すべてのおすすめ
大きな街のお空には
本当の空は無いと言うのに
太陽が高く射す昼休み
呼吸をふーーと吐き出して
皆が窓を開けた
深呼吸する時間 一斉に
大きな街のお空には
化学記号が飛んでい ....
ぐはぐははひとじゃなかった
でもはぐはぐしちゃった
だってあったかいもん
ぐはぐはは「ぐはっぐはっ」よろこんでた
ぐはぐはいうからぐはぐはなんだよ
それってわかりやすい
....
森(木の子供と木の母親と木の娘 なびく 髪)
の(飲んだくれ くれ 酒もっと くれ 果物のなる木がいい)
く(鯨って見たこともない 触ったことも 綺麗 ....
黒に近い深緑から
白のうたが聞こえていた
たくさんのものを失って
望まぬちからを得た最初の日
こんもりとした光のかたまり
まるく息づく色はほどけて
指を撫で
指と指 ....
怨みなさい。
怨んで、
お仕舞いなさい。
構いません。
そうして、
すべて。
お終いになさい。
みすぼらしい着物を着た子が
{ルビ弦=つる}のない弓を持ち
灰と緑の風を見ている
夜の池に浮かんでは消える
銀と金のかたちを見ている
かがやく葉を持ち
誰かが森を歩いて ....
あらゆる景色が海へと落ちてゆく
夜の震えがいつまでも消えず
線路を青くかがやかせている
ひとつの雲が原を過ぎ
光は濡れたくぼみに落ちて
飛び交うように激しく速く
滴の空 ....
キスなんて忘れたから
接吻でいい
デートなんて忘れたから
逢引でいい
結婚なんてしたことはないから
土にでも埋めてしまおう
恋人なんて久しくいないから
変人とよく書き間違う
....
氷の轍を駆ける鳥
ふいに枯葉のなかから飛び立つもの
朝の終わりを告げてゆく
遠く幻のように
冬の林がつづいている
常に空の色より暗く
風のなかに立っている
....
真夜中の雲が青白く立つ
月へ向かう手
空に融ける円柱
なにもない場所に
あらゆる場所に
立っている
木と地をつなぐ蝶
群れ集う黄色
ひとつの巨大な背の ....
鏡のなかにうつる空の
少しだけ昏い蒼のほうへ
けだもの 実り 尾を引くむらさき
流れるように傾いていく
音のない列車のなかで
外から来る音を聴いている
光が近づく
....
明るすぎる夜に笑われ
飛び立つことのできない鳥
低く地平に交わる{ルビ雷=いかづち}
遠くも近くも消し去りながら
鳥の横顔を照らしている
かがやく雲はさらにか ....
月の滴り糧にして、
傾くが儘に流れ征く。
果ての浄夜は音も亡く、
地を這う我影、
唯ひとつ。
たとえば
カーテン越しの陽だまりに
できるだけぽつんと
たよりなく座ってみる
時計の針の
こちこちという音だけが
胸にひびくように
明るみの中で目をとじる
いつの日かお ....
絶望さえ透けていく
初夏の陽射しのもと
雲へ手をふり
永遠する未完の涙
生れ立ての傷が
{ルビ鎖状=さじょう}に結晶し
{ルビ手鞠唄=てまりうた}に弾む午後
幼き声の純粋にひそむ響き ....
午後五時の夕日
五時半の灰色の空
六時には君が通り過ぎて
七時になると僕は溶けていく
物分りのいい振りをして
ただ諦めの、続いてしまう流れに乗っているだけで
嘘を、誰かのためと、ついていま ....
朝日に窓枠は枯れて
錆付いたカーテンからは
夜が死んだ匂いがする
炊き立ての白いご飯が
今日はもう仕方が無いんだよ
と生きる糧を与える
箸に摘めるだけの物を
....
自分が火であることを知らない火が
午後を 夜を さまよっている
持ち上げることのできないものを持ち上げようとして
燃える腕を宙空で
ただぶるぶると震わせている
....
月を囲む夜の雲の輪
輪の内の空は外より暗く
月は星を消せないでいる
夜の終わりにも輪は動かず
近づいてくる巨きな星のように
空の頂に在りつづける
見えない ....
鏡の底に雪が降る
夜の終わりが
夜のはじまりへと落ちてゆく
地に映る光が
空へ空へとのぼってゆく
鏡の底に
ゆっくりと降りてくる逆さの鳥
沈んでゆくもう一人の自身 ....
理科教室のカーテンの陰
ビーカーに入れられた
子供の悪戯とクロッカスの球根
こっそりと 育つ日々
昼の太陽 夜の月
揺れる隙間から漏れる
光りの栄養を貪りながら
薄情な薄明か ....
朝の海には光しかなく
頂をすぎる風
うすい雲を呼吸するものには
既にそれは海ではなく
折りめ正しい紙の翼の
つけ根に震える飛べない心
枯れ葉の熱に渦まく白金
土が ....
1.僕が許せないこと
僕のお菓子を食べること
知らない誰かにメールすること
時々黙って家を空けること
僕は君を愛している
世界で一番愛している
だから僕は君を許せない
....
空と空をつなぎながら
連なる交差に溶け残り
雪は火傷を伝えてゆく
遊びを終えた子らの声
原をわたる風のひと粒
熱と痛みが照らす脇道
埋もれかけた細い木のそば
真新しい ....
夜が好き
塗り重ねた紺碧が
恥ずかしい輪郭を
消してくれるから
たやすく嘘がつける
夜が好き
冬が好き
穢れのない雪は
{ルビ男=ひと}を疑う心黒さを
隠してくれるか ....
何かを待つ
ということは
何もしていないことに酷似している
と、感じて
せめて俯いた
アスファルトが好きです、って目つきで
いま
手のひら
差し入れたポケットが
....
先生
唇が、
ふるえてしまいます。
電線に
飛行機雲が斜線して
雨上りが地上をうっすらとはいでいきます
あの日
陽炎で生まれました
わたし
浮遊する
夢みるからだで透けていき
....
冬枯れの老木に
花を咲かせてやりたかった
とびきりの六花をこしらえて
枝という枝に舞い降りたのに
老木は身をふるわせて
あぁ、寒い
ゾクゾクするよ と呟いた
初恋に破 ....
昨日の高い 高い空から
ハッカの香りを感じた のです。
それは 甘くなく
気道から凍るような
冷たさだけ残して
昼には そっと
消えてしまったけれど
これから何度と無くやって ....
蔓薔薇が石塔に深く絡まっていて
霧に浮かびあがり声をもらしている
清らかな
石塔には
老人の深遠な目でこう刻まれていた
?在る{ルビ可=べ}し?
霊園の霧は
空中に充足した空虚な ....
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