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また、君を待っていたいから
静かに爪を切るたびに
振り分けられる私を想う
君が生まれる
空をもう一度構築したい、から
また少しの嘘を零した
細分化された過去が、崩れて
いくつかの今に私が ....
春の陽射しに
紅い花びらが開いてゆく
美しさはあまりに{ルビ脆=もろ}く
我がものとして抱き寄せられずに
私は長い間眺めていた
今まで「手に入れたもの」はあったろうか
遠い真夏 ....
明日を小指で弾いたら
きれいな繻子の音がする
右にあるのは菊模様
金や黄色や紅色の
左にあるのは薔薇模様
薄桃銀鼠ターコイズ
鶴や鶯飛び立って
あとから鷹も追いかける
....
おとぎ話に現れるような青いガラス張り、きらきらと光る円形の家、艶やかな肉体を生きる双子の姉妹が住んでいる。空気が呼吸している肌を一枚脱ぎ捨てる、瑞々しい体液の雫を垂らす木々、凍る岩。双子の姉妹が暗闇の ....
冬になると
海水が凍って
氷の白い泥が海に溜まる
その中で薄くはった
産まれたばかりの流氷は
波の寝返りにあっさりと壊され
お互いを削りあい
まるで蓮の葉のような
角の取れた丸い薄い氷 ....
君があの子の話をする度に
僕の胸の奥底に一輪
黄色い薔薇が咲く
全て君に
摘み取って欲しいと
思うけれど
云える筈もない
咲き乱れる
薔薇の香りで
噎せ返りそうだ
今宵も
....
もし愛に辿り着けたら
まずその中の闇を探り当て
もぐり込んで
しばらくは眠ってしまおう
夜道を散歩しながら
人知れぬ夢を呟くと
胸に溢れる想いは
目の前の坂道を昇り
仰いだ頭上には
只 白い月が
雲間から地上の私を見ていた
半年前
オートバイに乗ったお爺さん ....
文字なくたって
言葉なくたって
作るのよ
詩を
それは心臓の
真隣にぶらさがる
果実
皮膚の内側に
腫れている
熱くて
痛くて
しょうがないんだ ....
先触れに 春雷 轟く
恋しうて はな おもふ
切なくて 千々に 乱れる
憐れんで 憶い とける
混じりあいて とき みちる
....
あまくたゆたう
切ない香りは
匂いを纏い
瞼を閉じて
春の記憶を
捲ってみれば
ぼんやりと
聞こえてくるのは
あなたの足音でした
あの細い小路を
覚えているかしら
先いく背中を追って
ふたつめ ....
浴衣を着たこどもなのでした
まだ菜種梅雨も過ぎぬというのに
二本の鉛筆のように突き出た裸足は
春泥にまみれているのでした
これあげる
こどもはあかるい声で言いました
小さな手に握られて ....
ねえ、ブランシュ、
あのとき
あなたが越えようとしていたものがなんだったか
今のわたしにはもう
それを知る手だてもないけれど
あなたはいつも わたしの
理解の範疇をこえて
日常のただしさ ....
今日が、一日になる
間に合わせの爪先を
朝焼けの海に潜らせる
寝息を、街は敏感に拾い上げていく
遠く聞こえる海鳴りのようだ
*
ただいまやおかえり、よりも
届いて ....
長い洗濯をしていると
パンツもシャツもくつ下も
きれいになって
空を飛べるようになる
洗濯の匂いが土にしみ込み
そして全ての建築物にしみ込み
青い空で見えない
全ての恒星にしみ込んで ....
ご覧なさい
桜の花が満開じゃないの
ねえ
ご覧なさい
誰もが浮かれて
踊るように笑っているじゃないの
ねえ
花見だか何だか知らないけれど
生きている人って
気楽なものじゃない ....
団地の掲示板に
吊り下げられたままの
忘れ物の手袋
歩道に
転がったままの
棄てられた長靴
{ルビ棚=たな}に放りこまれたまま
ガラスケースの中に座っている
うす汚れた ....
{ルビ朱=あか}くて小さなさかなの
息のように
そっと触れた
てのひらから
あなたを呼吸する
ほんの少し
の温もりが意識を
わたしに繋ぎ止め
る、わたしの体温
....
大きな口を開けたワニが
天気の真似をして
すっかり晴れわたってる
魚の数匹は遠ざかり続け
それでもまだ
誰の指にも泳ぎつかない
沢山の羊を乱雑に並べて
さて、どれが正解で ....
今日もわたしはあなたに貰った
たった100円ぽっちのボールペンで
無限大の愛を込めた手紙を
あなたに向けてしたためます
原価100円、無限大の恋なんです。
どうにかなるさ、とか
ノートの隙間に落していた気がする
過ぎたことを半分にして
明日の方へ送りたい
繰越し続けてあぶれた一日は
最後はどこへ行くのだろう
上手く折り返せない水曜日に
....
春が
はるが
傘の水滴に溶けて
声も密やに
幼いまるみの春の子に
子守唄を聴かせる
まだ固く木肌の一部の様子で
繚乱、を隠した蕾は
雨にまどろみ
陽射しに背 ....
体じゅう
寒気が
激しい朝
詩がとどく
さむいのに
雨なのに
書いたひとの気持ちが
きれいな色が
入り混じって
ここまで
とどく
チョコレートを
私はスペインの
よく冷え ....
わたしは、この震える指先のなかを流れる満たされない血液の重さを推し量っていた。わずかに眼の中に残る記憶を辿り、心房が包む夜空に対峙して、透明な糸で繋がる星を撫ぜて、痛みを発する疼きの場所を見つけて ....
夜が来る
月があってもなくても
私は鳴く
誰にも聞こえない声で
私にも聞こえない声で
私という存在の途切れ目 に
夜ごと咲く花があるからだ
けれど私はその花に
触れることはおろか
....
春風よ
月の優しさを知る
アーモンドの
ほころんだ花びらを そっと波間にうかべ
遠い異国へ 運んでおくれ
涙色の伝説
その震える肩を包んでおくれ
歌えよ 鳥よ
闇をつらぬ ....
物事の本質という名の傍若無人が
背後にするりと忍び寄る
斬り付けられる意識
覚醒したそれは
黒い影を纏って立ち上がる
踏み出した足は
敷き詰められた石を穿つ ....
凍えるだけ渇いて
鈴の音も響かせず
降り積もる雪の夕暮れ
雲母の肌が 幾重にもはがれていくのです
許されてしまう小さな嘘 をつくたびに
セロファンの音を立てたりはしないのです
涙の ....
ももの花
軽い衣に春染めて
緑の枝葉も知らぬうち
蕾のままに頬はほころぶ
絢爛のぼんぼりもなく
錦糸の衣も纏わずに
春の節句の雛つがい
ももいろの
笑みに吹かれて
ひな祭り
....
{ルビ濁=にご}った泡水が浅く流れるどぶ川に
汚れたぼろぞうきんが一枚
くしゃっと丸まったまま{ルビ棄=す}てられていた
ある時は
春の日が射す暖かい路上を
恋人に会いにゆく青年の ....
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