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{引用=
一、ヘヴンズ・ヒル
枯れることなく
花の咲きみだれても
それは
開くことをしない
閉じられたままの
かなしみの
すそ
風が
つねに優しいならば
怯えるこ ....
雨が降り続く秋の中で
公園のベンチは
誰も腰かけないまま
しっとりと濡れてゆく
何もない無の空間に
わずか一瞬だけ
背もたれにスズメが立ち止まる
雨が降り続く秋の中で
公園のブラン ....
ほんのりあまき内在にひろがり
くうかんのふちに輪舞するはもんを
凍ったひとみでいつまでもながめていた
ひるがえす そのひどくやつれた鋭角に
うらぶれる一閃のかぜ 死といわれるものやら
....
一、 銀色の背中
飯も喰わずに、カピが月ばかり見ているので
座敷に上げて訳を聞くと
長い沈黙のあと
神妙な顔で
片想いなのだという
いったいどこの娘かと問えば
まだ逢ったこと ....
昨日の夜に積もる雪
山も畑も野も川も
どこもかしこも一つ色
朝の光に木の枝が
まばゆく光るこの大地
新たな生が起き上がり
草も若葉も木も枝も
日なた日陰も一つ色
朝に流れるせせらぎ ....
一 琴引浜
さくら貝は、はかないという言葉がお好き
はかないという枕詞がつくものには
とりあえず歌ってみる
それらはかつては量産されたものだが
貝は、そんな厄介なものは持ち合 ....
身分証明書を
と言われて財布を探ったが
パン屋のレシートがぱらりと落ちただけ
カード入れにはブックオフのカードだけ
午後の図書館だった
カウンターのミセスは
住所と名前が記されている ....
そのころ、と言っても今でもそうなんだけど
僕の遊ぶベースは六本木で
ヒマがあるといつも
終電でやってきて始発で帰る日々を送っていて
仕事の知り合いよりもこの街の知り合いのほうが多いとい ....
窓外に
枯れたまま{ルビ俯=うつむ}く
{ルビ向日葵=ひまわり}
夏
辺りを照らす
太陽の花に
振り返っていた人々
秋
{ルビ独=ひと}り汚れ身を{ルビ晒=さら}しな ....
日が沈み
冷めてゆく土
その上を静かに
秋の夜を泳ぐ
月はすでに
凍てついたかのように
冷たい光を
地上へと降り注ぐ
その光を頼りに
秋の海は
風とともに波を起こす
....
しらないものが多すぎて
わたしたちはいつも
上手におぼれる
陽射しとは
なにを探し出すための
あかりだろう
こたえなどわかる筈もなく
求めるわけもなく
わたしたちはいつも
上 ....
十月の
夕刻にしては
あたたかい風が
秋の
冬の
装いを始めた草の
乾いた匂いを運んでくる
霞がかった空は
穏やかな表情で
まだ染まるには早い
青く連なる山々に添う
静か ....
露草がぽつんと畦道に咲いておりました
宇宙まで大きく口を開けていそうな
高く澄み切った空に負けない
素敵な蒼い色
雨にも負けず
風にも負けず
道行く人を
ほっと和ませる可憐なけな ....
本当の暗闇と出会う
それって
なかなか難しい
ひとつひとつの灯火を消しても
寝付けぬ夜に何処より話し声が漏れて
この街の闇は仄かに明るい
本当の暗闇
それは遠い日の感触
胎内にいたとき ....
?.
朝風呂が好きだった
その朝もおまえは
俺たちの小さな家の小さな風呂に
窮屈そうに仰向けになって
顔を沈めて
水の中で
目は見開いて
くちびるが
SEE YOU って
....
一
観葉樹が、かぜに揺れて、嬉しそうに笑いかける。
笑いは葉脈のなかに溶けて、
世界は無言劇に浸る。
映像のように流れる無言の織物。
かぜが、喜劇に飽きるまで、永遠を飽きる ....
手のひらに虫の息
丸い黒曜石の瞳は虚ろ
彼の本分は
飛ぶ事ではなく
鳴ききる事だからか
若草色の翅脈を透かした羽は
すり切れる事もなく
黒い前胸に刻まれた金糸も鮮やかに
腹の手風琴も今 ....
緩やかな曲率で
道は行き止まりまで続いていた
そこより遠い場所を
知らなかったので
墓標はその岬に、と決めていた
漁火の整列する底には
冷たい海流があって
行き止まりの
もっと向こ ....
さみしいと
寄り添うくせがあるので
いつも
ポケットにウサギ
鼻先を
ちょこんと出して
ふさふさの
耳をたたんで
私があまりにも
にこにこしてるので
人は誰でも不思議そうに ....
今宵十五夜の月を
楽しみにしておりましたのに
朝から硝子窓を濡らす雨は
一向に止む気配を見せません
花器に
手折った数本の芒と一枝の萩を
無造作に入れ
恨めしげに外を眺めており ....
*
最近
妻が出来た
嫁を娶ったのではない
わたしは女であるから
正確にいえば
嫁の方から勝手に来たんである
或る夜のことだった
四百円を手にちゃらちゃらさせながら
....
月が消失点のようだ
描かれた風景は
オルゴール、オルゴォル
ピンの抜けたドラムの内側で
漏れる光を、星だと
僕たちはささやきあったね
モルモットの遊具のように
夜空をまわし
時計の ....
眠れる人魚は
海を失ったことを知らない
もつれた後ろ髪は砂になって
青白い街に降り積んだ
水になりながら
瞬きのほかは
宝石の泡に見惚れてた
かげる頬はい ....
タイも
ヒラメも
マグロも
みんないました
白いお皿の上で
おそろいのお刺身でした
海みたい
子が言いました
まだ海を
見たことのない子でした
・
曖昧に舌を含んで
ただ笑った
あなたの考えている事は解らないと
言われたから
悲しむだけの隙間も無くして
ただ笑った
薬は二週間分出たから良かった
・
フォークを持つと
人 ....
伴わない安寧を
手繰り寄せるように呼吸をする
いつも何処か背中越しに
冬の匂いを感じているのは
私が冬生まれだからだろうか
それとももっと違う何かがあるのか
雨降りの音を追って
傘を ....
絡みつく蛇たちの螺旋の夜
巧みに縺れあう虚無と/いのち
淫らな匂いのする、耀う肌の粘りに
虹色の鱗は冴ゆる星の瞬きを映す
やがて消失する碧暗い空にむかって
聳える漆黒の怪奇な木々は
だらし ....
さまざまなかたちの痛みが
頭の左すみにころがり
右目のまわりの暗がりには
花に似た背のかげろうがいる
すいと平行に引かれた線の
変わりつづける永ささえ
なにげないものに ....
思わず声にしてしまった
ことばよりも
言い出せなかった
ことばの
内に秘められた真実
レンガを幾つも積み重ね
ひとは誰でも
その真実をこころに閉ざしてしまう
日々の暮らしと
日々の思 ....
ぼくにはわからない
明日の風がどこにむかうのか
ぼくにはわからない
自分がどこに行けばいいのか
ぼくにはわからない
あなたに何を語ればいいのか…
でも
....
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