水に浮かんだ子のまわりに
鳥のように大きな若葉が
一枚 一枚と落ちてくる
子は枝を噛む風を見つめる
見ぬふりをする空を見つめる
黒い衣 黒い犬
黒い土の上に ....
一回でいいから
ビー玉をとかしてみたい
るりいろの
そらいろの
あのビー玉
やら
このビー玉
なんかを
そしたらきっと
きれいなかたまりができるよ
あのひとの
涙のレプリカにでも ....
わたしはいつも
あの枝のよこをとおるよ
山下さんちとみどりちゃんちの間の
何さんちかわからないおうちの枝
ほんとうはとおりたくないけど
通学路だからしょうがないや
近道してタマの前をと ....
がんじがらめのぼくは
今日もきみに会いにゆけない
なんてったってがんじがらめだからね
ゆけるはずがないのさ
最初はかなしばりかとも思ったんだけどね
ちがったみたい
かなしばりってどんなもの ....
たくさんの旗
白黒の街
ベランダの雨
白黒の街
空を撲つ音
白黒の街
窓に映る陽
白黒の街
通りは祭
白黒の街
みんなを連れて
白黒の街
消えてなくなる
白黒の街
....
朝もやのなかで
あなたの顔をみています
あなたが入れてくださった
オレンジペコーのお茶をのみながら
庭の
ねこやなぎをみているふりをして
横目で
あなたの顔をみています
雪が
ふって ....
き ん い ろ の 睫 を濡らす 天使のうたう歌は
い ろ に はあらわすことができない
ち い さ な 器から漏れる 闇も光も
溢れて溢れるまま か ら っ ぽ になるまで
....
真っ白な画用紙の
その真ん中に
僕は
しま
と書いた
画用紙の海で遭難した船乗りが
泳ぎ疲れないように
ある日、画用紙の海で遭難した僕は
後悔することになる
....
ひとりひとりの背に棲むものが
夜更けに互いを呼びあっている
見えないものの通り道に立ち
腕をひろげ 聴いている
夜の光の下 揺るぎないもの
幾つもの影のなか
ひとりきりのもの
....
わ みみい ぷぷりんさ
みしなら もそで ぱる はふりもっこ
みんさら もへなへきから みんそうと?
もりさ みりみり なぐじゃりよ
むっとほいまな りゅんないで なぐじゃりん?
な ....
病院でリハビリの担当医がもっと歩かないと駄目だという
せめて一日四〇分は連続して歩けという
テストの結果あなたは潜在体力に比べ現実体力が劣るから
このままでいくとあと十年で歩けなくなりますよ
....
感じない掌の上に
鳴かない鳥が
人のように瞼を閉じる
冷たい雨の降る
コンクリートの上で
静かに眠りにつく
戯れるように
温度を残して ....
よるのみちかけるはだしでわけもなくかなしみのこえひびいていたとて
子の刻の夜はいっそう暗かろう紫色に月がほほえむ
くつしたのなぜかかかと破れたりだから今日は会えません
じっくりと愛してくれるわけ ....
いらっしゃい
なんにしましょ
あいびきにく
ください
あのひとと
あいびきしたいので
あいびきにくで
あいびきハンバーグを
つくるゆえ
おともだちに
ばかにされても
....
つんつるてんのお着物を
どうか着せてくださいな
やまいもなんかすってないで
どうか着せてくださいな
ゆめはもうきえたけど
あなたはまだいらっしゃるので
つんつるてんのお着物を
どうか ....
小さいうさぎ小屋には
にんじんのはし
と
きゃべつのしん
と
まるごとのりんごが
あったよ
まるごとのりんごはよくうれて
とてもおいしそうだったよ
まるごとのりんごには
つめたい ....
涙ひとつぶん
あなたに
私の叫びは届かない
いつもの私でないと
気づいていながら
あなたは
何があったかさえ
涙ひとつぶん
わからない
雨が降ってばかりの午後の終わりになって
雨が止んでばかりであること、感づいた
数億粒の喪失、愕然として足を止めた
ずぶ濡れのアスファルト踏みしめるゴムタイヤ
が群れ行き
音 ....
震える指先が凍りついて
いつか口に含んでも動かなくなったとき
幾度も自分を納得させる言葉を吐いた
私は人より多少不自由なだけ
壊れた右耳は機械の力で補える
動かない指先は動く片手で補える ....
あんちゃん大学出の新人か
ゆくゆくは幹部やな
まあ研修期間は「ご安全に」やな
あ〜
かっこ悪う
そんなピチっとした作業服にするさかい
ちょっと踏ん張っただけでケツが破れてまうねん
ま ....
軋みを撒いては走り去る鉄
遠い悲鳴のように過ぎてゆく
またひとつ助けられない小さなものが
手の甲に重なり 増えてゆく
開こうともせずに開く瞳が
そばにたたずむふた ....
古本屋の女主人は
若くて
美しくて
両の目の間が人より少し離れている
本をめくりながら
チラリとその方を見たりすると
何故自分が生きているのか
時々わからなくなる
歩け
私よ
高い高い 青い 硬い硬い 空に
息も出来ぬほどの銀杏
高い高い 青い 硬い硬い 空へ
撒かれた イエロー
湧く イエロー
破れた イエロー
の 咆哮
....
白の白からはじまる声
ゆるくほどける水の鳥
ひろくとどまる陽の光
町に渦まく影を着せる
散る鳥 生まれる鳥の中心
人と機械の目のなかでさえ
生きた絵のように咲きひらき
....
ほたるになりませんか
と 呟いたひとの目
雪を見つめていた目
私のいない目を
空と空の隔たりを
思い出す
森のすきまを覆う街
道をゆく赤い衣たち
誰かがまいた白い紙
銀の飾り
頬かむり
目にいっぱいの赤
目にいっぱいの赤
階段は鳥
そっと踏みしく
脱ぎかけ ....
右耳に車は聞こえない
左耳に降る金属音
追い抜くたびに空は笑う
切れぎれに拍手は過ぎてゆく
飛び去れ
飛び去れ
ひとりと
ひとりの道
ひとりの自転車の他はみん ....
うなじ、ああ、うなじ
寒々と潔く、美しさを意識していた付け根あたり
いつかの冬に結い上げた髪、が
氷のように動かし難く完全だったから
私、もう髪を伸ばさないだろう、もう結わえたりな ....
青になってはじめての青
目のなかに鳴る金の糸
歌をつなぎ 手をつなぎ
熱い国の衣のように
風を立てる輪の踊り
雲を混ぜる手の踊り
遠い水に火を散らし
遠いふるえのした ....
ひとつの落雷のはじまりと終わりに
すべての線路がはばたいては消える
火のような虹が
幾つも幾つも噴き上がる
ふところの鍵が重い夜
出会いがしらの火花の ....
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