呼び声はまだ
きえてはいない
癒えてはいない
たずね人はまだ
絶えてはいない
やんではいない
ましろな雪は
ゆめの燃えがら
はる待つ
まくら
かたく一途 ....
ビニール傘から眺める景色は
どこか私がもう存在しない
未来の街を眺めているようだ
柔らかくて弾力のある筋肉で覆われた景色の下には
機械化された金属のリズムとメロディが
コ ....
あふれていくものをせき止めるすべはなく
細い腕がグラスを傾かせるたびに、
毒のカプセルを口の中で遊ばせる作業を
どろどろする部屋の、青い窓から見ている
絆創膏では隠し切れないものが、君の影 ....
トンボになって飛んでいた。
桜の木もすっかり葉を落とすころに。
翅は なんにも思考せずに
ただ
トンボのこれからをひたすら羽ばたいていた。
大きな樹の小さな木陰で
すこしばかりの休 ....
海の見える場所に
足を止めた
海岸線は弓なりに身をそらせ
波を抱えてふるえている
少女が砂に座っている
束ねられた長い髪
白い顎の輪郭が
背景の蒼を深めている
(うまくいってる ....
ありがとうと
一日に一度は言いたい
ありがとうと
誰かに言ってもらうためでなく
ありがとうと
自然に言える自分でいたい
※
きみがいつもと違う顔で教室にきた ....
懐古的メソッド
安定の不安定で
冷蔵庫を攻撃する
よく冷えている
中性的で静かな暴力
傷だらけで枕とおしゃべりをする
朝より夜が好きだよ
やさしく首を絞めてくれるから
太陽より月が ....
海を知らないのに 波のように
風に這われた雪が空中に駆け上がる
道路から 枝から 積もった雪の壁から
風の爪となり 冬の刃となり
波から眼をそらせば とらわれたハンドルが
凍る道に ....
この路線はもう天国へ連れていってくれないのだろうけど
わりとひらけた停留所で緑色の傘が落ちているのを見た
空き缶一つ見当たらない不自然な砦で
小銭の音が響いているだけ
七年ぶりにハチ公のた ....
ぶつからないように
ぶつかって
絡まないように
絡ませてしまう
濁らないように
やっぱり濁りの中に浸かり込んだ
傷つかないように
傷つき泣いて
傷つけないよ ....
毎日毎日、何で飯食ってるんだろう。
性懲りもなく、毎朝顔洗うのは何故なんだろう。
飽きもせず、季節を繰り返すのは何故なんだろう。
そうやって考えたら何だか可笑しくて笑ってしまったよ。
....
しまっておいた物が見つからない
きっとかくれんぼをしている
不意に見つかるときは
隠れているのに飽きて
そろそろ見つけてよ
と言いたげに現われる
普段からよく使う
机の引き出しか ....
言葉がまだじゅうぶんでなかったころ
わたしたちはそれを呼ばなかった
知ってはいたけれど
おはようも こんにちはも
いただきます
もなかった
雨がふ ....
苦しみが二つあるのもいいものだ
一つの事だけ 思いつめていられない
じっくり向き合ってもいられない
さあさあさあ
最大の苦しみにあうまで
練習しておこう
苦しみながら 生きる術
....
娘と一緒にドラッグストアーに行って
「好きなものをひとつだけ買ってあげるよ」
と言ったら
「ホチキスが欲しい」と言う
「ホチキスならうちに二つもあるでしょ。
塗り絵の本とか色マジックのセ ....
だれでも見えないところに空がある
晴れたり、くもったり
雨が降ったり、嵐が吹いたり
届きそうで届かないのは
空とほんとにおんなじで
何もなさそうで何かあって
そんな空っぽみたい ....
指のとどかない所に 風が吹きつける
残る葉は からくりに寄り添い
ほどこしに 目をあけない
脈が 望みを往く
土に 酔い交じり
ひかるのは星だけと
枝の夜は ふける
土の時から切り倒された木が
障子の枠になり
冷たさと暑さをさえぎる
みあげていた空は
どこにしまいこまれたのだろう
根もなく 葉もなく
マストのように 飛行機のように
航海が ....
窓の下には鉄の部隊が並んでいて
わたしは今日も外に出られない
大きな口をがらんとあけた
あのパラシュートみたいなものに飲み込まれる
そうすればわたし、麻を縫わなくてすむのかしら
見世物小 ....
本当に怒っているとき
誰にもそれを
気づかれたくない
本当に深く傷ついた時
誰にもそれを
知られたくない
本当に寂しいとき
誰にもそれを
見られたくない
だから
本当に ....
ねえ 今日は早く起きれたよ
自分を褒めたらいいじゃない
ヤバイえらいじゃんできるじゃんなんて
独りで笑っちゃうくらいいいじゃない
最初から諦めたらだめよちょっと頑張ってみようかななんて
....
そうだね、きみのいうことは正しい
でも僕はそう思わない
どちらか、じゃないんだ
ここに道はなくて、君の見渡す限り広がっているだけ
コンクリートは壊れるけれど
水は決してこわれない
....
朝
お玉におかゆが残ってて
夕べ
ゆきひらでほとほと煮ました
温かいものが食べたくて
お米しかなくて
夕べ
お米を見ました
白くてひかっていて
さらさら洗うとすきとおる ....
今 この時に
私はあなたと同じ日暮れを
病んでいる
今 この時に
私はあなたと同じ孤独を
呼吸している
そしてもう二度と会うことはないあなたと
今まででいちばん
近いと感じてい ....
冬の薄暗い回廊を
渡ったところに教室があって
頭痛を抱えたままの君は
そこをめざして歩いていく
壁にはたくさんのテレビがついていて
音もなく瞬きながら
世界中のつらいニュースを
さか ....
からからと 庭の枯れ葉は 風に舞い 集まってゆく 雪のように
チチチチと 小鳥は木の実 ついばんで 眺めるわたし 息をひそめて
ベランダに 小さな服が 並んでいる 冬の陽射 ....
プラスチックのじょうぎをカタカタいわせながら
後ろから走ってきたから
こうちゃんだとすぐにわかったけど
ふりむかないでそのまま歩いた
そしたらドーンと背中に勢いよくぶつかってきた
「どーん」 ....
いつだってたのしかった
かなしかった
ないてばかりだった
いつからだろう
できないことをそのままに
何時だって笑ってる
気付いている
誤魔化してばかり
いつからだろう
生きること ....
どこかの
寂れた海岸で
練炭を使って
死んだ人がいた
夜寝床について
一日を振り返る
ほとぼりを使って
その人を
火葬する
根を
泥土と
苔を使って ....
ふわふわとか
たっぷりとか
ふざけるな
切実さが足りない
相応しさとか
ぬくもりとか
真実とか
いい加減にしてくれ
せつないんだよ
コンビニエンスストアの
陳列棚に
....
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