くちばしに
左屋百色
壊れた羅針盤で
/これがこの詩の一行目ではない
壊れた羅針盤で一針一針丁寧に縫い付け
詩人の口を塞ぐ
孤独を売りさばき建てられた黒い城
その地下室で真昼に暗殺された
一羽の青い鳥に対し何を聞かれても
私は答えられない
街に出て
誰も見てはいけない虹をみつけ
躊躇なく消えるまで見続けてやる
私がとべない理由は
鳥のように翼がないからではなく
足もとに過去の詩が絡まっているから
缶詰に閉じ込めた百年前の感情
が破裂して
もう一羽の青い鳥が遠くまでとんで
ゆき
海に反射して水色になって
ゆく
その様を詩に昇華できたなら
私の言葉は百年後に虹となるでしょう
その時は君に見てもらいたい
私は
くちばしに詩をくわえた水色の鳥を暗殺
する為に
詩人名簿を焼いて灰色の空をつくるの
です
私に言葉の在庫が無くなれば
その時はじめて
空をとべる
でもとばない
胸の中はずっと夜
そろそろ君のやり方で
この胸を斜めに斬って下さい
詩も一緒に斬って下さい
/これがこの詩の一行目となる