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石榴は血の味 密の味
月の無い夜に
女を食べた、あの木製の詩人は
熟れた石榴を 銜えさせて
美味いだろうと、夜風に訊いた
共犯だぁね 、
硬花の指先はわたしの唇に触れ
睦言のように
....
「あなたはね。
卵から生まれたの。
それはそれは痛くって、
とっても大変だったのよ。」
それが母の口癖だった。
嬉しいことがあったときも、
悲しいこと ....
空は啼いているのだろう
風は狂いはじめている
雪の華はその美形を
とどめることも叶わずに
ただ白い塊と成り果てる
清き水の流れさえも
怒涛に変えて
白鳥は真白の吹雪に ....
縦に
横に
斜めに
そして滅茶苦茶に
発つ人
切りつける遮断機
渡す鉄橋、区切る線路
正確な手すり、錯綜する枯れ枝
途切れ続ける白線、刺さり続ける鉄塔
罅割れ ....
甘くない珈琲を
手の中で
大事そうにしていた
猫舌だと言って
大事そうにずっと
両手の中で
十二月に降る雪のように
ま ....
玄関に立っていたのは畳だった
今日は暑いですね
そう言うわりには
畳なので汗ひとつかいてなかった
畳は座敷に上がりこむと座し
良い畳ですね、と手で撫でている
それからいくつかの世間話を ....
満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように
蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと ....
君からもらった
たった一通の封筒は
古びて黄色く灼けてしまいました
その中に大切に抱かれた
数枚の便箋も
古びて黄色く灼けてしまいました
今にも崩れそうな酸性紙の上
ボールペンの ....
偉人にだって虫歯があるように
僕にだって完全な物欲が存在し
高慢ちきな文人の腹の中に
どこか崇高で見習うべきところもある
偉人の虫歯が疼く時
偉人の脳波に乱れが生ずる ....
雪ばかり融けずにいる
針が突き刺したような
星夜の暗闇が恐ろしいのです
あまたを溶かすはずの暗闇が
かすかな影のいいわけを
裏切るのです
ひどく凍らせる結晶に
張り付いた切り絵を ....
公園へと続く夜道の街灯に照らされて
{ルビ百日紅=さるすべり}の木は裸で独り立っていた
枝々に咲かせた無数の桃色の花びらを
過ぎ去った夏に{ルビ葬=ほうむ}り
樹皮を磨く北風に じっと口を ....
隣の白蛇が、
皮を脱ぐ。
彼は失恋すると、
いつも絶食して、
いつも脱皮する。
センチメンタルなのだ。
脱皮する少し前から、
蛇の目は白濁しはじめる。 ....
ガマの穂が天に向かい綿に覆われて立っている
安らかな秋
まるで別世界のことのように
自分のことを思う
帰りたいと願う
時間を戻してくれと願う
叶わない願い
わたしの歩く道から
ガマの穂 ....
紫色の空がなめらかに
この地上を染め出せば
深い森の中で
梟がゆっくりと目を覚まし
豊かな知恵を含んだ鳴き声で
街に向かってささやく
ビールで染まる街 ....
しゃらしゃらと
粉雪が風に渡る音
鈴の音も高らかに
朗らかな笑い声が
こだまする
雪山が呼んでいる
動物のアシアト てんてんてんと
梢からがさっと雪帽子が落ちる音
真っ白な ....
寂しがりやに 性は重く
身体に深く響く 哀しみ
融合に胸を躍らせ
光を崇めながら
闇に駆けていく
美しいあの人
空しく延びた手
受けとめる胸は
塞がれてお ....
芽、夏の始まる頃
なだらかに繁茂し
雨戸のような
古い匂いのする部屋
少年は水棲生物の絵を描き
鉛筆の芯はそのために
おられ続けている
逝くもののために祈り
生まれるもののために祈る
....
夜行性の言葉が羽ばたいていた
子どもだけがそれをじっとみていた
凍えた空に花が貼りついた
月は存在が伝言だった
震えた縫い針の鉄橋が
銀河のデゴイチの受け入れを許可した
暖かい ....
一.
夜
と
おなじ速度で落下する
きみと
きみ
の 心中しようか
亡命 なら
考えたかもしれない
二.
きみに似ているもの
・深夜のガソ ....
彩りが白く染められ
輝きが覆い尽くす
秋に重ねるから美しい
君の
季節に染まったほおに
想いが重なれば
雪景色のように
清らかに美しいだろうか
それとも
ただ ....
ギタラ ギタラと鳴り響く
緊急 住民集会 泰山木を撃て
の声
怖い小父さん
舟が出る
乞食の小母さん
骨しゃぶる
北から来た娘
爪を光らせ
恥を塗る 木
北風
....
聞き慣れぬメロディーが
不意に耳を訪れ
きみのケータイを発見せり
外出先で気付いたろうか
今の電話は急用かな
届けてほしいと言うだろか
どうしてくれよう
白いフレームが
こっち ....
あいとくちにするのがてれくさいから
いつでもぼくはくちぶえをふく
のんびり のほゝんと
うたをかぜにのせて
たしかなきもちがとんでいく
あいとくちにするのがてれくさいけど
....
目には見えない「現実の壁」に敗北して
言葉を失いしばらく立ち尽くしていた僕の背中は
やがて青空からの{ルビ息吹=いぶき}に押されて
いつのまに
古時計の長針と短針がゆったりと逆回転する
不思 ....
繋いだ手の感触を
消してしまえずに
たとえば、今
この空のあの雲
と 私の指が示しても
あの人にはもう
届かないでしょう
尾とひれのついた
魚の形の 群れが
泳いでい ....
花の名前を知らない僕は
きれいな花を見つけても
誰にも教えてあげられない
植物図鑑を一冊買って
花の名前を覚えよう
いつ芽が出て
いつ花が咲くのか覚えよう
小さな庭に種をまい ....
手と手が触れ合わないだけの理由が
夥しくて
冬は、一層
失いやすいものから失ってゆく
自然な成り行きだと、して
ほら
はらはら
葉がアスファルトへ ....
目がさめると
世界は半透明だった
そうか、ゆうべ
基地をつくったのだ
求めていた体温に
ほどちかいぬるさと
液体でも固体でもない感覚の
その場所で
眠ることは
ひどく ここ ....
白い息がのぼる朝
氷の指の冷たさよ
紅の蕾も頑なに
視線のゆく先は
開くあしたと
散るあした
花であるなら
開けと願い
花であるから
終りも知る
....
朝になると
静かにそれを繰り返す屋根の波を
勝手に世界と呼んでいた
語る言葉はどこかに置き忘れて
少し笑う背中で世界に潜り込んでいく
息を吸えば吸うほど
体は軽くなっていくはずで
両 ....
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