖Tシャツとバスケットシューズ
細い骨の孤独を
風に{ルビ晒=さら}している
視界に収まらない空
どこからがは ....
ボクハ、オモツタンダ。
世界は少年の持つ
小さなビー玉の1つで在って
何時無くなっても可笑しくなかったり
割れたって仕方無いとか
....
今日、ってこの空の
どこにあるんだろう
今日、さりげなく流れた風も
もう見つけられない
昨日は、星
明日は
あるお腹が空いた日
しょうがなく戸棚を開けた
何もなかった
幸せすら
見当たらなかった
あるお腹が空いた日
雨粒を一掴み口に入れた
なんの感情もなかった
ただ
冷たくなった雨 ....
野菜を切る音で目が覚めた
炊飯器からは蒸気が上がっている
優しい声に誘われるように
欠伸と同時に体を起こして
山吹色のカーテンを開けた
物干し竿には雀が二羽
番を組んで仲良 ....
ひなごおり の よ
しずむつち はしゃいだ
わたりふね にがして
そろりと りょうて
あたたかく ないた
つめにかけた おまもり
しろいくも の ひも
空白を見つけては檸檬の汁を垂らして遊んだ
うだるよな暑さと陽射しに匂いと香りが溶け込んでいく
浮かび上がる無数の回答には目もくれないでいて僕等
手のひらをお互いに舐め合って沢 ....
乾いてゆく風があった
薄れてゆく光もあった
綺麗にされた夏だった
目の前に拡がる
どこか懐かしい景色に
なぜかふるい歌を思い出し
海に腕をさし入れる
かなしみが群れているのは
きっ ....
明け方過ぎの国道で
辛うじて歩いている
あたしの足は優しくなれているのか
国境を探している
壮大なサウンドの中
口ずさんだ蛍光灯
静かな空気が痛みに変わる
地平線はどこにある
....
水曜の午後は
bossa novaの和音に肘を抱えて
白い器の縁をみつめている
くるりと立ちのぼる
緩やかな湯気の香りで
部屋中を染める
耳からこぼれおちる
綿のようなものを
すく ....
指は
君の小さな生き物だった
どこか
遠い異国の調べみたいに
時おり
弾むように歌ってた
君が僕の指を食む
君が
少し子供にかえる
遠いね、
とだ ....
秋が空気を包みはじめている
なんだか最近いつも二人でいる
コーヒーにミルクしか入れない
薄いこげ茶って秋っぽい色
髪、伸ばしているの
首筋が寒いから
風が落ち葉を舞い上げて
ほっ ....
ジャガイモの皮を剥いたことある?
妻に尋ねられ
そういえば
記憶に残っていない
娘が小学校低学年のとき
いもの皮むき みんなでしたとき
血だらけになった男の子がいたらしいよ
娘が ....
ひとりで
回転寿司に行きますと
何周もしている
モンゴイカにふと
周回遅れのじぶんじしんを重ねて
真向かいの
ホスト風の男が
うにいくらと注文しているのを
同じ色の皿ばかり積む私は
....
駅へ向かう道すがら
はいいろをした四本足の生き物が
とぼとぼと歩いていた
( )駅では
列車が遅れていることをみんな知っていて
でも
みんな口をつぐんでいた
恋人たちは
別 ....
{ルビ呑気=のんき}な仮面を被っていても
ほんとうは
わたしもあなたとおんなじように
ひとつの大きい影を背負って
流浪の旅路を歩いています
木造校舎の開いた窓に
手を振って ....
コロッケは生活の象徴
雑然としたテーブルや
家族の遠慮ない声
今日という一日の繰り返し
晩ご飯はコロッケがいいな
ミンチとじゃがいも、あったね
二人でやると早いよね
....
九月
あなたが好きでした
あこがれの名ばかりを孕んだ
鳳仙花が弾けています
木の葉が
択んで
静かなところへ落ちつくように
黄金の峰からふく風がゆきます
夕暮れがやわく優しく
....
夢のように細い骨で
ぼくたちは生きてきたんだね
愛についてを乞うたのならば
骨と枯れても
幾千
幾憶
そこには声があった、と
想う
....
今にも崩れ落ちそうな
{ルビ脆=もろ}いわたしの内側に
いつまでも崩れずに立つ
たったひとりの人がいる
これは一体誰だろう
そこはいつも
清潔な湿度と
せつないじゅうりょくの
香りにみちている
身ごもったおんなたち
髪を横に束ね
しずかにもたれている
雑誌をうつくしく取りだし
うつくしくめくる
とろと ....
帰り道 君は南に私は北に 二人を分かつ夕暮れに秋
ロンハーの青田典子が好きと言い笑い転げる君が愛しい
疲れてる君の様子に少し似たスーツの上着抱きしめたくなる
ネクタイを慣れぬ手つ ....
湿ったソファーに沈みこんだ
少女の
くちびるからもれる
母音の
やさしいかたちを
泡にして
水槽のふちに
浮かべている
*
贈られた模型を
にこやかに受け取り
持ち帰って ....
哀しみのあなたの窓辺に秋桜いちりん
――凹
灰色に覆われた低い空に
押しつぶされて
想いと呼ぶには小さな
いくつもの欠片が
重たくなって
沈んでゆくだけ
雨ならなお一層
....
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