すべてのおすすめ
思惟のふちから
言葉が崩落してゆくとき
僕は君の夜を抱き
君は僕の夜を抱く
その暗い球体の中に
守るべきすべてが
あるかのように
たとえばそこに
紅い薔薇
暗さの中では
も ....
青く凍結する冬のそら
しずか独り、浜辺に立つ
打ち寄せるイメージの波
浮かぶ波間の混沌は
思考の光に照射され
弾む言ノ葉、力動の渦
境界を溶かし、大地を洗う
....
寒さと賑やかさが混然とした師走だった
子どもたちは家の手伝いを請け負う
障子に貼られた紙をビリビリに破ることほど
心躍るものはなかった
平素子どもたちは無自覚に平凡で暇だったから
洗われて ....
「紛いもの」
凪の夜
寒空が黒いインク
こぼした水面、すべりゆく
遊覧船は
まるで冥界の古城
「中古マンション」
三階で 物干し ....
春風が優しく過ぎてゆく銀杏並木の散歩道
木陰で静かにスケッチをしていた私に
さりげなく声をかけてくれました
見えないバリアを被っているつもりだったのに
あなた ....
朝が昼になる瞬間に
日向と日陰の境目で生まれた私は
市街地と砂漠のきわで育った
砂漠ではたくさんの流れ星を見ることができる
気をつけて
と言われて
気をつける子どもはいない
夜に裸足 ....
美辞麗句を
書き募る
海の匂いドヨメキ、嗅ぎ聴き入りながら
尚も美辞麗句書き募る
オマエ、ただ言葉に遊ばれ嘲笑られ
*
眠りの底、
アナタは何を夢観るの?
眠り ....
酒房に足をふみ入れたとたん
行方の知れなかった心が
戻って来た
日頃 胸の底に巣喰う黒いものが
熱っぽく溶けて肉にしみ入ってくる
私に降る 師走の雨
....
世界を終わらせる旋律を歌う鳥が
つみびとたちの屍の山をこえていく
その日の朝
わたしたちは一様に不幸である
朽ち果てた限界集落の
かつてバス停であった場所で
ほら
あれをごらんなさい
....
子音と母音の
造形と響きに
宿る神々、
意味は未だ無い
ただ聴き入るのみ
「初めに、ことばがあった」*
意味伝達手段以前遥か
ことばに宿る神々の現、
造形と響きに
「ことばは ....
椅子の気配
水路の抜け殻は
朝屑になる
地図だけの
詰将棋を終えて
歩道の色に
傘を落とした
外周
その抜け道
地下鉄に乗るよ
その言葉で
撤去される団地
等間隔の ....
天竺の行者は言った
無量大数よりも大きな数字を
ガンジスの砂を感じながら
無数を解いた
今もスーパーコンピュータで円周率を計算しているが
果ては無い
無駄なのだ
この宇宙の果てに ....
スマホが鳴って驚く
それくらい何もなくて
ひどくあたたかい
十二月の雨
窓際に並べた
不安の広口瓶の
埃をはらえば
鋭角な触覚が
のたうちながら蠢いていた
干からびた私は
十二 ....
人は原初からあらゆるものを食べていた
等分に命を屠り
そして天に感謝と畏敬を捧げた
或る人らは動物性蛋白質は採らないと叫び
植物には痛みは無いと
その生命を己の肉体に採り込む
欧米 ....
覚醒と昏睡のはざまでウオッカをあおった
深海にゆらり ゆらゆらと漆黒を彷徨いながら
エルドラドを求めて沈没船の古地図を探した
否… それは既に此処に在る
言霊の山だ!
ナンバーワンを ....
平安時代の
日本の人、
魂や霊
当たり前のことと
捉えていた、と云う。
憧る、そんな時流の最中に在り
憧れる、という主観的意味を離れ超え
あくまで客観性を持ち魂の肉から離れる ....
中華料理を食べそこねた兄が
急行列車で帰ってくる
僕はまだプールの水底で
習字の練習をしている
兄は僕より背が高く
顔も様子も似てはいないけれど
よく双子と間違われた
習字のはら ....
ことしは喪中はがきが多い
きょう、八通目が届いた
古い友人
映さん、七三才
わたしの姉と同い年なのに
映さんの本名は、恵子だという
知らなかった
詩友とはペンネームでのお付き合いだか ....
今夜は独りウオッカをあおっている
他に客はいない
棚に飾られた真鍮の潜水ヘルメットを眺めながら
海の歌をくちずさむ
ララル ラララルララ~ ラララ…
何時だったか
黒いドレスに赤い ....
冬の凍空
水晶の塊となり
浮かんでいる
難破した砕氷船が沈んで
空のクレヴァスに紡がれる
大きな心の屈曲を抱え
帰港すべき場所を探す
空のクレヴァス突き抜け
漆黒の宇宙を見出すとき ....
些細な思い出に別れを告げて何かをはじめるときは吉
ひとりで飲み屋に入る今日の幸せが
奴さんだったりトマトさんだったり
糠漬け様だったり
ラビのパンの話を覚えている
僕もポケットに
ときどきにぎっている気持ちがある ....
うっすら片手から放った蝶の
宙に舞う
軽やかな息を継ぎ銀箔の輝き
陽光浴び
ささやか咲き誇る路傍の草花
から草花へ
蝶の軌跡 柔ら鋭く速やかに
〈ありがとう〉
言ノ葉 ....
はじまりのおしまいのはじまりのおしまいのは(じ)まりのゆくえ、わかりませんとか云わないで
ゆくえ稜線のかなたまで染まってゆく、葉緑体のベンゼン環おしまいのは(じ)まりへ
まりみたいな月はど ....
東の風が吹いていた
醤油工場から醪(もろみ)の匂いが漂う路地
ぼくはスニーカーの紐を堅く締め直し
重いザックを背負い直した
遠くに行ってしまう前に白い灯台を訪れたかったのだ
乗客は三人だ ....
師走は
わざわざおいでくださった
昼下の陽に
茶の用意だけ、が塩梅です春へ
師走は何かと気ぜわしく
あれこれすることが多いから甘めの紅茶を一杯飲んで
一息つきましょう
正月に失礼がな ....
ほつれていくテレビに
故郷が映った
見慣れた橋や川面の姿
人も映っているけれど
ほつれていて
よくわからなかった
会釈くらいはしたかもしれない
そう思うと
雨の音が聞こえた
....
慣れし故郷を放たれて夢に楽土求めたり
一度低く
故郷を放たれて楽土求めたり
一度低く
を、放たれ、土たり
いちど
を、土求めて
オクターブ
故郷求めたり
胸の奥底深く湧き水の波紋 ....
静かな夜に独り酒をあおり
訳のわからぬ経を読み
華を散らし
伽羅を焚いた
想い人に手向ける夜だ
今となっては届かない俺の声は夜空に消えてゆく
あの時
こうあれば
ああすれば良かった ....
寒風、
常緑樹の生垣が吐く
銀白と やがて溶け
やさしげに揺れる
山茶花
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