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川を見て我思う
その源の遠さを
時を隔てゝ巡り会う偶然と
この足で立つ大地の必然
水面の耀きは一瞬たりともとゞまらず
似て非なる形を繰り返す
遠くの雨の記憶
人々が流す汗や涙の記 ....
みかん畑の夢を
あなたもいつかきっと見るでしょう
深い緑に
橙色が星のようです
母なる木の枝に包まれて
静かに眠るみかんの実は
いつか生まれた場所を遠く離れ
めぐり逢った人に必ず ....
墓の裏に回る
墓碑銘
一文字ずつ読み取る
故人も知らぬ名前の羅列に
隔たりの強き世界の境
墓の裏に回る
....
静かなる心の内の
乱れ始める波立てゝ
具象の宙 落ちる雫の色
手垢のよくついた鈍い色彩
かき立たされた沈黙の縁に
芽生えの音にさえ敏感な
今はひと休みに向かいつ ....
津軽を旅したのは
何年もの前の夏のことでした
闇の中 車を走らせて
道路が終わる場所まで
行ってみたかった
津軽を旅したのは
それが最後だったかも知れない
....
偉人にだって虫歯があるように
僕にだって完全な物欲が存在し
高慢ちきな文人の腹の中に
どこか崇高で見習うべきところもある
偉人の虫歯が疼く時
偉人の脳波に乱れが生ずる ....
あいとくちにするのがてれくさいから
いつでもぼくはくちぶえをふく
のんびり のほゝんと
うたをかぜにのせて
たしかなきもちがとんでいく
あいとくちにするのがてれくさいけど
....
夜が泣いている時
その言葉は
口にしないで
空に星がない時
無理に上を向いて
その歌を歌わないで
海に船が見えない時
そんなに遠くへ
思いを馳せないで
....
風が遊んでいた
波の音はかき消され
鉄塔にからみつくような電線は
歌を歌っていた
一条の光が闇を貫き
遠く海を照らしている
灯台のもと 風が遊んでいた
空が目を ....