ある朝 目が覚めたとき
首だけの生きものになっていたとしても
いままでお前が書いてきた詩と
これからお前が書く詩のせいだ
と言われたら
絶対そのまま受け入れてしまう
そんな ....
未明に生まれ
未明にさまよい
座礁した言葉の虹のように
かがやく波紋の輪をひろげ
少しずつ闇に溶けながら
こだまの羽は夜を渡る
浜辺に立つ子の手のひらを拒み
さらにはばたき ....
付き合いはじめの頃は
それはもう
口に出すのも
はずかしいわ
昼も夜も
アプローチ
ぎこちなかったけれど
愛が感じられた
ほんとうに
全然
寝つけなかったんだから
それが ....
人がいないと
グラウンドは淋しそうだ
ただ広さを主張するばかりで
しかしその声は誰にも届かない
私が足を踏み入れると
グラウンドの広さが私を取り囲む
全てが遠ざかっていくので
私 ....
今朝、レモンを産んでしまった
それは、色も形も匂いもレモンそのものだった
もし産んだのが卵だったら対処のしようもあったろうに
なんでレモンなんか産んでしまったんだろう
レモンに耳をあてると ....
ゆくえなく めぐり うつろうままに
羽は雲のまだらを駆ける
けだものの息をたずさえて
午後のすべてを火照らせながら
夢から現へ燃えあがる
虚ろな羽は燃えあがる
雨を ....
空へ落ちてゆく崖の前で
両腕をひろげなりひびく天使
すべての色が
すべての景が声になる
ひろげた両腕は
ひとつの陽に触れる
もうひとつの陽に触れる
西から来る無数の水無月を ....
らんららん 出張中の男の洗濯をしようと乙女心を持参しアパートへ向かったら
まさに今 女にまたがろうとしている男と遭遇
鍵をかけていても私は合鍵を持っているのだから男の防衛策意味なし
セコムしてな ....
雨が降りはじめた街のなかには
羽の生えたけだものがいて
黄金の子に首を抱かれて
しっとりとした息を吐き出している
すべて壊れたものに乗って
誰もいない街を走り
わず ....
ひびく
ひびく
音叉の雲から
はじまりの空へ
天使のかたちがひびきわたる
輪と共に陽は沈む
がらんどうの音がなりひびく
町のように大きなひとつの楽器に
鳥が集ま ....
猛吹雪のなかを二時間ずっと
半分眠りながら歩いていると
誰かに殺されたもの達の声が
いくつもいくつも降ってくる
それらを聴いているうちに
それらに応えているうちに
....
〜人間の脳みそは耐えきれないほどショックなことを忘れるように出来ているらしい〜
病床で
昔の恋人を思っていたら
今 好きな人の名前を呼んでいた
うなされて 私がその名を呼ぶので
家人が
....
やったあ!やったあ!
風呂だ!風呂だ!
やったあ!風呂だ!
風呂だ!やったあ!
ふろふろふろふろふろふろふろふろふ
こすれ!こすれ!こすれ!
こおおおすうううれえええ
あかあかあかあ ....
どこまでも道は凍っていて
空を見つめて歩くことさえできない
家も灯も星も無く
闇を目からこぼしたまま
向こうから来る犬を見つめる
彼は歩く
俺は歩く
犬は川を渡 ....
かつてここには声があり
雨とともに舞っていた
あつまる小さな手のように
はじきはじかれ まわる歌
緑の雨に声は飛び去り
雨の緑に見えなくなった
水は煙る手になった ....
夜の海が私を欲しがっている
或いは一つになれるだろうかと
踏み出した足に私は困惑する
そのとき私は生きている
そしていつも自らの中に
私は小さな一つの海を持っている
寄せては返すこ ....
挨拶が微弱すぎて響かなかったとしても
散歩の帰り道に賢者がいた
うす汚れた灰色のローブが汗を吸い
地を削るようにしてひたすら足踏みをしていた
もしもし、ドチラへ向かうのですか ....
明日になれば
この浅はかな
切ない思いも消えるでしょう
真っ白な銀世界に踏み込んで
祈りを捧げその目に答えを望むなら
私は空高く舞いあがった
あの人に
この思いを消してくださいと ....
ずっとずっと まわりで
小さな音が鳴り止まない
バスから降りて バスに乗る
またバスから降りて またバスに乗る
いつのまにか隣に
歌がふたつ 座っている
小さな支えを失っ ....
先が見えない曲がり角の向こうから
雨が来るのか
雪が来るのか
鳥たちが恐れ 飛び去る音
叫びひらくけだものの口に咲く灰花
曲がり角に立つ家が
空を大きく切り裂 ....
夜が
よるが
よ る が
唇に夜
指でなぞって
夜
来ている
+
夜は沈殿する夜
夜を沈殿する夜
夜に沈殿する夜
なん ....
建物の谷間の空き地から
町を分ける河が見える
もう作られることのない鉄橋の
橋脚ばかりが並んでいる
雲の居ない水面と
船の窓に映る汽車
そこにしか棲めない生き物のように
....
無数の雪の投身
その微かな高音
その消失跡には
無数の無音です
外套の毛羽に沿い 覆い
潅木の微妙に沿い 覆い
歩道の段差の詳細を隠しながら
歩道の段差の ....
消えかけるほど明るい朝に
冷たくもあたたかくもない雪の上を
裸足でふわふわ駆けていると
雪に埋もれたひろい庭が見えてきて
そこには椅子がひとつ置かれていた
あたりに ....
こおろぎが歌っていた
草むらに伏した子の
目の前で
太陽のない午後の理科室
もうすぐ終わる授業中に
床と天井の間に浮かぶ
水銀色の粒の柱
青空と灰空と
白 ....
私の前に渇いた冬が横たわり
私は枯れた花に叱られていた
道には鳥が落とした羽根があり
私はそれを拾って空へ投げる
冬空は何か物悲しいと言い
私は何が物悲しいかと訊く
ただ確信をもっ ....
はがれおちて
きのうのうちに
甘美な成長に去った
いのちよ
ひとくちの ミルク
しみこんでいく ひきかえに
ひとすじの いのち
をたくされます
いのちよ
なみだがへん ....
もしもあなたが 落ち込んでいるなら
そばにいて なぐさめてあげたい
もしもあなたが 喜んでいるなら
私も心から 喜んであげたい
もしもあなたの心が 真っ暗になったのなら
{ルビ灯=ともしび} ....
手のひらを ながめる
ながめたく なった
この指は
何のために ついて いるのだろうか
というより
どうして 裂けて しまったのだろうか
何かを生み出す ためにじゃ なくて ....
走る光 歩む光
過ぎ去る光の姿に照らされ
棘を持つ動かぬかたちの影が
夜を動かす歯車のように廻る
道を削ぐ車輪の音があり
夜の真上を曇らせてゆく
らせんの山 ....
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