枝から枝へ
したたる雨のむこうに
遠く島が浮かんでいる
曇が海をすぎてゆく
光が枝を照らしている
雨はひと粒ずつ消えてゆく
ゆっくりと目覚めるひとを見つめること ....
家の近くに 新しい街灯がついて
それは
擦りガラス越しに見ると
まるで
満月のように明るかったので
気がついたのだけれど
この町には
街灯がたくさんつい ....
泣かないで
僕が悪いなら
出て行くから
泣かないで
僕は
人の君の人生の邪魔をしたくなかったんだ
好きだという気持ちだけで
突っ走ってしまった
あの時は ....
おやすみなさい
蒼く輝く星
おやすみなさい
オレンジ色に光る月
おやすみなさい
この
果てしない夜空の下の
どこかにいる君
君は暖かいベットで
良 ....
ぼんやりとした広い場所のあちこちに
色 数 かたちを変えながら
光が点滅しつづけていて
指先にしか届かないくらいの
かすかな熱を放っている
捕らえようとひらかれた
片 ....
水が流れている
頭の上
1メートルぐらい上を
そんな気がしている
水は澄んでいる
幸せそうに
順調に
私が立ち止まっていることには
関係なく流れている
罪のない顔をして
流 ....
人の指と
繋がり忘れた指に
連なる透明巾着の紐は食い込まず
わたし
一寸金魚の軽さを恨んだ
水の純でわたしを責めた
駆け出すしかなかった、ある夏の夜
透明巾着の、同じ ....
指でかきあつめた空を
誰かが道ばたで食べている
遠い指の跡を見上げながら
傾いだ光ばかりが降り立つ
目の前にのびる一本道は
どこにもつながっていないように見える
....
焦土をさまよう鳥が
音に出会い そこに住んだ
双つの枯れ木が立っていた
緑は墓から来て
どこまでも薄く
地平に向かった
生まれるものはなく
来るものだけ ....
階段を降りると
昨日よりふかふかしていて
昔のおじいさんの背中を踏んづけているような
申し訳ない気持ちでいっぱいになる
急いで二階からエレベーターに乗り
皆に白い目でにらまれるけど
....
わるいゆめを何度も見たい
何度も
何度でも
口から血を吐き
股間から血を吹き
血じゃないものも吹き
わたしは裏返る
そんな
わるいゆめ
を
わたしは
わるいゆめが好き
それ ....
どうしようかと
暮れている一日
些細な段差に躓いてみたり
心の縁を爪弾いてみたり
火の上で
ゆれるやかんに
お日様が降りていく
じゅっと
音を立てて
沈んで落ちていく
....
先生を探しています
親のでもなく 夫婦のでもない
友のでもなく 隣人のでもない
わたしを愛してくれる先生です
誰にも他にも
眼差しを向けず
そらさず
わた ....
あばら骨を浮き立たせたまま
空はどこへ埋まろうとするのか
墓地の土は硬すぎるのに
操車場の跡は狭すぎるのに
まわりながら燃えあがるかたちを
位置も時間も持たないものが
....
いつもいつも同じ場所で
同じ音とすれちがう
同じ夜の
同じ時間に
小さく横に弾む音が
沈む星を捕らえては
右と左をくりかえす
光の歩幅をくりかえす
ひろ ....
わたしは
そのうち猫が飼いたいのですが
あの人は 寂しがりやなので
犬がほしいと言ったのです
わたしは 寂しい家がすきなので
犬がいる生活は
気持ちが散漫です
....
あのときはあのひとが
いいひとにみられるためにわざとおとなぶっているとおもった
たぶんいっしょうけんめいじぶんをまもっていただけなんだ
だれがみてもそれなりのしょうさんをえられるようなすがたにな ....
湖に風は無く 輝いて水鏡
シンメトリーなあなたなら
真ん中まで歩いて行けますよ
と 遠く凪が囁いた
波紋 足跡 とろんとろんと表面張力
怖くなって涙を流すなら
左右対称にお願いしま ....
柔らかい絹のような髪
風に遊ばせて 君が笑う
まだうっすらと 幼さをまとった
伸びやかな脚を
揺らしながら
少しかどのある硬そうな膝小僧
二つ並べて 君が笑う
若草のそよぐ野原を ....
君と夜のドライブをするのは
久しぶりだね
さっきから
君は目を伏せて
何か言おうか悩んでいる
僕たちの間に
秘密ができてしまったんだね
なんとなく
気付 ....
俺とお前が
最後に 別れたのは どこだった
「最低だ」「最悪だ」「やってらんねぇ」
お前は 吐き捨てるように言って
きえちまった
今の俺は
「最低」で「最悪」かもしれないが
な ....
夏の玉蜀黍畑が夏に朽ち
私は鼓動を探ってうずくまった
途方も無い大気の、余りの光、余りの熱
玉蜀黍の呼吸には錆びて乾いた砂が混じり始め
焦がれるように焦げながら体躯は空に触れた
....
ラインマーカーでチェックしているうちに
すべてのことが大切に思えてくる
上下左右の空白も妙に気になって
塗りつぶしたりする
頭の中がまっ黄色になって
何ひとつ覚えられない
だから今日も ....
おさないたましいが
いつまでも浮かんでいた とき
すべてが凪いでいた
まっさらな夏の日
あさい角度でそそがれる
いまにも壊れそうな
まひるのほしのひかりが
あたためすぎた布団から ....
朝は暗く
雨はまぶしく
片目をつむる
痛みのかたち
指でたしかめ
頭のかたち
指でなぞる
何を恐れているのか
頭は
握り拳のままでいる
....
壊れた蛍光灯
光のない全て
冷めたコーヒー
どうして私を憐れむの
クッキーに体を溶かされたい
飲み込んだコーヒー
悲しさが浄化する
涼風が運んできた
フラッシュバック
遠くで君が笑っ ....
書物の陳列の疲労の飽和した本棚は
朝方には回復を諦め軋みもしなかった
テーブルクロスのうつ伏せた脱力の背にある
アルコールの抜け殻の横倒しの唇は投げ遣りに香った
そっと、突き倒した ....
ゆっくりと明るい雲がせり上がり
それ以外の雲は皆うつぶせになる
降り止んだ雨は灰色
降り止まぬ雨は金色
とどまらぬ色とどまらず
とどまらぬ音ふりそそぐ
小さいものが
....
鴉のはばたきに覆われて
夜の鐘は少しだけ揺れる
刃の音 鋼の音
夏とともに終わる音
音はただ音としてはじまり
やがて静かに変わってゆく
前転する光と
前転する黒羽が ....
滑り台の上で滑り出せずにいる
後ずさることも出来ずにいる
飛行機が滑り込んでくる
地面すれすれ
空気が摩擦して
夏が濃くなる
毎日を鏡に映してみても
逆さになる他は何も変わらない
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188