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海へと抱かれる
やわらかい夕陽の
いよかん色にもえて
さざめくひかりは一心に
反射し
調和し
舌のうえではじけて
ひとすじの
輪郭をあらわす
(帰ってきてもいいよ、という言葉 ....
うすむらさきの雲の向こうで
夕日がしずむ
水羊羹の表面を
スプーンですくうように
なめらかな冷たさを泳ぐ
信号機が ぱっぽう、と
くりかえし諳んじて
歩道橋はひとの重みにたわむ
み ....
さといもの葉の上を
するんするんと滑ります
あ、
(あ、)
水滴、すいてき、てきてきてき、
曇り空の弱いひかりに
あなたの瞳はうるんできらめく
つかみどころのない
あいのことば
....
灰色の空 雨の日は憂鬱
窓辺で雨粒がご挨拶
ご機嫌いかがと親しげにいわれても
あいむふぁいんと返す気分じゃない
めくり忘れたカレンダーに並ぶのは
反芻した日々
雨の匂いが染み込んで ....
えんぴつの先をねぶると
木のぬくもりと
黒鉛のつめたさ
三寒四温だよ、と
町角ですれちがった
親子の会話が
耳に残る
繊維に染みわたっていくのは
甘みではなく、
苦み ....
石けんの香り
ゆらいで
沐浴
朔日、
娘が生まれました。
張りつめる乳房の
端から
わたしの血液を
ふくませ、
ふくませ、
新月のひかりで
臍の緒を断ち切ります。
....
耳のようなかたちをして
母のおなかの中でうずくまっていた
そのとき私は
ひとではなかったが
確かに
ひとの一部のかたちをしていた
二十歳の誕生日に
ストローの束をもらった
もうすぐ ....