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狂った時計を森の奥深く
猫の眼時計店に持って行った
ギィーと扉を開けた
こんにちは… 時計を直して欲しいのですが
店主は黙って文字盤を確かめた
これは狂ってはいないよ
ほら 見 ....
子供たち、走り出て来る
無数無数、黄色い帽子揺れ
アスファルトで駆けっこだ
次から次にわくわくと
ダンダンダンダン
今に皆太陽へと昇るんだね
ああ命のときめき時の煌めき
巨きな花も ....
花よ咲け
満月の夜に
いさぎよく
花びらを降らせよ
旅ゆく人の{ルビ褥=しとね}になれ
初出 日本WEB詩人会 2024/0 ....
ある日、あなたの背中に
窓があるのを見つけた
開けてみると
普通に外の景色があった
眩しければ鳥になるといいよ
とあなたが言うので
わたしは鳥になって
空へと飛びたつしかなかった ....
南天に座したる青き狼の星よ
我に力を与え給へ
高鳴る心と引き換えに
天を動かす力を
海を裂く力を
大地を砕く力を
愛するものを守らんとする
命の鼓動と引き換えに
我に力を与 ....
恋は太く短く
愛は細く長い
恋は甘酸っぱいかい
愛は重く苦いかい
それを知りたくて
ぼくたちは生きてきた
わかりたくて
わからなくて
ふたり暮らしたね
何時の日かぼくが息 ....
生の源に
死ノ横たわり
死の源に
生ノ横たわり
それら貫き蠢く力動ノ在り
南側から
暖ったかい陽射し
北側から
吹きつける冷たい風
それら均衡の内 ....
窓から夜明けがはみ出してくる
それを待ち望んでいたのかも
もう忘れてしまった頃
あるいはいつしかむしろ
望むようになっていたのではないか
夜が終わらないこと を
夜が長すぎたから
....
硝子の抜けた窓を透け
川に浮かべた傘いっぱいに
夕ぐれの街が溢れる時間
暮れる光のにおいに
昨日と明日が
すれ違う今が翳りとなってひそみ
貨車が黙って
曳かれてゆく不安で
すぐに下 ....
公園の水面に睡蓮が咲いている
ウスバカゲロウがふわりふわりと飛んでいた
ときおり
魚がポチャリと水面を跳ねる
貴婦人が日傘をさして橋の上から
池の睡蓮を眺めていた
ぼくはベンチ ....
夢の時間も砂嵐のなかに消えてしまうだろう
そんなテレビジョンの懐いでのなかで
光りになれなかったひとたちと
一緒の場所で出遭ったのは
真昼の淡い幻想だった
いまだほんものの喜びが ....
かみなりだ
あれはかみなりだ
あぁ、こわい
あんなにぶ厚い藍を割れるのは
それだけで神だ
鳴っている、なって白も黒も反転し
紙の鳥が燃えくすぐられる
犬は動転し
きゃっ、という気に ....
紙が細やかに振動している
撥水性はない
雫が落ちる
水滴は容易に染み込むが
少し弾き出される
風が吹く
枝垂れ柳よりも軽く碧い風
少しの水の重みと粘り気が
紙を飛ばさせない
まだ ....
少年は命の秘密が知りたくて
東の岬にいる賢人を訪ねた
賢人は灯台のレンズを丁寧に磨いていた
あの… ぼくは命の秘密が知りたくて参りました
ほう 命の秘密とな…
この世のすべての現 ....
涙の数だけ弱くなります
傷ついた分だけ狂暴になります
そうでしょう
それが人の性分
名もなき花はない
もし名前がなかったら
名前をつけてやる
大発見だ
しじまという名の少女がいた
「しじまです」という自己紹介の後の沈黙に慣れている顔だった
この名は代々受け継がれていると言った
姓ではなく名の力を継ぐのだと
数年後
高名な画家が彼女をモ ....
生まれてしまった歓びと
生まれてしまった悲しみに
風に吹かれて
杖を探りながら
琵琶を抱え
漂泊の旅は果てしない
春には花を愛でて歌い
夏には蝉しぐれを歌い
秋には舞散る葉を歌 ....
ガーベラの花咲き誇る
沈黙の内に真紅の歓び
夜 明ける瞬間の如く、
澄み渡り漲る
チカラ 湧く沸くと
なんにも考えず
ただ噛み砕き呑み込む
意識の ....
だれのものでもない両手で
だれかを傷つける
呼び鈴がおれの耳に
爆発している
やり過ごすことのできない咎に身をふるわせて
やはりだれも
おれを諒解しないというところで
....
ぼくの瞳が濡れているのは
遠い空を眺めていたから
涙なんか流しはしない
大丈夫と言い聞かせ
春の{ルビ詩=うた}を歌おう
どんなに遠く離れていても
心かよわせた日々は忘れない
きみだけを見ているから
大きな虹が蒼穹を渡り
ぼくを呼んでいる
あの虹の向こうへ行けば
きっときみに逢えるから
ぼくは走る! ....
みんな 考えることが
おっくうに なったので
頭を はずして
かわりに 肩の上に
鳥籠をのっけて 歩いてた
鞄を抱えた 背広姿の人も
バス停でバスを待つ 女の人も
みんな 肩から上は ....
いろんな顔たち
現れ互いに語り合う
この夕べに
意識の内で
彼ら彼女ら余りに鮮やか
声の聴こえず
口の動き表情の変化
ああ余りに鮮やか浮き立ち
嬉しそうに哀しそうに穏やかに
しばし語 ....
誰もいなくなった公園で
夕映えに照らされ
空に浮かぶ
白木蓮
小鳥のように歌っているよ
首の無い男が梨を皮ごと食べていた
「坊… 食べるか?」と袋を差し出した
ぼくは怖くなって逃げだした
八百屋の留吉さんは首を掲げる写真を人に見せる
どうやら首の無い男は留吉さんに用があるようだっ ....
陽が昇り始めたら
おはよう。
月が頬笑んだら
おやすみ。
そんな言葉に優しく抱かれ
※
生きてこそ
苦しみはあり
歓びもある
....
おしまな!
(そうだね、お日様
(今日は良い天気だね
おじゃたまくし!
(ちいさな春の子
(おまえと同じ
(三月生まれかもしれないな
斜めに陽が差し込むと
ぼくたちも斜めになってたね
....
息するイメージの数々、
裸木の枝群れ陰影に消え
死の影の谷をいく光輪、
断崖絶壁の底迄眼前にし見据え
虚無の相貌に恐怖することなく
真夏乾いた庭に舞った狂女の如く、
自ら ....
山の頂上から地上を眺めるように
時には
死から生を眺める視点も必要であろう
あと幾日こうやって夫婦で
ふつうに暮らしていけるのだろうか
命の砂は休みなく流れ落ちている
今朝は
春の陽光の ....
君の肩幅に
まだ幼い
春の光
僕は壊れた掌を
修理しながら
真新しい
君の名前を
口遊む
(初出 R6.3.15 日本WEB詩人会)
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